著者 : 山本周五郎
周五郎のユーモア小説は単純ではない。 ほんとうの自分ではないことに気づいて堪忍袋の緒を切る「評釈堪忍記」には、占領下日本の悲哀が隠され、口舌で藩の権力争いを収める「おしゃべり物語」は、秘事・陰謀が欲望まみれなことを語りかける。城内のあらゆる出来事を自分がやったと名乗り出る「わたくしです物語」には、「責任」を顧みない「時代」への警鐘もある。他「真説吝嗇記」「ゆうれい貸家」「よじょう」「ひとごろし」を収録。おかしみはやさしい人間のもの。珠玉のユーモア七編を厳選。 好評の『山本周五郎 人情ものがたり』(武家篇)『山本周五郎 人情ものがたり』(市井篇)『山本周五郎 心ばえの物語集』に次ぐ第4弾。解説は新船海三郎「時代のなかのユーモア」を付載。 〜〜〜〜〜〜 周五郎のユーモア小説は単純ではない。ほんとうの自分ではないことに気づいて堪忍袋の緒を切る「評釈堪忍記」には、占領下日本の悲哀が隠され、口舌で藩の権力争いを収める「おしゃべり物語」は、秘事・陰謀が欲望まみれなことを語りかける。城内のあらゆる出来事を自分がやったと名乗り出る「わたくしです物語」には、「責任」を顧みない「時代」への警鐘もある。他「真説吝嗇記」「ゆうれい貸家」「よじょう」「ひとごろし」を収録。「ユーモアは、もしかすると人が生きる〈真実〉に一番近いのかもしれない。夏目漱石はユーモアを〈人格の根底から生ずる可笑味〉と評した」(新舩海三郎解説「時代のなかのユーモア」より)。 好評既刊『人情物語 武家篇』『人情物語 市井篇』『心ばえの物語集』に続く、山本周五郎の珠玉の短編集。 ※書影を最終画像に変更いたしました(3/6)。 評釈堪忍記 真説吝嗇記 おしゃべり物語 ゆうれい貸家 よじょう わたくしです物語 ひとごろし 【解説】 時代のなかのユーモア(新船海三郎)
人は心ばえーー 相手を思いやり気遣う、ひたすらな心働き。貧乏が邪魔をし、純情が遠回りさせるけど、思いはいつか必ず届く。人情ものとは一味違う「心延え」を主題とした山本周五郎の名作短編をオリジナル編集。「おれの女房」「湯治」「三十ふり袖」「かあちゃん」「釣忍」「水たたき」「ちいさこべ」。心の近づき、寄り添い、延ばしあいを伝える好短編7作を収録。解説として新船海三郎「〈心ばえ〉ということ」を付載。 〜〜〜〜〜 人情ものとは一味違う、ひたすらに相手を思いやり心を延ばす「心ばえ」のある人びとの登場する傑作七編を、オリジナルに編集。 〈収録作品〉おれの女房/湯治/三十ふり袖/かあちゃん/釣忍/水たたき/ちいさこべ 貧乏が邪魔するも、絵師又五郎の元に戻るお石。そこへ又五郎の心が延びる「おれの女房」、心の延ばしようの取り違えをえがく「三十ふり袖」、貧乏によって修復不可能にみえる親子でも相手を思いやる気持ちがあれば心は延びることを教える「かあちゃん」、貧しくなくても親子、兄弟の仲が軋む「釣忍」、器用ゆえに相手の人生を狂わす怖さをえがく「水たたき」、幼なじみの若棟梁の茂次とおりつの心が揺れながら近づく「ちいさこべ」など七編を収録。 ※解説◎新船海三郎(文芸評論家):「『心ばえ』ということ」掲載 おれの女房 湯治 三十ふり袖 かあちゃん 釣忍 水たたき ちいさこべ 【解説】「心ばえ」ということ(新船海三郎)
