著者 : 小野寺健
20世紀イギリス文学を代表する作家ロレンスの自伝的小説。19世紀後半から20世紀初頭にかけてのイギリスを舞台に、主人公ポール・モレルの生い立ちと成長が、親子、兄弟、仕事、恋愛、性、生死など人生の重要な要素と局面を中心に、喜びと悲しみの両方向から力強く生き生きと描かれている。全著作の中でも、とりわけ芸術性が高く、しかも親しみやすい傑作を、完全復元版の新訳で。ちくま文庫オリジナル。
作者のことば 第一章 考え方も容姿も血縁としてそっくりな、ウェイクフィールドの一家のこと。 第二章 一家の災難。財産を失うと、かえって有徳の人としての誇りが高まるということ。 第三章 移転。人生の幸福は、けっきょく、ほとんど自分の力で手に入れるのである。 第四章 どん底の生活でも幸福は得られるもので、それは境遇よりも気質によるという実例。 第五章 あらたに身分の高い人を紹介される。われわれがいちばん期待するものは、たいていいちばんの命取りになる。 第六章 田舎の炉辺の幸福。 第七章 都の才子が語る。どんなまぬけでも、一晩か二晩なら他人をおもしろがらせることができるものだ。 第八章 小さな幸運は約束しないが、大きな幸運をもたらすかもしれない恋愛。 第九章 身分の高い二人の婦人が登場する。服装が高級だと教養も高そうに見えるようだ。 第十章 一家が、自分たちより地位の高い人々と競争しようとする。貧しい者が自分たちを境遇以上に見せかけようとするときの、さまざまなみじめさ。 第十一章 一家はあいかわらず、気位が高い。 第十二章 運命は、ウェイクフィールドの一家を、みじめな境遇に落とす決意でいるらしい。屈辱は往々にして現実の災難以上に辛い。 第十三章 バーチェル氏を、敵だと思ってしまう。ずけずけと不愉快な忠告をするので。 第十四章 新たな失敗または一見災難と見えるものが、じつは幸運になるかもしれない実例。 第十五章 バーチェル氏の悪だくみのいっさいが、たちまちばれる。悧巧すぎることの愚かさ。 第十六章 一家は策をもちいるが、相手の策はそれを上まわる。 第十七章 どれほど貞節な女性でも、長期にわたる甘い誘惑にはめったに抵抗できないということ。 第十八章 失った子供を正道にもどそうとする、ある父親の追求。 第十九章 現政府に不満で、われわれの自由の喪失を恐れている人物のこと。 第二十章 新奇を追って満足を見失った、ある思索的な放浪児の話。 第二十一章 下等な人間同士の友情は長つづきしない。おたがいに興味がなくなれば終わりである。 第二十二章 心の底に愛があれば罪はたやすく赦せる。 第二十三章 罪を犯した者でなければ、いつまでもみじめな気持ちに閉ざされてはいない。 第二十四章 新たな災難の数々。 第二十五章 どんなにみじめに見える境遇にも、何か慰めがある。 第二十六章 牢内の改革。法を完全に守らせるには、罰だけでなく賞もあたえなくてはならない。 第二十七章 前章のつづき。 第二十八章 この世の幸不幸は徳不徳というより、分別の使い方の結果である。神は、この世の幸不幸は本質的に取るに足りないもので、その分配に気をつけるほどのことはないと考えている。 第二十九章 この世での幸福な者、不幸な者の神の扱いは、平等だということ。また快楽と苦痛という性質ゆえに、不幸な者は来世ではかならずその補償を受けるということ。 第三十章 幸福な展望が開けはじめる。不屈の人間になろう。そうすればついに、幸運の女神がわれわれに微笑んでくれよう。 第三十一章 昔の善意が、こんどは思いがけない利子をつけて報いられる。 第三十二章 結び。 * 解説
