著者 : 岩井志麻子
昭和三年の岡山。名家の養子・大鹿保和に、失踪中の作家・金光晴三から手記が届く。そこには、自らの手で殺し、そして蘇らせた妻との日々がつづられていた。おぞましい物語を読み進めるにつれ、存在しない黒い蝶の影が精神を蝕んでいく。手記の内容は創作か、それとも真実なのか。保和は金光夫妻が逗留している新嘉坡の宿へ向かうが、そこで待ち受けていたのはー。
株式会社秋田書店と株式会社誠文堂新光社による新たな文芸エンタテインメントを生み出す新レーベル【APeS Novels】の第二弾!! 『ブラック・ジャック』『恐怖新聞』に続き、本年7月に創刊50周年を迎える大人気コミック誌『週刊少年チャンピオン』の、輝かしい歴史を彩った名作コミック『エコエコアザラク』のノベライズです!! 「エコエコアザラク、エコエコザメラク……」どこからともなく聞こえてくる妖しい呪文と共に黒井ミサが帰って来た!! 70年代のオカルトブームの中でも、「黒魔術」を操る美少女主人公が異彩を放ったホラーコミック『エコエコアザラク』が、自身も作品の大ファンだったと語る岩井志麻子氏により小説として現代に蘇ります!! あるときは災いの象徴として、またあるときは自分に害を為した者への復讐劇として描かれることの多かった黒井ミサとその物語。 悪霊の力を借りて執行される呪術という神秘的なイメージと相まって、昏い魅力に溢れた『エコエコアザラク』のイメージはそのままに、情念を描いた作品で人気を集める岩井氏の筆によって、人々を惑わせる「運命の女」黒井ミサへと昇華され、あたかも幻想文学をも想起させる作品となっています。 黒井ミサの存在に翻弄され、愚かな者たちがさまよい続ける出口のない迷宮へ、あなたも足を踏み入れて見ませんか……? ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ●第一話 逃げる女 「私はいつでも逃げている女なの」--平凡な街の平凡な家庭に生まれ、なんの才覚にも恵まれず、唯一の取り柄である容姿も十人並みをちょっと上回る程度。高校受験の失敗からお決まりの転落を辿った女・有里が目を背け続けてきた真実とは……。 ●第二話 さまよう夫婦 有名画家の息子と美人女優の娘。親からの才能を受け継げなかった残念な二人が運命のような出会いを果たす。二人の子供時代に共通する謎の女性「黒井さん」「ミサちゃん」の記憶が、互いの結びつきをより強固なものにしていく。そして…。 ●第三話 居すわる母 留利子の高校時代からの恋人・俊博には、二人の母がいる。一人は生みの母、そしてもう一人は、俊博の家庭を壊した「父親の愛人」。父が亡くなったいまでもその女を「義母」と呼び続ける俊博の気持ちがわからず、今日も留利子は行きつけの喫茶店で、ウェイトレスの少女に愚痴をこぼす。 ●第四話 追いかけてくる愛人 裕福な家に生まれ容姿にも恵まれ、周囲にはちやほやされて育った須美香だったが、その過去にはひとつの暗い影があった。失踪とも誘拐ともつかぬままいなくなった母。最後の電話で母の口から語られた「黒井ミサ」の名前が、それからずっと須美香の心を縛りつけている。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ■目次 プロローグ 逃げる女 さまよう夫婦 居すわる母 追いかけてくる愛人 エピローグ ********************************
百物語の十回目ーー最後の話を読み終えた時、これまでシリーズで書かれた物の怪の類があなたをじっと見ているかもしれない……。著者が体験、取材した実話をもとに恐怖を描く人気シリーズ、ついに最終巻!
テレビで岩井志麻子を見るたび、私は姉である本間切美を思い出す。生前、姉は芸術家になりたかった。ネットではカルト的な人気があった姉だが、芸術家としては凡庸で素人目でも稚拙とわかる作品は、見る者を不快にさせ不気味で狂気に満ちあふれていた。そして願いは死をもって成就した。切断された姉の首は、彼女の住んでいたマンションの一室で、子供たちに人気のヒョウのぬいぐるみの首にくるまれて転がっていた。この猟奇的な殺され方は、なぜかQ国で起きた「ガオちゃん殺人事件」に酷似していた…。
「自殺した彼女の人生を代わりに生きています」--滔々と壮絶な体験を語る作家志望の女。傷害事件にまで発展した気まぐれの作り話。芸人が体験した3つの謎と符合する実際の陰惨な話。息を吐くように嘘をつき、偽りに偽りを重ねた不実な人々は、やがて虚妄で邪悪な世界に巻き取られていく……。人の語る「真実」とは、その真贋の証明がどれほど難しいか。真実と虚偽のあわいに生じた怪異譚を99話収録した現代怪談第9弾! 第一話 飛んだ足/第二話 似た話/第三話 撃ち抜かれたぬいぐるみ/第四話 カラスの嫌がらせ/第五話 普通が怖い/第六話 首吊りの家/第七話 私の生霊/第八話 生霊の未来……
ダイヤが原因で滅びてしまった一家。夫が妻に語ったある夏の出来事。後輩に対して威圧的な振舞いを続けた男の末路。混線した電話から小さく聞こえる誰かの会話。欲望に支配された人の心の闇は深い。その闇が引き起こすさまざまな怪異におののくと同時に、同じような業に自分自身が囚われていることにふと気づかされる…。善悪の行為が因となり、その報いが身に降りかかる!恐怖がふつふつと臓腑に涌く現代怪談第8弾!