人の温もり、生きる誇りを描く山本周五郎の名作短編をオリジナル編集。おしずの一途な愛を描いた「おたふく」、家付き娘の放蕩無頼を相手に家と商売を守る意気を見せる「こんち午の日」、火鉢づくりにかけた職人の誇りがみんなの自慢の「ちゃん」、岡場所にもまことが出逢う「つゆのひぬま」、そして「将監さまの細みち」「落葉の隣り」。庶民の心根をしみじみと語る好短編6作を収録。解説として戸石泰一「「庶民」性の底にあるもの」を付載。 山本周五郎の作品から、しみじみと心を丸くする人情ものがたりを市井篇・武家篇にオリジナル編集。2022年4月下旬、2冊同時発売! 〈市井篇〉 おしずの一途な愛をえがいた「おたふく」、家付き娘の放蕩無頼を相手に家と商売を守る意気を見せる「こんち午の日」、岡場所にもまことが出逢う「つゆのひぬま」、火鉢づくりにかけた職人の誇りがみんなの自慢の「ちゃん」など、庶民の心根をしみじみと語る好短編六作を収録。 おたふく こんち午の日 将監さまの細みち ちゃん つゆのひぬま 落葉の隣り [解説]「庶民」性の底にあるもの(戸石泰一)
人の温もり、生きる誇りを描く山本周五郎の名作短編をオリジナル編集。旧友の仕官を助ける「人情武士道」、馴染まぬ新妻の愛の成就をはかる「山椿」、肩寄せ合う人たちのためにかけ試合をする「雨あがる」、婢や使用人にも慕われた妻の日常をはじめて知る「松の花」、死去した夫人の願いをわが事として仕えた下女の「二十三年」、そして「四月のあやめ」「橋の下」「裏の木戸はあいている」「墨丸」。武家とその妻女たちの人情ものがたり9編を収録。解説として戸石泰一「メルヘン」を付載。 山本周五郎の作品から、しみじみと心を丸くする人情ものがたりを市井篇・武家篇にオリジナル編集。2022年4月下旬、2冊同時発売! 〈武家篇〉 旧友の仕官を助ける「人情武士道」、馴染まぬ新妻の愛の成就をはかる「山椿」、片寄せ合う人たちのためにかけ試合をする「雨あがる」、婢や使用人にも慕われた妻の日常をはじめて知る「松の花」、死去した夫人の願いをわが事として仕えた下女の「二十三年」など、武家とその妻女たちの人情ものがたり九作を収録。 人情武士道 山椿 雨あがる 四月のあやめ 橋の下 裏の木戸はあいている 松の花 墨丸 二十三年 [解説] メルヘン(戸石泰一)
最愛の妻を自死に追い込んだ理由を探る軽輩・友助の闘いを描く「木綿触れ」。家族に売られ島送りにされた渡世人・忠七が切なる願いを叶えるべく帰郷する「生国は地獄にござんす」。盗賊団頭首・角右衛門が活躍し、鬼平シリーズの先駆をなした「看板」。彼らが命を懸けてでも守りたかったもの、成し遂げたかったことは何だったのか。“男の死”をテーマに編まれた飲泣呑声の時代小説アンソロジー。
親に捨てられ、家もない孤独な少女・繁あね。病気で膿だらけの彼女に声をかけられた「私」は、ふと彼女に得も言われぬ美しさを垣間見る。生命の奥から立ちのぼる美を描き出した表題作他、凋落した武士のもとに現れ、男を立ち直らせていく女性の強さを優美に描いた「あだこ」など。女の美の真髄を匂やかに綴った七篇。
武田家再興の鍵を握る秘巻を巡って四人の少年武者の艱難辛苦を描く「悪龍窟秘譚」。智恵が足りぬと蔑まれていた弟が悪徳の商売敵をやりこめる「鹿島灘乗切り」。父娘の命を賭けた伊達政宗への諌言を描く「誉の競矢」。剛勇無双の本多平八郎と同名の臆病侍が心機一転、強敵に挑む表題作。新発見二編を含む快作二十一編収録。
強欲な庄屋らに騙されすべてを失った八百助は、山の神へ捻じ込みにいき、職務怠慢をなじった挙げ句、祠を燃やすと恫喝。恐れおののいた山の神より“思うことは何でもかなう力”を手に入れる。自らにかけた忍術で目も覚めるような美丈夫に変身した八百助は、色と欲に目が眩んだ世間に痛快な復讐劇を仕掛けていく。巧みな筋運びと驚愕のオチはさすが周五郎!の表題作を含む傑作短篇集。
何をするにも妻を優先する浪人の孫次郎。ある日、窮地に陥った武士を助けたことから剣術指南役として召し抱えられることになるが…。孫次郎の告白と夫婦の真実を、哀切深く綴った表題作「おもかげ抄」ほか、本当の優しさとは何か?その問いに向き合う「かあちゃん」など、さまざまな家族、愛の姿を描く七篇。