第 二 部 ブライズヘッドを去る 第 一 章 サムグラスの失脚ーーわたしはブライズヘッドを去るーーレックスの正体 第 二 章 ジューリアとレックス 第 三 章 マルカスターとわたしは祖国を守るーー国外のセバスチアンーーわたしはマーチメイン・ハウスを去る 第 三 部 一本の糸 第 一 章 嵐の孤児 第 二 章 個展ーーブライズヘッドのレックス・モットラム 第 三 章 噴水 第 四 章 世界に背を向けたセバスチアン 第 五 章 マーチメイン侯爵帰国ーー中国風応接間での死ーージューリアの道 エピローグ ブライズヘッドふたたび
作者序文 序章 ブライズヘッドふたたび 第 一 部 われもまたアルカディアにありき 第 一 章 セバスチアン・フライトおよびアントニー・ブランシュとの出会いーーはじめてブライズヘッドを訪れる 第 二 章 従兄ジャスパーの大諫言ーー魅力にたいする警告ーーオクスフォードの日曜の朝 第 三 章 わが家の父ーージューリア・フライト 第 四 章 英国のセバスチアンーー国外のマーチメイン卿 第 五 章 オクスフォードの秋ーーレックス・モットラムとの食事、マルカスターとの夕食ーーサムグラス氏ーー英国のマーチメイン夫人ーー世界に背を向けたセバスチアン 〈解説〉 イーヴリン・ウォーと『回想のブライズヘッド』
第一次大戦下、英国で、アフリカで、苛酷な運命を生きぬいた男と女たち-。そこには、喜びと哀しみに満ちた愛があった。夢をつむいでゆくはずだった者たちの人生は戦いの無意味さに翻弄され、やがて真夏のアイスクリームのように溶け去っていく…。人生のはかなさを、詩情とユーモアで謳いあげる、ジョン・ルウェリン・リース記念賞の話題作。
父母が逃れえなかったナチの手を逃れて、イギリスに渡った二人の少年。堅い絆で結ばれた彼らは、異国での辛苦を乗りこえ、共同事業の成功と、似合いの伴侶、美しい子どもたちに恵まれる。だが、人生の秋を迎えてもなお、一切と別れねばならなかった過去が、身を切るような孤独となって二人を苛む。ひとは、過去からは逃れられないのか-。刊行されるや、たちまち最高傑作と絶賛を博した、ブルックナーの新境地を示す作品。
義和団事変の騒乱もようやくおさまりをみせた今世紀初頭の北京。婚約者の待つ異郷の地へと、メアリ・マッケンジーはイギリスからはるばる船で渡っていく。だが、中国での新婚生活は彼女にとって満足のいくものではなかった。やがて日露戦争が始まり、偶然に出会つた日本軍人栗浜伯爵に激しく魅了されたメアリは、道ならぬ恋におち、彼の子供を宿してしまう。イギリスに送還しようとする夫の手を逃れ、栗浜の用意した船で彼女は、見知らぬ国日本へと向かう…。第1次大戦、関東大震災、太平洋戦争と、しだいに軍国主義の傾向を強めていく暗い時代の日本で、たくましく自立していくスコットランド女性メアリと栗浜の禁じられた愛を描いた、イギリスの大ベストセラー。
物語はある一族の一枚の写真から始まる。中央には、ドーン家の頂点をなす女ソフカ。そして彼女をとりまく4人の息子と娘たち。放蕩を尽くした夫はすでに亡い。ソフカは、このブルジョワ家庭を律する厳しい意志の女として生きてきた。だが、そのからだの奥底には、もう一人の別の女がひそんでいる-。倦怠。反目。情熱。孤独。…ドーン一族の男と女が、それぞれにたどる人生。4枚の結婚式の写真が、抗いがたい血の宿命を絵解きしていく。
1920年の夏のある日、英国ヨークシャの田舎の小駅に一人の若者が降り立つ。村の教会の壁画修復にやってきた彼、バーキンは、第一次大戦で心に深い傷を負っていた。静かな村でも主人公のひと夏の経験を柔らかな筆致で描き心にしみる名作。ガーディアン賞受賞作品。