著者 : 山口西夏
ペトラがどこか陰のあるギリシアの青年リサンドロスと偶然出逢い、恋におちたのは、17歳のとき。初恋だった。短い時間だったが言葉を交わし、軽く口づけて別れただけなのに、彼との思い出はその後もペトラの心に深く刻まれ続けた。15年後、女優である母の結婚式に出席したペトラは、今や造船業界で世界のトップに昇りつめたリサンドロスと再会する。噂では、多くの女性と浮き名を流し、女性を使い捨てしていると聞く。少し怖いけれど、彼は大人になった私に気づいてくれるかしら?勇気を出して近づいていったペトラに、リサンドロスが告げた。「僕の目につかないところに消えてくれ」
きらめく海、白い波ー美しい砂浜に一機のヘリコプターが着陸した。降り立ったのは、ロンドンの冷徹な実業家ダリウス・ファルコン。彼は新しくこの地の所有者となり、視察に訪れたのだ。そこに暮らすハリエットは、浜辺に佇む彼を偶然見かけ、声をかけた。高級スーツをぱりっと着こなした都会的なダリウスに惹かれるが、ほどなく彼女の飼い犬のマナーを巡って口論になり、最悪の雰囲気に。はじめは魅力的だと思ったけれど、なんて傲慢な人なの!ところが後日、元妻の結婚式に同伴してほしいとダリウスに求められ、ハリエットは驚いた。しかも、恋人のふりをしてだなんて。戸惑いながらも、彼女は華麗なるロンドン社交界に身を投じたー
ジェシカは18歳のときに両親を亡くし、幼い妹を一人で育ててきた。生活の糧は大手宝飾店の専属モデルの仕事のみだったが、会社が買収され、新社長のギリシア大富豪の存在に、身を震わせた。ルーカスー8年前、やむなくプロポーズを断った元恋人。別れたあとも、わたしはずっと密かに彼を愛していた…。しかし、ルーカスは冷酷な瞳で専属契約の解消をほのめかしつつ、ジェシカに大胆な衣装と宝石をまとわせると、妖艶な大人のモデルに転身するよう厳しく言い渡した。ルーカスの目的はベッドの上の関係だけだと察しながらも、生活費と妹の学費のため、ジェシカは彼の要求をのむしかなかった。
ヴェリティは、新たに転任してきた医師を見てわが目を疑った。ベネディクトー夢中だった恋人。手酷い裏切りを知るまでは。ある日、なんの理由もなく彼は忽然と姿をかき消したのだ。そのあと、妊娠に気づいたヴェリティはたった一人で産み、心にあいた空洞を埋めるため、娘だけをよすがに生きてきたー弄ばれて、捨てられたのに。やりきれない傷が疼くのに。それでも彼を前にすると、全身のほてりを抑えられない。しかも、彼が放った言葉の刃が、ヴェリティの胸を裂いた。「君の名は?」
アンドレアは研究のためフランスの老公爵に招かれ、“湖の城”と呼ばれる美しいシャトーに滞在していた。この土地は、アーサー王伝説の騎士ランスロットの故郷だ。ある日、老公爵の息子ランスロット・デュ・ラックが帰郷する。まるで伝説の騎士の生き写しのような精悍で美しい男性に、アンドレアはひと目で激しく惹かれてしまう。やがて身籠もった彼女はランスロットから求婚されるが、この結婚を喜ばない者がいたー彼の血のつながらない妹だ。ずっと公爵家の妻の座を狙っていた彼女は、恐ろしい行動に出る。性的暴行を受けたと言って、ランスロットを訴えたのだ。
ジェシカは18歳で父と継母を亡くし、幼い異母妹を一人で育ててきた。生活の支えとなっているのは大手宝飾店の専属モデルの仕事のみ。それだけに、今回の社長の突然の交代劇は大きな痛手だった。なぜなら、その新社長、ギリシア人富豪のルーカス・サラントスこそ、ジェシカが8年間にプロポーズを拒んだ元恋人だったから。彼は契約解消を仄めかしつつ、彼女に大胆な衣装と宝石をまとわせ、妖艶な大人のモデルに転身するよう厳しく言い渡した。今の私を全否定したいのかしら。これは過去の仕返しなの?ジェシカはわかっていた。ルーカスの要求をのむしかないことを。そして、彼の要求がさらに苛酷になっていくであろうことも。
兄の結婚式に出席するため、トリニティはイギリスに戻ってきた。式が執り行われる教会で再会したのは、初恋の人ザイード!兄の学友で、砂漠の王国イシャラの王子だ。10年前、トリニティはイギリスで学んでいたザイードに心奪われ、初めてのキスを彼に捧げ、この家から連れ出してと訴えた。だが、ザイードはつれなく母国に帰り、忌まわしい出来事が起こった。トリニティは伯母の夫に襲われて身ごもり、その子を流産したうえ、政治家一族の体面のために事件は闇に葬られたのだ。式のあとザイードと二人きりになると、トリニティは感情がこみあげ、衝動的に彼の胸に飛びこんでしまうー重い秘密を抱えたまま。