著者 : 尾崎士郎
尾崎士郎は長篇小説『人生劇場』で知られるが、短篇小説こそ人と作品が渾然一体となった作家の特質が最も良く表現されている。「大逆事件」を取り上げた小説、戦時下の従軍文学、内省的な抒情小説、哀感と情熱溢れる自伝的作品から、多彩な尾崎文学の真価を示す小説16作を精選する。
家康に靡かず、志をまげず、上野の地から、一路故地、上田を目指す。上田城では、秀忠の軍勢を、さんざんに翻弄し、釘付けにする。九度山麓での隠栖、雌伏十余年、ついに大坂城からの招請が。いざ真田丸出陣ー。花の女性を鏤めつつ十勇士も奮迅の働き…豪艶雄渾に描く、驍将の生涯。大ロングセラー記念復刊。
『人生劇場』の作家尾崎士郎が、母校と、そして青春への熱き思いを込めた小説三篇。野に下り学の独立に賭けた大隈重信。学園創立時の苦闘と、不撓不屈の挑戦。進取の精神を抱き果敢に行動する若者たち。時代の奔流の中で躍動する青年群像が、活写される。巻末に、建学の祖・小野梓による開校式での歴史的演説を収載。
【2025年5月現在、新本が定価(2,600円+税)で購入可能】 「滝は没落の象徴である。その没落がいかに荘厳であるかということについて説こう。」(「滝について」より) ひたひたと迫りくる没落の翳。落魄への共感。坂口安吾がそのみずみずしい「香気と悲しみ」を讃えた知られざる新興芸術派、尾崎士郎の切情あふれる短篇集。 ※雑誌『没落時代』の復刻ではありません。 生家の没落、兄の自殺、宇野千代・梶井基次郎との恋愛事件……。放浪に次ぐ放浪のなかで、尾崎士郎は自分の心のありようを模索する純粋で新しい、しかも狂的で切ない短篇をほそぼそと書きつづけた。「人生劇場」の思わぬ大ヒットのかげで、埋もれてしまった新興芸術派としての資質は、これらの短篇で再発見されることだろう。 終生の友・坂口安吾が「素直で、豊かで、香気と悲しみにみち、年少多感の詩嚢からちよつとこぼれた数滴のすぐれた魂の香りを遺憾なく花さかしめてゐる」と評して自ら編纂した『秋風と母』所収全篇と、おもに戦前の単行本初収録作品を多数収めた全27篇。誰も読んだことのなかった尾崎士郎は、没落に淫し、詩の海を漂っている。 ※七北数人氏を監修者に迎えた「シリーズ 日本語の醍醐味」は、“ハードカバーでゆったり、じっくり味わって読みたい日本文学”をコンセプトに、手に汗握るストーリーではなく、密度の濃い文章、描写力で読ませる作品、言葉自体の力を感じさせる作品を集成してゆきます。 滝について 獄中より 予は野良犬の如くかの女を盗めり 賭博場へ 影に問う 三等郵便局 秋風と母 山峡小記 河鹿 鶺鴒の巣 秋日抄 鳴沢先生 微妙なる野心 酔抄記 海村十一夜話 秋情抄 蜜柑の皮 落葉と蝋燭 侠客 母 父 春の夕暮 林檎 春風堤 馬込村 「没落時代」 没落主義に関して 解説/七北数人
先が思いやられるような人間になれー。これが父の教育方針だった。悪ガキとして名を馳せた中学時代を経て、青成瓢吉は早稲田大学に進学、学園紛争の口火を切る。やがてお袖との同棲生活にはまり大学を中退するが、彼の脳裏には芸妓になった幼なじみのおりんの姿が…。大志ある親友たち、味のある教師、任侠道を貫く渡世人など、脇役陣も多士済済。今、不朽の人生ドラマが幕を開ける。
河童を思わせる愛嬌者、曽呂利新左衛門は、堺でも知られた鞘細工の名人だった。信長の知遇を得るはずの日に起きた本能寺の変が、彼の運命を一変させた。雑賀衆の軍師として秀吉軍と戦い惨敗、堺に舞い戻った彼を、突然秀吉が訪ねてきた。猿面と河童面の奇妙な交流が始まる。その陰で、淡い恋が生まれ、消えた…。戦国乱世を、才覚と度胸で飄々と生きた奇人の姿を、骨太に描き出した歴史小説。
西郷隆盛と大久保利通の宿命の対決ー。近代日本の行方を決定づけた西南戦争の蜂起は、しかしあまりに無造作であった。大西郷を慕い集まった私学校生徒たちや維新以来の幕僚・桐野利秋らの奮闘を、鹿児島県令・大山綱良の悲劇を軸に描く「私学校潰滅」から、その志を継いで決起する頭山満らの「波荒し玄洋社」まで、男たちのロマンを伝える雄渾な西南戦争叙事詩。あの『人生劇場』の著者の快作。
死の床にある秀吉をめぐって、北政所と淀殿、石田三成と古参の武将たちが激しく対立。慎重に時を待つ家康の巨大な影が、無言の圧力となって人々を脅かす。知性の人・石田三成の悲劇を描いた長編歴史小説。