著者 : 山本やよい
40代を迎えたわたしは、世界の果てにどれだけ近づいているのか?気が滅入りがちなわたしを動揺させる新たな出来事が、降ってわいた。同世代の友人で新聞記者のマリ・ライアスンが、テレビ・リポーターに転身したのだ。記者として長年闘ってきたマリも、金の力に屈してしまうのか?マリの転身を祝うためパーティに出席した帰り、わたしは道に倒れていた女性を危うく轢きそうになった。その女性は重傷を負って倒れており、まもなく病院で死亡した。やがてその女性がニコラという脱獄囚だと判明するが、その直後、解剖する予定だったニコラの遺体が、何者かに持ち去られるという事件が起きた。わたしはニコラがメイドをしていた大手警備会社社長の家を訪ね、彼女が罠にはめられた疑いを抱く。なおもニコラが投獄された真相を探るうち、様々な妨害の手が延び、ついにわたしは誘拐容疑の濡れ衣を着せられ、刑務所へと!シカゴの女性探偵V・I・ウォーショースキー、6年ぶりに登場。生涯でもっとも苛酷な日々のなか、プロの探偵としての誇りを賭けたV・Iがすべてを投げうって真実を追う。
観光地として賑わう、古代遺跡のローマ浴場の地下室で、白骨化した人間の手が発見された。一報を聞きつけた警視ピーター・ダイヤモンドは、骨の身元を特定すべく捜査を開始する。だが、くだんの地下室の番地に、『フランケンシュタイン』の作者メアリ・シェリーの自宅がかつてあったという事実が浮上し、捜査は混乱に陥った。この偶然の一致にマスコミが飛びつき、「人骨は怪物の犠牲者なのか?」などとバースの町に流言飛語が飛びかう実態となってしまったのだ。時同じくして、女性の骨董商が他殺とおぼしき水死体となって発見された。事件担当の主任警部ウィグフルは、容疑者の尾行を単独で開始するが、何者かに殴打され、生死の境をさまよう意識不明の重体に!同僚に代わってこの事件の捜査も担うことになったダイヤモンドは骨董商の身辺を探り、幻想的な画風の絵画が殺人事件当夜に取り引きされていたことを突きとめる。しかも、その不気味な絵のモチーフは『フランケンシュタイン』の一場面を意味していた…。不可解な繋がりをみせる二つの事件から、ダイヤモンドが辿りついた犯人像とは?ゴシック的な香り漂う怪奇な事件に、ピーター・ダイヤモンド警視が熱き刑事魂で立ち向かうシリーズ第六弾。
コロラドの牧場主アティカスは、メキシコ・カリブ海岸に住む次男・スコットの突然の自殺の報を聞き、単身現地へ飛ぶ。葬儀をすませ、息子とかかわった人物や遺品と接するうち、確信に満ちた疑問がー他殺!?かつて妻を死に追いやった息子との心の溝を越え、力強い愛情で真相を追う父の苦闘を描くサスペンス。
病院の駐車場で倒れているところを発見された若い女は、記憶をすっかり失っていた。身元もわからぬまま、とりあえず無料宿泊所へ収容された彼女は、そこで大女のホームレスと知り合い、彼女の励ましと協力を得て、自らの失われた過去を捜しはじめる。わずかな手がかりを追い、自分が記憶を失った経緯を辿るうち、二人の身辺に怪しげな人物がうろつきはじめた…。「花の街」バースは平和だった。殺人捜査班を率いるダイヤモンド警視も、あまりの退屈さに体調を崩す始末。見かねた上司は、本来は管轄外の自殺事件の調査をダイヤモンドに割り振った。自分の農場で、ショットガンで頭を吹き飛ばした老農夫の事件。市内の由緒あるアパートから身を投げた、身元不明の女の事件。どちらも平凡な仕事に見えたが、百戦錬磨のダイヤモンドの目は、ある事実に引きつけられた。これは、ひょっとすると…。ダイヤモンド警視の刑事魂をくすぐる怪事件続々発生!快刀乱麻の名推理が解き明かす、驚天動地の真相とは。
かつて一世を風靡したオペラの花形歌手でありながら、今は酒に溺れ場末の酒場で歌うルイーザ。高名な外科医の祖父と優秀な弁護士の姉を持ち、そのコンプレックスゆえに家を飛び出したティーンエイジャーのマーラ。医療の理想と現実の狭間で苦悩する精神科の青年医師ヘクター。そして、駐車場脇の塀から聖母マリアが血の涙を流しているという妄想に取り憑かれたホームレスのマデリン-生まれも育ちもまったく違う四人の孤独な男女が街角で出会う時、シカゴの街を大きな感動で包みこむ奇跡が起こる…。V・I・ウォーショースキー・シリーズで人気のサラ・パレツキーが混迷の世紀末に贈る、愛と奇跡と感動のストーリー。
