著者 : 山田和子
平凡な男・【楊偉/ヤン・ウェイ】は、出張先のC市のホテルでミネラルウォーターを飲んだところ腹痛で倒れ病院に連れ込まれる。そこは巨大で得体のしれない不気味な迷宮だった。『三体』著者劉慈欣も瞠目する、中国SF四天王の一角・韓松が放つ不条理SF《病院》三部作開幕篇
時空の覇権を争う二大勢力“エージェンシー”と“ガーデン”の工作員は、あらゆる時代と場所に介入し、自陣に有利な未来を作り出すべく永い暗闘を続けていた。ある平行世界で二つの巨大帝国を壊滅させるミッションを成功させた“エージェンシー”の工作員レッドは、作戦遂行中ずっと、本来ならそこにいるはずのない敵の存在を感じていた。そして、激闘を終えた静寂の中で、“ガーデン”の工作員ブルーからの手紙を発見するー思いがけず文通を始めた彼女たちは、やがてお互いを好敵手と認めあうようになるが…ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、英国SF協会賞を受賞した、超絶技巧の時空横断SF中篇。
1941年、第二次世界大戦の波が押し寄せつつある国際都市上海の共同租界。イギリス人少年ジムは、無邪気に零戦や模型飛行機に心を惹かれる日々を送っていた。だが、日本軍の侵攻によってすべては一変する。両親とはぐれひとりぼっちになったジムは龍華収容所へと送られ、長期の拘束を通して“人間のすべて”を学び成長してゆく。SFの巨匠バラードの原点となった傑作、新訳決定版。
アメリカSF界最高のカリスマ作家ハーラン・エリスンが、既存の英米SF界に一石を投じるべく企画編集し全作品に自ら紹介文を付した計33篇収録の伝説的巨大アンソロジーがついに刊行!本書はアシモフのまえがきとエリスンの序文から、デル・レイ、シルヴァーバーグ、F・ポール、ファーマー、ディフォード、ブロック、エリスン、オールディスまでの“危険な”ヴィジョン8篇を収録した3分冊の第1巻。
時は21世紀半ば、世界はワルシャワを中心とする共産主義体制とヨーロッパ・アメリカ合衆国とに完全に二極化されていた。USEAで絶大な権力を握る美貌の大統領夫人ニコル・ティボドーは、タイムトラベル装置を使って秘かにゲーリング元帥を呼び寄せ、恐るべき計画を実行しようとするが…模造人間、超小型違法宇宙船、火星生物などのガジェットを満載、現在の世界を照射するテーマ性を持った異色の長篇、待望の新訳版。
異常な寒波のなか、私は少女の家へと車を走らせた。地球規模の気候変動により、氷が全世界を覆いつくそうとしていた。やがて姿を消した少女を追って某国に潜入した私は、要塞のような“高い館”で絶対的な力を振るう長官と対峙するが…。迫り来る氷の壁、地上に蔓延する略奪と殺戮。恐ろしくも美しい終末のヴィジョンで、世界中に冷たい熱狂を引き起こした伝説的名作。
異国の地で城の地下牢に囚われた女。名前も顔も知らないがこの世界のどこかに存在する絶対の敵。いつ終わるとも知れぬ長い裁判。頭の中の機械。精神病療養所のテラスで人形劇めいた場面を演じる人々-孤独な生の断片をつらねたこの短篇集には、傷つき病んだ精神の痛切な叫びがうずまいている。自身の入院体験にもとづく表題作はじめ、出口なしの閉塞感と絶対の孤独、謎と不条理に満ちた、作家アンナ・カヴァンの誕生を告げる最初の傑作。