小説むすび | 著者 : 山本やよい

著者 : 山本やよい

ウィンディ・ストリートウィンディ・ストリート

V・Iの恩師、母校バーサ・パーマー高校女子バスケット部のマクファーレン・コーチの依頼が、事の発端だった。V・Iが故郷サウス・シカゴを抜け出せたのは、彼女のお陰だったのだ。不治の病を得てしまった恩師に替わり、渋々ながら母校で臨時コーチをつとめることになるV・Iは、久しぶりにサウス・シカゴに足を踏み入れた。昔と変わらない故郷の窮乏ぶりに、心が痛む。女子生徒の半分は最上級生になるまで妊娠し、多くはそのまま地元の薄給の仕事につき、同じく薄給の男と家庭を持ち、またしても同じ境遇に子供たちを送り出すのだ。現在に希望はなく、未来にも光は見えない。そんな生徒たちの一人から、彼女の母親が勤める町工場が悪質ないやがらせを受けていると相談され、V・Iはまたしても事件の渦中へと踏みこんでゆくことになる。一方で寄付の依頼に行った地元の大企業でも事件の臭いを嗅ぎつけるが…。頼まれれば嫌とは言えず、危険も厭わずに体を張ってしまう、V・I・ウォーショースキーの真骨頂。ミステリの世界を超えて頂点に君臨する、サラ・パレツキーの最新作。

ブラック・リストブラック・リスト

NYを襲った同時多発テロは、アメリカ国民に深い傷跡を残した。そう、わたしの心にも。恋人でジャーナリストのモレルがアフガン取材に出て戻ってこないのだ。わたしは何度も帰国を促したが、モレルは「きみのほうこそ、もっと悲惨な状況をくぐり抜けてきたじゃないか」といって取り合ってくれない。募る不安から、わたしはより熱心に仕事に打ち込むようになった。そんな矢先、得意客のグレアムから依頼があり、わたしは飛びついた。なんでも、彼の母親が以前住んでいた邸宅に不法侵入者の気配があるので調べてほしいという。さっそく訪れた無人のはずの邸には、なぜか少女の姿が。わたしは話をしようと追いかけたが、足を滑らせて庭の池に落ちてしまった。必死で水草を掴もうとして手にしたのは、なんと死んだ男性の手。警察によれば、その男性は黒人ジャーナリストだという。だが、白人が支配する高級住宅地担当の保安官は面倒をさけるため、自殺の線で処理しようとした。そんなのは納得がいかないし、逃げた少女のことも気にかかる。わたしの闘いがはじまった!シカゴの女性探偵V・Iがポスト9・11のアメリカを駆ける。ヒロイン・ハードボイルドの頂点を極めた著者が贈る、V・I・ウォーショースキー・シリーズ最新傑作。

最期の声最期の声

頭部を撃ち抜かれ息絶えた、愛する妻ステファニーの無惨な姿。それが現場に急行したバース署殺人捜査班ピーター・ダイヤモンド警視が直面したものだった。一体なぜ、彼女が殺されなければならないのか?長年連れ添ってきた妻を襲った、あまりに突然の悲劇に絶句し、立ちすくむダイヤモンド。同僚たちはただ遠巻きに見守ることしかできなかった。やがて葬儀も終わり、犯人逮捕に全力を尽くす決意をしたダイヤモンドだったが、被害者の夫が正式な捜査に参加を許されるはずもなく、たった一人で調査を開始する。だがそんな時、ダイヤモンドは、警察の捜査を統括するマガーヴィ主任警部に呼び出され、取調室へと連行される。彼に妻殺しの嫌疑がかけられているのだ。アリバイを追及されたダイヤモンドは激昂し、席を立つ。だが、殺害に使われた可能性のあるスミス&ウェッスンが自宅の庭から発見され、彼の立場は急速に悪化していく…。報復のための罠か?陰謀なのか?哀しみに震えるピーター・ダイヤモンド警視は一人の男として、最悪の事件に立ち向かう。衝撃のシリーズ第7弾。

ビタ-・メモリ-ビタ-・メモリ-

恋人のノンフィクション作家モレルのアフガン行きが決まり、憂鬱な日々を送るわたしのもとに、黒人労働者のサマーズから保険金詐欺の調査依頼がきた。また同じ頃、シカゴではホロコーストについて話し合う会議が開催されていたが、そこでスピーチをしたラドブーカという男性の名前を聞いて、親友の女医ロティが失神してしまう。彼女の過去と関わりがあるらしいのだが、何を訊いてもいっこうに答えてくれない。彼女を助けたい一心でわたしはラドブーカを調べはじめるが、その直後、まるで調査を妨害するようにわたしを中傷するビラが街頭でばらまかれた。さらにサマーズの保険を扱った代理店の店主が殺され、ロティが忽然と姿を消す。わたしは二つの事件の意外な結びつきに気づくが、そのせいで身近な人間を危険に晒すことに。事件は混迷を極め、真相を追うわたしの前に事件に関わる人々の苦く哀しい過去が浮かび上がる。過去の亡霊に悩む親友のために奔走するV・Iの友情が深い感動を呼ぶ大作。英国推理作家協会賞ダイヤモンド・ダガー賞(巨匠賞)に輝く著者が贈る、女性探偵V・I・ウォーショースキー・シリーズ第10弾。

天球の調べ天球の調べ

フランス革命から6年を経た1795年のロンドン。街中では、王制復活をめざす貴族やその運動を阻止しようとする共和国のスパイが暗躍していた。そんななかで、赤毛の娼婦ばかりを狙った絞殺事件が相次ぐ。内務省の役人ジョナサンは、その手口から、犯人が1年前に愛娘エリーを殺したのと同一人物だと確信し、とり憑かれたように一人調査に没頭していた。その一方で、革命後のフランスからイギリスに入り込んだスパイの監視という本務においても、フランスの天文学者団体を隠れ蓑にして共和国政府との秘密文書がやりとりされているという情報を入手。真相を探るために、天文学者である異父兄のアレグザンダーを利用することを思いつく。ジョナサンは、さっそくフランスからの逃亡貴族で天文学を研究する美しい姉弟の豪邸に彼を差し向けてみるが、どうやら、屋敷に出入りする人物のなかに、共和国政府側のスパイや連続殺人鬼がひそんでいることが判明する…。娼婦殺し、天文学、暗号解読-絢爛たる物語世界が展開する、衒学的サスペンスの逸品。

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