著者 : 小野寺健
20世紀イギリス文学を代表する作家ロレンスの自伝的小説。19世紀後半から20世紀初頭にかけてのイギリスを舞台に、主人公ポール・モレルの生い立ちと成長が、親子、兄弟、仕事、恋愛、性、生死など人生の重要な要素と局面を中心に、喜びと悲しみの両方向から力強く生き生きと描かれている。全著作の中でも、とりわけ芸術性が高く、しかも親しみやすい傑作を、完全復元版の新訳で。ちくま文庫オリジナル。
英国の片田舎にすむ牧師一家の物語。誠実善良そのものの田舎牧師が、破産にはじまり、娘が誘拐されたり、火事に遭ったりと、絶えず災難に見舞われるが、屈することなく、大らかに生きてゆく。英国文化の微妙な滋味を教えてくれる愛すべき古典。一七六六年刊。
「古昔は人のみちみちたりしこの都巴いまは悽しき様にて坐し」。ひさしぶりに再会したセバスチアンは、別人のように面変わりしていた。崩壊してゆくブライズヘッド邸とその一族ー華麗な文化への甘美なノスタルジア。英国の作家ウォーの代表作。
第二次大戦中、物語の語り手ライダーの連隊はブライズヘッドという広大な邸宅の敷地に駐屯する。「ここは前に来たことがある」。この侯爵邸の次男で大学時代の友セバスチアンをめぐる、華麗で、しかし精神的苦悩に満ちた青春の回想のドラマが始まる。
第一次大戦下、英国で、アフリカで、苛酷な運命を生きぬいた男と女たち-。そこには、喜びと哀しみに満ちた愛があった。夢をつむいでゆくはずだった者たちの人生は戦いの無意味さに翻弄され、やがて真夏のアイスクリームのように溶け去っていく…。人生のはかなさを、詩情とユーモアで謳いあげる、ジョン・ルウェリン・リース記念賞の話題作。
父母が逃れえなかったナチの手を逃れて、イギリスに渡った二人の少年。堅い絆で結ばれた彼らは、異国での辛苦を乗りこえ、共同事業の成功と、似合いの伴侶、美しい子どもたちに恵まれる。だが、人生の秋を迎えてもなお、一切と別れねばならなかった過去が、身を切るような孤独となって二人を苛む。ひとは、過去からは逃れられないのか-。刊行されるや、たちまち最高傑作と絶賛を博した、ブルックナーの新境地を示す作品。
義和団事変の騒乱もようやくおさまりをみせた今世紀初頭の北京。婚約者の待つ異郷の地へと、メアリ・マッケンジーはイギリスからはるばる船で渡っていく。だが、中国での新婚生活は彼女にとって満足のいくものではなかった。やがて日露戦争が始まり、偶然に出会つた日本軍人栗浜伯爵に激しく魅了されたメアリは、道ならぬ恋におち、彼の子供を宿してしまう。イギリスに送還しようとする夫の手を逃れ、栗浜の用意した船で彼女は、見知らぬ国日本へと向かう…。第1次大戦、関東大震災、太平洋戦争と、しだいに軍国主義の傾向を強めていく暗い時代の日本で、たくましく自立していくスコットランド女性メアリと栗浜の禁じられた愛を描いた、イギリスの大ベストセラー。
物語はある一族の一枚の写真から始まる。中央には、ドーン家の頂点をなす女ソフカ。そして彼女をとりまく4人の息子と娘たち。放蕩を尽くした夫はすでに亡い。ソフカは、このブルジョワ家庭を律する厳しい意志の女として生きてきた。だが、そのからだの奥底には、もう一人の別の女がひそんでいる-。倦怠。反目。情熱。孤独。…ドーン一族の男と女が、それぞれにたどる人生。4枚の結婚式の写真が、抗いがたい血の宿命を絵解きしていく。
1920年の夏のある日、英国ヨークシャの田舎の小駅に一人の若者が降り立つ。村の教会の壁画修復にやってきた彼、バーキンは、第一次大戦で心に深い傷を負っていた。静かな村でも主人公のひと夏の経験を柔らかな筆致で描き心にしみる名作。ガーディアン賞受賞作品。