著者 : 山本やよい
崖っぷちを飛びこえる力がほしいと、何度願ったか知れない。始まりは、酔っ払いの老人が行方不明となったことだった。それと前後して、いろいろなことが立て続けに起こった。近所の愛犬家の孤独な老婦人が怪我で入院し、その間に残った犬たちがすべて処分されたこと。弁護士である別れた夫との再開。失踪した老人の昔の職場であるエンジン工場にまつわる不正疑惑。やがて老人は、シカゴ南部の運河で水死体となって見つかり、そうした出来事がすべて一つの方向に収斂していく。しかし、わたしを憂鬱にさせたのはそればかりではなかった。尾行をまくため車を交換してもらった親友の医者ロティが暴漢に襲われ、重傷を負った。それがきっかけとなり、女同士の友情の絆にほころびが生じはじめたのだ。なけなしの年金で暮らす老人たち。彼らを食い物にしようとする企業の犯罪的行為。隣人や親友に見放され、孤独の中で闘う39歳となったシカゴの女探偵。V・Iシリーズの魅力のすべてをぶち込んだ全米ベストセラーの最新作。
現代が「アメリカン・ミステリの第2期ゴールデン・エイジ」と呼ばれるようになって久しい。さまざまな作家、色とりどりの作品がひしめくなか、中心でいま最も生き生きと活動しているのは女たちである。その実力を証明し評価の高い第1巻に続き、今回は大御所メアリ・ヒギンズ・クラークが登場。他にもスー・グラフトン、キャロリン・G・ハート、ナンシー・ピカードら注目の女性作家たちが極上の短篇を提供する第2巻。
アラフラ海に浮かぶリゾート・アイランド、パウイ。アメリカの鉱山会社ネクサスの最高幹部は、毎年恒例のバカンスに、夫人同伴でこの地を訪れた。が、政情不安なこの島にクーデターが発生、重役たちは射殺され、それを目撃した妻たち5人は、未開のジャングルに逃げ込んだー。上流階級の女たちは、未開のジャングルで生き残ることができるか?迫真の大型サバイバル・ストーリー。
自然の猛威、追撃する軍隊、人喰いの風習を持つ原住民。上流階級の女たちは、諍いを繰り返しながらも、ジャングルで生き残る方法を逞しく学んでいく。一方、ネクサスのオーストラリア支社長スコットは、彼女らの無事をあくまで信じ、執拗な捜索を続行。それを知る筈もない女たちは、決死の脱出行を決意したー。南国のパラダイスでのサバイバルを描く、超大型エンターテイメント。
シスターズ・イン・クライムー金庫破りの尼僧たちの話?それとも横領の才に恵まれた娘たちの話?そうではない。これはミステリやサスペンスをものするアメリカの才能豊かな女性たちが特別に書き下ろしたアンソロジーた。60年代以降の男女の生き方の変化を反映し、また優れたミステリは優れた小説でなければならないとの時代の要請にも答えようとしている。テーマを定めず、現代短篇の精華を結集した画期的作品集。
署長が探しておられます、警部。至急ゴルフクラブへー休暇をとってろくなことのあった試しがない。全英オープンに参加したほどの腕前をいまさら見込まれたわけではあるまいし、休暇中にどんな厄介事が持ち上がったのか。ところが、行ってみてわが目を疑った。神聖なるグリーンの芝生が見るも無残に掘り返されていたのだ。ビック・トーナメントを間近にひかえて、誰が、なぜこんな大それたまねを…。ベストセラー作家で皮肉屋で、愛車マセラッティを駆って英ミステリ界に颯爽登場のストローン警部が、奇々怪々の事件にバーディを狙います。
戦争が終わり、平和をとりもどしたロンドンの街角で、2人の女が再会した。大戦中はともに空軍司令部に勤務していたが、今は2人とも相手を見つけて結婚していた。一方の女は公務員の夫のつましい給料で不自由な生活に耐えており、片一方の女は富豪の夫の金を湯水のごとく使い、しかも不倫の真っ最中だった。対照的な2人には、しかしひとつだけ共通点があった。自分の夫がうとましくてならなかったのだ。そして、片方の女がある危険な計画を耳打ちしたとき、運命の歯車がひそかに、ことりと動き始めた。強烈なサスペンスと意外性の最新傑作。
中米の国、コスタリカ。国連食糧農業機関の職員であるイギリス人カーターは、この国の深刻な食糧危機を解決するべく派遣されたが。が、順調に進んでいた画期的な援助計画は突然妨害を受け、彼は失踪した。カーターを追って妻サマーズはジャングルに入り、陰謀の真相を知った…。世界的複合企業体の巨大な権力に翻弄される個人を描き、第三世界の現実に鋭く切り込んだ異色の冒険小説。
合衆国大統領の実兄がリビアに誘拐された。自国側の大物テロリストがCIAの手に落ちたと考えたリビアが報復に出たのだ。しかし、CIAはその件には一切関与していなかった。一触即発の事態を収拾すべく、ホワイトハウスは“モルディダ・マン”を雇ったー国際紛争のはざまで大国を手玉にとる男どもを描き、巨匠が真骨頂を示す傑作。
夜のニュースが、産科医の撲殺事件を報じていた。女医ロティのところの代診の医師だった。通りすがりの犯行でなければ、この前救急病院で死亡した妊婦の夫がギャングを雇ってうらみを晴らそうとしたのかもしれなかった。わたしはその線を洗おうとするが、そんなとき今度はロティの診療所が中絶に反対するデモ隊に襲われた。しかも、デモ隊の指導者についた弁護士はあろうことかわたしの前夫だったのだ…。錯綜する事件の向こうに何が待ちうけているのか?シカゴの女探偵V・I・ウォーショースキーの苦くハードな闘いを描くシリーズ最新作。