現代のミステリ界は“女性ミステリの新時代”ともてはやされるほど多くの女性作家たちが活躍している。それでもなお、小説や映画にいちばん多く登場する女性のタイプは、娼婦や残忍な殺人事件の被害者というのが現実でもあるのだ。本書にはそんな間違った認識と闘い、“自分の芸術を愛する”女性作家26人の短篇を収録してある。『ウーマンズ・アイ』に続き人気作家パレツキーが編纂したオリジナル・アンソロジー第2弾。
カリフォルニア北部の森のなかで、少女ネルは両親とバレリーナをめざす一歳上の姉に囲まれて暮らしていた。自然に抱かれ、のびのびとした生活を送る一家。しかし、そんな暮らしにも突然暗い影がさしはじめた。優しかった母が癌で亡くなり、しかも、その頃から電気も電話も使えなくなってしまったのだ。町へ行っても食料やガソリンが手に入らなくなった。大きな戦争や災害が起きたためだという噂が流れていたが、本当のことは誰にもわからなかった。電気製品が使えず、食料や日用品を節約する生活は苦しかった。ネルたちは木を切って薪にしたり、保存食を作ったりして乗り切ろうとするが、今度は父が大怪我をして死んでしまった。森のなかで二人きりになってしまったネルと姉は、自分たちの力だけをたよりに、野菜を育てたり、力仕事もして生きのびていく。しかし、やがて二人の運命を大きく変える恐ろしいことが起きて…。
世界最古とされる切手「ペニー・ブラック」が、郵便博物館から盗まれた。数日後、ミステリ愛好会「猟犬クラブ」の会合では、会員のマイロがジョン・ディクスン・カーの密室講義を読み上げようとしていた。ところが、開かれた『三つの棺』には、盗まれたはずの切手がはさまれていたのだった。窃盗容疑をかけられたマイロが疑いをはらし、ようやく運河に停泊させているナロウボートの自宅に戻ると、船室内には「猟犬クラブ」の会員の死体が置きざりにされていた。南京錠のかかった、まったくの密室状態での殺人事件。エイヴォン・アンド・サマセット警察の警視の座に返り咲いたピーター・ダイヤモンドは、「猟犬クラブ」の推理中毒者たちを相手に、独自の推理で密室トリックに挑んだ-。ミステリの蘊蓄をたっぷりと盛り込み、すべてのミステリ・ファンに捧げる、英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞の、シリーズ第4作。
呼び出しは深夜にきた。二人の刑事が、失業中の元警視ピーター・ダイヤモンドを、ロンドンのフラットのベッドから引っ張り出したのだ。連れて行かれた先は、ダイヤモンドのかつての職場、バースのエイヴォン・アンド・サマセット署だった。かつて彼を辞職に追い込んだ上司たちが、深刻な顔で迎えた。殺人犯マウントジョイが脱獄し、副署長の娘を誘拐して交渉相手にダイヤモンドを指名しているという。四年前、女性ジャーナリストが口に赤い薔薇を詰めこまれて刺殺された事件があり、彼がマウントジョイを逮捕していた。頼みこまれて、ダイヤモンドはしぶしぶ、しかし内心では大好きな捜査活動ができることにほくほくして、マウントジョイとの会見にのぞむ。そこで要求されたのは、四年前の事件の洗い直しだった。もしマウントジョイが無実だとすると、真犯人は誰だったのか。被害者のボーイフレンド、家主、取材していた不法居住者たち…。調べていくうちに、当時は埋もれていた事実が次々と明るみに出、ダイヤモンドの不屈の刑事魂が過去と現在を鮮やかに結びつけていく。巨匠会心の、英国推理作家協会シルヴァー・ダガー賞受賞作。
テキサス州の小さな田舎町、アガタイトで、ある日、若い女性の惨殺死体が発見された。しかも、綺麗にマニキュアされた指の爪のうち三本が、なぜか切り落とされていた。エイブル保安官は捜査を開始するが、犯人像は一向に浮かんでこない。大規模な葬儀が行われる暑い夏の朝、彼は三本の爪を持ち歩いている奇妙な男の話を耳に挾んだ…。ありふれた町を舞台に描く異色サスペンス。