この街の住人たちには、自分を偽る暇も金もない。他人には見えない電車を毎日運行する六ちゃん。夫を交換し合って暮らす勝子と良江。血の繋がらない子供を五人も養う沢上良太郎に、自宅に忍び込んだ泥棒をかばうたんば老人──。誰もがその日の暮らしに追われる貧しい街で、弱さや狡さを隠せずに生きる個性豊かな住人たちの悲喜を紡いだ「人生派・山本周五郎」の不朽の名作。
仇はきっとうちます。娘はそっと釵を忍ばせた。婿養子の父親は懸命に働き、店の身代を大きくした。淫蕩な母親は陰で不貞を繰り返した。労咳に侵された父親の最期の日々、娘の懸命の願いも聞かず母親は若い役者と遊び惚けた。父親が死んだ夜、母親は娘に出生の秘密を明かす。そして、娘は羅刹と化した……。倒叙型のミステリー仕立てで描く法と人倫の境界をとらえた傑作。
「下郎、待て!」。来栖伊兵衛は後方から馬を煽り、泥を浴びせた無礼な乙女に平手を見舞った。だがこの乙女、なんと主君が溺愛する五女、万姫だったのである。薙刀と小太刀にすぐれ、男勝りの気性と目も覚めるような美貌で鳴らす万姫は激高し、伊兵衛に“戦い”を挑んでくる。姫に翻弄される伊兵衛ーしかしある事件を機に二人の関係は一変する!!周五郎流『じゃじゃ馬ならし』ともいうべき痛快ロマンの表題作を含む傑作短篇集。
徳川中期、農村が疲弊し、都市部の商人が力を持ち始めた転換点。老中首座の重責を担う田沼意次は、貧者への重税、賄賂政治、恣意的人材登用と非難にまみれていた。-悪政の噂は本当なのか。出所はどこなのか。絶望の淵にあっても、孤独に耐え、改革を押し進めた田沼意次という不屈の人間像を新しい視点から描く傑作歴史長編。
突如、命を狙われた武士とそれを助ける女。男が明かされた自らの素性、隣藩との領地争いと権力闘争…表題作「逃亡記」ほか、南町奉行所を舞台に、左官職人殺しと自首した女の探索をとおし、深川河岸の人々を鮮烈に描く「しじみ河岸」など。市井の人々の息づかい、生き様を活写した、江戸ミステリの名作六篇。
五年の在任中、署でも官舎でもぐうぐう寝てばかり。転任が決るや、別れを悲しんで留任を求める市民が押し寄せ大騒ぎ。罪を憎んで人を憎まず、“寝ぼけ署長”こと五道三省が「中央銀行三十万円紛失事件」や「海南氏恐喝事件」など十件の難事件を、鋭い推理と奇抜な発想の人情味あふれる方法で次々解決。山本周五郎唯一の警察小説。
幼い恋心で男との約束を交わしたおせんは、過酷な運命に翻弄される。おせんを愛する幸太は、命をかけて彼女を守り抜く(『柳橋物語』)。周囲の愛情に包まれ何不足なく育ったまきに降りかかった夫の裏切り。密かに慕う直吉は愚直なまでにまきに尽くすが(『むかしも今も』)。一途な愛の行方を描く、下町人情溢れる感動の傑作二編。
謎の結社に入った平馬少年がチンピラ“隼の定吉”と共に某国軍器製造場爆破を目指す「囮船第一号」。キリコ蕃王の金鉱が南洋の島にあるという。大河内信之は遂に古文書の解読に成功する。黒豹、毒蛇、毒蛭等、猛獣毒蟲を繁殖させたと記録にあるその島に、士郎少年は勇敢にも乗り込むが…(表題作)。新発見四編を含む傑作八編を収録。
清らかで美しく、貪欲で邪悪なのが人間だ。幕府の御番医という栄達の道を歩むべく長崎遊学から戻った保本登は、小石川養生所の“赤ひげ”とよばれる医長・新出去定の元、医員の見習勤務を命ぜられる。不本意な登は赤ひげに反抗するが、その一見乱暴な言動の底に脈打つ強靱な精神に次第に惹かれてゆく。傷ついた若き医生と師との魂のふれあいを描く医療小説の最高傑作。