著者 : 岩崎力
プルースト(1871-1922)が20代前半に書いた短篇小説・散文・詩をまとめた第一作品集。鋭敏で繊細な感受性、細部にわたる緻密な観察、情熱や嫉妬といった心理の微妙かつ執拗な探究、スノビスムへのこだわりなど、大作『失われた時を求めて』にも見られる特徴の数々が本書にはすでに現れている。作家プルーストの原点。
一代で巨万の富を築いた親のもとに一人息子として生まれたラルボーは、家業を継ぐことを拒み、富裕な好事家、教養豊かな通人として、国境を軽々と越えるコスモポリタンの生涯を全うした。意識の流れを“内的独白”の手法で書いた、印象、感覚、夢想、風景の鮮やかさが清新な中篇『秘めやかな心の声…』を併録。
旅と書物をこよなく愛したフランスの作家ラルボー(1881-1957)の代表作。短篇小説と詩と日記から成る“全集”という風変わりなこの作品は、いわば“逆向きの教養小説”だ。幼くして両親を失い、莫大な遺産を相続した主人公は、億万長者というばかげた境遇を捨て去り、一個の人間として生きるためにヨーロッパ各地を放浪する。
「エリック、なんて変ったんでしょう」ともに少年期を過ごした館に帰り着いたエリック、コンラートのふたりを迎えたのはコンラートの姉ソフィーだった。第一次世界大戦とロシア革命の動乱期、バルト海沿岸地方の混乱を背景に3人の男女と愛と死のドラマが展開する。フランスの女流作家ユルスナール(1903-87)の傑作。
《ゆるぎなき心》とは、1984年10月8日、ヴェネツィアにおいて結成された秘密結社の名。その目的は幸福の追求…流れる音楽はモーツァルト…メンバーは作家Sをふくむ男性2人、女性3人。冬のパリ、春のヴェネツィア、夏のレ島を経て秋のパリへ、Sなる作家の一年がめぐる。Sはメンバーの女性たちと快楽を追求しつつ、ただ瞬間だけの愛を生きた過去の女たちの記録『赤い手帳』を読む。一方で、ダンテ『神曲』映画化のシナリオ執筆をひきうけているSと、アメリカのプロデューサーとその代理人、日本人女性らとの交渉がはじまる…。文学の21世紀を先取りする小説。
第一次大戦終結直後のパリ祭から「大恐慌」の幕開けのニューヨーク株式市場大暴落の翌日まで、有閑階級の一青年がパリの芸術家たちのあいだを駆け抜ける。惑溺と批評に満ちた稀有な青春譚。
「近親相姦」という愛の極限の姿。「傲慢であるすべを知らないだけに、いっそう澄んだ目で世界をみつめる」ほとんど無教養で単純なひとりの男の生と死。透徹した古典的文体で描き上げたユルスナールの佳品三作。
パリのスキャンダル!アヴァンギャルドの法王ソレルスは、ついにあらゆる壁を突破した。ビッグバンから女の秘密まで、いまや彼の言葉には、ありとあらゆるものを表現する魔力があたえられた。ソレルスの新小説の前には、すべてのポストモダン小説は青ざめ、現代哲学は色を失なう。フランスで話題のベストセラー小説。