著者 : 山本文緒
東京で働いていた32歳の都は、親の看病のために実家に戻り、近所のモールで働き始めるが…。恋愛、家族の世話、そのうえ仕事もがんばるなんて、そんなの無理!誰もが心揺さぶられる、7年ぶりの傑作小説。
東京にいる娘が骨折。駆けつけた私に、娘は初めて家族の秘密を吐露するが(「彼女の冷蔵庫」)。主任との不倫。そこにはさらなる隠し事がー(「ご清潔な不倫」)。骨粗鬆症、皮膚炎、便秘、突発性難聴、睡眠障害、生理痛、アルコール依存症、肥満、自律神経失調症、味覚異常。がまんを重ねた末に身体を壊し、普通の人間関係からはじき出され、居場所を失った人々が、ゆるやかに再生してゆく様を描いた、10編の心揺さぶる物語。
「旅」をキーワードに名作短編を紹介するアンソロジー。地球を離れて遠くの惑星まで行くストーリーから、空港からホテルに行くつもり、という話、さらには心理的な距離感を旅になぞらえた作品まで、緩急自在、多種多様な「旅」。物語に触れるとき、心は時間と空間を飛び越えます。読書とは、まさに旅そのもの。本書は、ここではないどこかへ行きたいあなたを、新たな読書の世界へと招待する扉です。
「めぐりあい」をキーワードに編まれた短編アンソロジー。人と人とが出会うときに生まれる、ときに感動的な、ときに意外な、ときに不思議なドラマを、作品の数だけ味わえます。これまで触れたことのなかった作家や、好きな作家のまだ見ぬ名品との「めぐりあい」が、この本にあるはず。ふだん本をあまり読まない方は日本の文学の底力を感じ、読書好きはきっと納得。自信を持ってお届けする13編。
岡花小春16歳、夢は漫才師の高校生。何をやってもカンペキにこなす梅太郎とコンビを組んでお笑いコンテストに挑戦したけれど、美少女審査員・鶴子にけなされ、散々な結果に。彼女はなんと大手芸能プロ社長の娘だった。小さなプロダクションからのスカウトの電話で夢が現実になりかけたとき、小春の前に再び鶴子が登場して!?恋も家族も巻き込んで、目指すは笑いの花道だ!夢に向かってひた走る高校生たちを描いた青春小説。
故郷を出て佐々井と二人、久里浜で暮らす冬乃のもとに、連絡を絶っていた妹・菫が転がり込んできた。一方、芸人に挫折し会社員となった川崎は、勤め先がブラック企業だと気付いていた。だが上司の佐々井はどこ吹く風で釣り三昧。妹の誘いでカフェを始めることになった冬乃だが、夫に言い出せずにおりー。小さな秘密が家族と暮らしに変化をもたらしてゆく。生き惑いもがきながらも、人生を変えてゆく大人たち。傑作長篇!
早く大人になりたい。一人ぼっちでも平気な大人になって、自由を手に入れる。そして新しい家族をつくる、勝手な大人に翻弄されたりせずに。気性の激しい若い母のもとで育った手毬。犬のジョンと、隣に住むジョンに似たアメリカ人の男の子が、無二の親友だった。父親不在の家庭にやってきた新しい義父を通じ、人のぬくもりを知る手毬だったが。思うままに生き、変転を続ける女性の60年にわたる人生と家族、愛を描く。
24歳になっても、さとるの門限は夜10時だ。学校教師の母には逆らえない。スーパーで知り合った大学生・鉄男と付き合い始めても、さとるは母を怖れていた。屈託の無い笑顔、女性に不自由したことのない鉄男は、少し神経質なさとるに夢中だった。だが、さとるは次第に追いつめられていく。家族が恋を、踏みつけるー。このまま一生、私はこの家で母と暮らすのだろうか。さとるの家で鉄男が見たものはー。息詰まる母子関係を描く。
