著者 : 山際淳司
岸本勇二は、元銀行員。上司を殴って退職し、タクシードライバーをしている。学生時代、アメリカン・フットボールの選手だった彼は、いまも社会人のクラブチームに所属し、休日には仲間たちとフットボールを楽しんでいた。ある晩、勇二のタクシーに刑事が乗ってきた。スリの常習犯を追っているというその刑事に頼まれた勇二は、囮となって犯人逮捕に協力することになったのだが…。惜しまれて急逝した著者、最後の長編スポーツ小説。
肉体を酷使する快感を通じて現代人の不思議な生態が浮かび上がる。もう若くはない男たちが始めたバスケットボール、殴られ役のアジア人ボクサーがリングで知る真実、フリーターが挑むトライアスロン…スポーツと関わる男たちはなぜか哀しく、そして美しい。硬質の文体で奇妙な味わいを醸し出す小説集。
港で、行き場を失った怪物ー二度と素晴らしいスピードでアイスバーンを滑降することも出来なくなった一台のボブスレーが放置されているのを見つけた歯科医の青年は、医院の開業資金をつぎ込み、そこにカフェ・レストラン〈ボブスレー〉を開店する。青春への郷愁をドラマチックに描いた秀作四編を収録。
ラグビーの本場イングランドに、ネコのラグビーチームがあった。その名は〈リヴァプール・キャッツ〉。ラグビーを愛するネコたちの、抒情にみちたラグビー讃歌を、今、あなたに贈ります。
首都をめぐる9番目の環状道路、リングロード・ナイン。その沿道に生起する黄昏色の希望と失意をクールに描くサバービア・ストーリーズ。26人の登場人物が連鎖して、時に甘く、時に苦い物語を演じる。男と女、出会い、わかれ、そして、もういちどはじめから。時速70キロで展開するわれらの時代のドラマ。
新しい都会小説のジャンルをひらく、山際淳司の第一小説集。冷たい風が北北東から吹き、上空千五百メートルの気温がマイナス三度を下回ると、東京を春先の雪が包む。大都市の空中楼閣で季節はずれの舞いを見せる男と女、ひび割れた日常の中での、つかのまの透明な時間…。奇務な味の連作物語12編。
ママはパパと別れるし、彼女はふいにいなくなっちまうし、ついでに犬も死んでしまった。僕の人生、さいきんちょっと暗いぜ。新鋭ピーター・キャメロン、本邦初登場。ミドルクラスの明るい〈悲劇〉を描く80年代のサリンジャー。