頑固一徹の強引な捜査ぶりがたたって、警察を辞職した元警視ピーター・ダイヤモンド。ロンドンのハロッズ・デパートに警備員として雇われたが、閉店後に鳴った警報ベルが、ふたたび彼を失職させることになった。夜の家具売場で発見された日本人の少女は自閉症らしく、まったく口をきかなかった。少女がもぐりこんでいるのを見逃したためにクビになったダイヤモンドは、誰ひとり身内が名乗り出ない少女の境遇に同情して、親捜しに乗り出す。ところが、ダイヤモンドに少し心を開したかに見えた矢先、少女は母親と名乗る女性によって、預けられていた施設から誘拐されてしまった。怒り狂ったダイヤモンドは、ロンドン巡業中にこの話を聞いて助力を申し出た力士、山形をスポンサーとして、誘拐者を追いニューヨークへ飛ぶ-。
現場に残された血まみれのナイフと、胴体を切り裂かれた人形ー。リンダの脳裏には、三年前の忌まわしい光景が焼きついていた。娘のエイミーが何者かに惨殺されたのだ。容疑はリンダ自身にかけられ、裁判で無罪が証明されたものの、以来、彼女は人目を避けてひっそりと暮らしてきた。が、彼女の身辺でふたたび殺人事件が起こり、現場にはまたもや切り裂かれた人形が…。繊細な筆致と豊かな感性で紡ぎだす出色のサスペンス。
ロープが食いこんでねじれた首、飛び出たグロテスクな目ー。子どもばかりを狙う連続殺人犯「エディンバラの絞首人」。行き詰りをみせる捜査に焦った担当検事は、優秀だが、凶悪犯を殺害したため停職中の刑事マクモランに捜査への参加を命じた。マクモランは同様の手口の殺人を調べるうち、二十数年前の殺人事件との微かなつながりを追いはじめる…。緊迫感溢れるサイコ・サスペンス。
ジョージ王朝様式の家々が緑の丘のあいだに優美に波打つ伝統の町、バース。その近郊の湖に女の全裸死体が浮かんだ。昔気質のピーター・ダイヤモンド警視はこれこそおれの事件だと意気込んだが、有力な情報もなく、捜査は難航する。三週間後、妻の失踪を知ったというバース大学のグレゴリー・ジャックマン教授が名乗り出てきた。しかし、ダイヤモンド警視は、やがてその強引な捜査がもとで辞職に追いこまれてしまう。英国ミステリ界の鬼才が初めて現代のフーダニットに挑戦し、無骨な刑事の捜査ぶりを情趣豊かに綴る、ファン待望の大作。アンソニー賞最優秀長篇賞受賞。
気まぐれで、裏表がある。愚かしく、論理的思考が苦手で、肉体を武器に男を誘惑し破滅させるー。こうした女のイメージははるかな昔から存在し、お伽話や叙事詩や歴史に深く浸透している。そんなイメージに逆らい新しい女たちの物語を作ることは、とてつもない重労働である。しかしいまや、現実の社会ばかりでなく、ミステリの分野でも女性の進出が一大奔流となりつつあるのだ。女が描く女のミステリを書き下ろしで集成。
かつては「女には向かない職業」であった女探偵の細い流れは、いまでは女たちの物語という大きな奔流にまで成長した。本書には、そのブームの原動力となった女探偵V・I・ウォーショースキーやキンジー・ミルホーンを始め、素人探偵、母親、祖母、夫の暴力に苦しむ妻、ソーシャルワーカーなど、さまざまな問題に苦しみ格闘する女性たちが登場する。人気作家パレツキーが編纂した「女にふさわしい」アンソロジーの決定版。
崖っぷちを飛びこえる力がほしいと、何度願ったか知れない。始まりは、酔っ払いの老人が行方不明となったことだった。それと前後して、いろいろなことが立て続けに起こった。近所の愛犬家の孤独な老婦人が怪我で入院し、その間に残った犬たちがすべて処分されたこと。弁護士である別れた夫との再開。失踪した老人の昔の職場であるエンジン工場にまつわる不正疑惑。やがて老人は、シカゴ南部の運河で水死体となって見つかり、そうした出来事がすべて一つの方向に収斂していく。しかし、わたしを憂鬱にさせたのはそればかりではなかった。尾行をまくため車を交換してもらった親友の医者ロティが暴漢に襲われ、重傷を負った。それがきっかけとなり、女同士の友情の絆にほころびが生じはじめたのだ。なけなしの年金で暮らす老人たち。彼らを食い物にしようとする企業の犯罪的行為。隣人や親友に見放され、孤独の中で闘う39歳となったシカゴの女探偵。V・Iシリーズの魅力のすべてをぶち込んだ全米ベストセラーの最新作。