家を建て直そうか。新しい書斎、広い台所。そうすれば家族はもっと幸福になるに違いない。学校教師の茄子田太郎は、住宅展示場で営業マン・秀明と出会う。一方、秀明の妻・真弓ががむしゃらに手に入れた家庭は、天国ではなかった。子供は好きだけど、もし自分が夫と同じくらい稼げたら?“たまには憂さ晴らしをする権利”だってほしい。そうだ、働こう。二組の家族の、運命の歯車が動き出す!家族の幸福を問う、極上小説。
身勝手な両親を尻目に、前向きに育った中学三年生のタマコ。だが、大好きな祖父が老人ホームに入れられそうになり、彼女は祖父との“駆け落ち”を決意する。一方、タマコを心配する若い担任教師は、二人に振り回されてー。奇妙で優しい表題作のほか、ダメな男の二十年ぶりの帰郷を描く「ソリチュード」、独身の中年姉弟の絆を見つめた「ネロリ」を収録。温かくて切ない傑作小説集。
昨日も暇だった。明日もたぶん暇だろう。結婚6年目、専業主婦。子どもはいない。退屈でない暮らしなど、考えただけでゾッとする。多忙な夫は今夜も家に帰らない。この緩やかな生活に、猫と隣家の息子が飛び込んできてから、何かが崩れ始めた。封印したはずの衝動。少年との、二人だけの秘密。嘘は次第に周囲を巻き込んでー。マンション住まいの主婦の平凡な生活が一変する様を、ドラマティックに描いた傑作恋愛長編小説。
丘の上の家でひっそり暮らす不思議な女性・さとるに惹かれていく大学生の鉄男。しかし次第に、母親に怯え、他人とうまくつきあえない不安定な彼女の姿に疑問を募らせていく。母娘三人の憎悪が噴出するときに見えてくる、戦慄の情景とはー。恋愛の先にある家族の濃い闇を描いて、読者の熱狂的支持を受け続ける傑作長編小説。
どうして私はこんなにひねくれているんだろうー。乳がんの手術以来、何もかも面倒くさく「社会復帰」に興味が持てない25歳の春香。恋人の神経を逆撫でし、親に八つ当たりをし、バイトを無断欠勤する自分に疲れ果てるが、出口は見えない。現代の“無職”をめぐる心模様を描いて共感を呼んだベストセラー短編集。直木賞受賞作品。
一番大切なのは、何をする時間ですか?今、一番したいことは何ですか?絶対手放せない、私の最優先なこと。それは、人が見れば笑ってしまうようなこだわり。恋だけでも家庭だけでも、仕事だけでもない。三十一歳、初めて気づく、ゆずれないことの大きさ。そこに、本来の自分を形作るものが見えてくる。はたして人は、大事なものだけで生きられるのか?揺らぎ惑う大人たちを描く、山本文緒の世界。
甘ったれでわがままな7歳の少女、手毬。家族に愛され、平穏な日々をおくるはずだったのに…。17歳、かつては姉だった人を母親と呼ぶ二人だけの暮らし。27歳で掴んだ結婚という名の幸せ。その家庭を捨て幼なじみと駆け落ちした37歳。そして…。複雑に絡みもつれる家族の絆、愛と憎しみ。運命に流されるひとりの女性の歳月を、半世紀にわたって描く連作長編小説。
ーーどうか、どうか、私。これから先の人生、他人を愛しすぎないように。他人を愛するぐらいなら、自分自身を愛するように。水無月の堅く閉ざされた心に、強引に踏み込んできた小説家の創路。調子がよくて甘ったれ、依存たっぷりの創路を前に、水無月の内側からある感情が湧き上がってくるーー。世界の一部にすぎないはずの恋が、私のすべてをしばりつけるのはどうして。恋愛感情の極限を抉り出す、戦慄のベストセラー小説。直木賞作家の原点。
運動オンチで泳げないけれど、学校の成績だけはいい七生。なのにどんなに頑張っても同じクラスの伊戸川くんだけは追い抜くことができない。負けたくない!塾に通うことにした七生だが、驚いたことに伊戸川くんも同じ塾に通っていた。ライバル心がいつしか淡い恋心に変わってー。不器用で一途な少女の、ひと夏の成長をつづる青春ストーリー。巻末に文庫書き下ろし特別エッセイを収録。