著者 : 山村正夫
江戸川乱歩はミステリーを「犯罪に関する難解な秘密が、論理的に、徐蕨に解かれて行く径路の面白さを主眼とする文学」と定義した。これはまさに相手の駒の動きを予測し、理詰めで解き明かす将棋の勝負と類似している。事実、推理作家には将棋好きが少なくなく、題材にした作品も数多い。本書は文壇の実力派たちによる白熱の名人戦九局を収めた傑作アンソロジー!
戦後間もない1947年、探偵作家クラブは設立された。その後、関西探偵作家クラブとの合併や法人化に伴う名称変更を経て“日本推理作家協会”となった作家団体は、今年で70周年を迎える。初代会長の江戸川乱歩から現代表理事の今野敏まで。協会の歴代理事長を務めた14人の作家が夢の競演!日本ミステリー界の第一線で傑作を生みだしてきた作家に脈々と受け継がれる妙技を綴じ込めた究極の一冊。
同居の老人の奇行に悩まされ追い詰められた主婦が、一線を越えた末に信じがたい事実を知ることになる(「厭な老人」)。静かな部屋で時を告げる古い鳩啼時計には、遠く離れた恋人との悲劇の結末が隠されていた(「鳩啼時計」)など、歴史ある日本推理作家協会賞を受賞し、ミステリー界が誇る作家六名による、幻想と怪奇に彩られた物語を収録した珠玉作短編集シリーズ第五弾。
おれの名は佐分利健。妾腹ながら服部半蔵の18代目の末裔だ。伊賀の里は油日岳の隠形谷から東京に来ていた忍法の師匠玄爺の、最愛の若妻が何者かに拉致された事件を追っていたおれの前に、インド魔術を思わせる全裸美女の空中浮遊死体が…。
「ミシャグジ教団」-長野県の諏訪地方に古来より存在する秘密宗教結社。その信者が50年に1度結集し10代前半の美少女を生贄にする「闇の大祭」が近づいているという。一人娘を誘拐されたフランス料理店オーナーは「湯殿山麓呪い村」事件の解決で名高い滝連太郎に捜査を依頼した!書下ろし伝奇本格推理。
滝連太郎は、教授の紹介で、映画製作にからんだ楊貴妃ゆかりの地を訪ねるツアーに講師として参加することになった。依頼者は、楊貴妃の末裔と称する美容総合センター社長の唐渡美帆だった。翌日、滝は武見香代子を誘い、デパートで開催されている「泉涌寺秘宝展」に出かけた。展示されている楊貴妃観音を見るつもりだったが、そこで警視庁の大曽根警部に声をかけられた。彼もある殺人事件との関連で捜査に来ていたのだ。数日後、捜査本部に楊貴妃を詠った白居易の「長恨歌」が送られてくる…。楊貴妃渡来伝説に材をとった書下し長編伝奇ミステリー。
「鬼だ!鬼の仕業としか考えられん」-府中の古刹、真光山三界寺で発見されたバラバラ死体。その右手には、酒呑童子伝説にまつわる埋蔵金のありかを示す「鬼駒」と「鬼殺し」という棋譜が握られていた。被害者は坂田公時の子孫を自称し、さらに大江山で第2の殺人が起こり、怨念絵図が浮かびあがる。
夭折した若者の死を悼む奇妙な霊前結婚の挙行される斎場-。そこに集まった三人の男女に真っ黒に塗りつぶした人型埴輪とテープの声が送られて来た。「約定を果してもらうときがやってきた。折鶴様の死に殉じるときが。三つ首塚にあやかれ…」。発信人は師京行人、死刑執行人の変名だ。そして、第一の犠牲者、銀座のバー『ラビリンス』のマダムが自室風呂場で首を吊られ、第二、第三と区行は続く。一方、ある青年が病院の一室でエイズのため死に瀕している。彼の死を目前にした懸念と、信州小諸在仙石家にまつわるおどろおどろしい約定の交差する点に浮かび上がる犯人は誰か?
樋口には強姦の前科があった。実刑判決を受けて1年前に出所したばかりだった。それ以外にも何人の女を暴力でものにしたか知れないが、訴えられたことはまるでなかった。すべて女の泣き寝入りだった。出所後はさすがになりを潜めていたものの、一度覚えた味は忘れられなかった…。夏の軽井沢の山荘を舞台に、頭をもたげた“悪い虫”がもとで恐るべき殺人事件に遭遇した男を描く表題作など、二転、三転する巧みな構成で読者を魅了する著者会心の傑作推理集。
青山の喫茶店『オルフェ』に入った探偵作家・雨宮鏡介は、店内の様子がいつもと違うのに気がついた。客の目がまったくまばたきをしないし、唇も動かしていないのに話声が聞えてくるではないか-。恐怖のあまり店を飛び出し、自宅に辿りついた鏡介の前に、昨年、A湖畔で死んだ恋人の香西育江が姿を現わし、思いもよらぬことを告げる。死者の国・霊界に踏みこんだ男の異常な体験と不可解な殺人事件を描く、奇想天外な長編ミステリー。
耶馬台国の女王・卑弥呼の娘・台与は海岸に流れついた若者を助ける。過去の記憶を失っていた男は、そのまま居つく。そんなある日のことだ。台与と若者は、耶馬台国を我ものにせんとして、卑弥呼暗殺が、いままさに実行されんとしているのを知り、救出にかけつける。その最中、男は自らに課せられていた、ある使命を思い出したー!傑作歴史伝奇&ミステリー集。
美人の評判の保母・芝山里枝が顔を滅多打ちにされて惨殺された。新聞記者の根津が、死体に化粧を施す仕事に従事する影の薄い、老婆のような中年女に会ったのはその葬儀の日のことだった。事件を追う根津の前に、やがて明らかになるこの2人の女の因縁。そして真相に迫る根津にとりついたあの女の不気味な死の影ー表現作のほか、4篇の傑作ホラー・ミステリーを収録。