刑務所で病に伏せる罪人に高額な医療費を送りつける逆・死神。古書店で入手した一般人の日記帳に綴られた壮絶な書き込み。ファンから著者に贈られた鍵と簡素な地図。女性ライターの股間に憑いたインチキ霊能者の生霊。どう考えても腑に落ちない、霊とも人間の仕業とも解釈できない出来事から、人間の強烈な悪意や剥き出しの狂気まで。平穏な日常を不安に陥れる99話を収録。知ってしまったことを後悔する、これが現代の怪異譚!
巣箱から除く邪悪な目。絶対に語ってはいけない話。死んでいるのに気付かない男。霊を届けにくる女……。彼岸と此岸の境を失ったとき、人は人ならぬものとなって彷徨う。大好評の実話怪談、第6弾!
奇妙な古着。事件現場の臭い。死んだはずの×子からかかってきた電話。絶対に使ってはいけない部屋。ただそこにいる「誰か」--。ふとした違和感にこそ、恐怖は潜む。大好評の実話怪談、第5弾!
本物の天女ではとも囁かれる妖しき美貌の湯女・お藤。その巧みな語りの噂を聞きつけて、和気湯には様々な客が訪れる。珍しい女客とは、頭の形が異様な人形を作り続ける母と不気味な観音像の話を、湯女になるという女とは、首と腸のみで飛び回る異国の精霊の話を、熊のような侍とは、己の中の別人格に悩まされる話をー語り合うのだった。お藤の前にまた、嘘とも真実ともつかぬ奇妙な物語が立ち上る。傑作時代怪談、第2弾。
江戸時代初期、備前岡山城下の風呂屋・和気湯に、天女のような湯女がいた。名はお藤。その美貌と諸芸は群を抜き、なぜ下世話な風呂屋にいるのかという人々の疑問はもっともなことだった。だが、お藤はけっして身の上を語ろうとはしない。元藩主のご落胤とも朝鮮王族の血をひくとも囁かれるお藤は、いったい何者なのかー。妖しき湯女は、夜ごと男の伽をしながら、寝物語に不可思議な話をはじめるのだった。
少し感覚のずれている女の子、旅行先で出会った理不尽なガイド、笑いながら人を陥れようとする男……誰もが現実に出遭い、体験しうる恐怖を『ぼっけえ、きょうてえ』の実力派が描く、現代の百物語!
だから。だから、殺した。二人して私を侮辱し、笑い者にしたのだ。脅したり陥れるよりも、その罪は重い。だから、殺した。女の日常に潜む狂気の沸点を描いた戦慄のホラー・サスペンス。
明治の岡山、瞽女屋敷の女達。光を失った分だけ、何らかの力が与えられていた。庄屋の娘すわ子様を頭に、三味線を弾き歌をうたい按摩をし、生活している。物の怪を感じる力のあるお芳は、生まれつきの盲目だったという。だが、お芳には、見えていた思い出があり…。やがて、すわ子様が寝込み「牛女」とうわ言を繰り返すようになった時ー。土着の怨念と恐るべき因果がめぐる長編ホラー。
生温い水のようなホーチミンの男。乾いた風のようなソウルの男。夜のネオンのような東京の男。三つの都市で私を待つ、三人の愛人。それぞれに異なる性愛の味。果てしない快楽の三重奏に溺れていく私。そして、可愛がられることに慣れた男たちが、もっと多くを望むようになってー。男という触媒によって高まる、灼けるような欲望と甘やかな母性。女のエロスの表裏を濃密に描く官能小説。
不細工で下腹の突き出た、しかしプライドだけは高い名門女子大生デリヘル嬢。「あたしバカだからわかんな〜い」を口癖に、男を欺き続けることが生き甲斐のC級グラビアアイドルー。どこにでもいる普通の女たちが垣間見せる、虚無的で渇いた性愛模様を切り取った、岩井版「黒い報告書」ともいうべき作品集。