著者 : 岩根圀和
プラネタ賞受賞のスペイン・亡命作家の幻の名作が甦る! フラメンコに象徴される『情熱的実体』の解明に奔走する女子大生……レヴィ=ストロースを始め文化人類学の時代の風を受け、迷信、呪術、生活習慣などに大きな関心が向いた時代に、アメリカの女子大生ナンシーがスペインのセビーリャに留学したとの設定で、アメリカの娘からすれば、スペイン社会は「ジプシーの世界(情熱的実体)」そのものであるとするナンシーの博士論文を巡って、人や社会、歴史が縦横無尽に疾走する様がユーモアあふれる筆致で描かれる、スペイン社会のもう一つの世界“ロマ社会”を表現しきった長編ロマン! 第1部 アンダルシアがナンシーを発見する 手紙 I ナンシー、セビーリャを発見する 手紙 2 ナンシー、ジプシー世界に入る 手紙 III ナンシーと映画館の冒険 手紙 IV ナンシーのハイキングとカフェの集会 手紙 V ナンシーならびにしゃべる鹿 手紙 VI ナンシーと金色スズメ蜂 手紙 VII 中庭、ライバルそして魔法の井戸 手紙 VIII ナンシーと花 手紙 IX ガスーレスでの通夜 手紙 X ガスーレスでの顛末 第2部 ナンシーの博士論文『ジプシーの世界』 I 方向指定の座標 II ニューヨークからの手紙とバルデペーニャのジプシー III バル1・2・3にて IV 移り気なナンシーとブッダ V アカデミックでドラマチックなナンシー VI 歴史的考察 VII ジプシーの弁証法ならびに《ホッカノ・バロ》 VIII いくつかの適切な代理人 IX ブレリアス、ファルッカ、グラナディーナス X ソレアとトリアーナのジプシー XI 《毒》、ボレロとログローニョの書肆 XII カルセレラと彷徨える魂 XIII サエタ XIV 笑いと戦慄の幕間 XV 《大悪霊》、ベルセブブと隻眼達 XVI カントゥエソがガンディーについて意見を言う
謎に包まれた偽作も生まれた世界的ベストセラーの背景! 本書は『ドン・キホーテ』誕生の歴史的背景とエピソード、 十六・十七世紀当時のスペインのひとびとが何を考え、何を食べ、 どのような暮らしていたのかを綴る。図版多数! 1『ドン・キホーテ』を巡る考察 第一章 ドン・キホーテを狂わせた書物 第二章 もうひとつの『ドン・キホーテ』後編 第三章 『ヘロニモ・デ・パサモンテの生涯と苦難』 とレパント海戦 第四章 郷士ドン・キホーテの家系調査 II ドン・キホーテ時代の生活と技術 第五章 ドン・キホーテの経済状態 第六章 ドン・キホーテ時代の献立 第七章 四大河川の水利用 第八章 風車と水車 第九章 ドン・キホーテの衣服 文献 年表 索引
コンスタンチノープル防衛のための異教徒トルコ軍との戦い ーー天下無敵の父アマディス・デ・ガウラの子 『コンスタンチノープル皇帝エスプランディアン』の波瀾万丈の 世界を描く古典的名書。 スペイン版「騎士道物語」『アマディス・デ・ガウラ』の続編。 本邦初訳! 「父親への温情を息子(エスプランディアン)にもと言うわけには いかん。家政婦さん、窓を開けてこいつを裏庭へ放りなされ、 これからやる焚き火の火付け役に使うとよろしい。」家政婦は 喜々として言われるとおりにした。かくして英傑エスプランディアンは 裏庭へ舞い降り、迫り来る火炎をじっと待つことになったのである。」 ( セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ』第6章より)
不義の子アマディスのオリアナ姫との別離。 「緑の剣の騎士」としての苦難。怪物エンドリアゴとの死闘。 オリアナ姫との再会ならびに 「美貌の息子・エスプランディアン」の誕生など 「ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ」の頭を狂わせた スペイン最古の騎士道物語の大長編、後半。 「…アマディスは勇猛なる恋する騎士たちの指針、明星、 太陽であって、恋と騎士道の旗印のもとに戦うわれらは、 すべからくそのすべてを真似るべきである。 そう言う次第であるから、友達のサンチョ、アマディスを もっともよく真似る遍歴の騎士こそが騎士道の完成にもっとも 近くにいるとわしは考えるのだ。この騎士が分別、勇気、度量、 忍耐、ゆるぎなき愛を端的に見せたのは、オリアナ姫に疎まれて ペニャ・ポブレに身をもって苦行に身を投じたときだった。」 (セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ』第25章より)
『ドン・キホーテ』の原点…「ドン・キホーテ・デ・ ラ・マンチャ」の頭を狂わせたスペイン最古の騎士道物語。 ガウラ(フランス)王とスコットランド王女との間に 生まれた不義の子「アマディス(アマデウス)」についての 物語「アーサー王伝説」につらなる、全ヨーロッパを舞台に したアマディスとオリアナ姫との禁断の恋と 各国との死闘を描く奇想天外な伝説の書、大長編、前半! 本邦初訳! 「ドン・キホーテはまだ眠っていた。…ニコラス親方がまず 手渡したのは『アマディス・デ・ガウラ 全四巻』であった。 司祭が言った。 「はて面妖な。聞くところによると、この書物こそが スペインで印刷された最初の騎士道本であって、ほかのものは これを手本とも模範とも仰いでいるそうな。 邪悪なる教義を説く一派の祖師であれば、迷うところなく火刑じゃ。」 「いやいや」と親方が言った。 「この分野の書物で最良の出来だとも聞いておりますよ。 最高傑作として許されるべきですな。」 (セルバンテス『新訳 ドン・キホーテ』第6章より)
贋作と本物とが交錯するパロディとしての騎士道物語! サラゴサからバルセロナへと偽者が本物のドン・キホーテの旅程を変えてしまう破天荒な旅。 「貧乏郷士アロンソ・キハーノすなわちドン・キホーテは、心根の極めて優しい温厚な性質の人物であって、彼を憎む者は誰もいない。言葉の端々にその人柄が窺え、作品の全体からそれがにじみ出している。狂った騎士の冒険を読み終えて、ドン・キホーテにほのかなりとも親しみと労(いたわ)りを感じていただければ幸いである。」(「『ドン・キホーテ』の背景とセルバンテス」)
みんなの愛情を一身に受けて育っていた末っ子の主人公キコに妹が出来た。すると以前のようにはかまってもらえなくなった。おりしもキコが釘を飲み込んだと勘違いしたママの早とちりから大騒動がもちあがる。キコの一日を時間に添って追いながら……。スペイン・モロッコ戦争を背景に、子どもと大人の眼を通して複雑な家庭問題と夫婦間の微妙な関係を描く、楽しくも悲しみに満ちた物語。スペイン文学のベストセラーの初訳!
ノーベル文学賞の受賞に限りなく近いといわれたスペインの国民的作家ミゲル・デリーベスの「ナダル賞」受賞の長編! ミゲル・デリーベスは2010年3月12日、故郷バリャドリッドで亡くなった。スペイン国民はその死を悼み喪に服した。 本書は、デリーベスのデビュー作で、スペインの芥川賞とも言うべき「ナダル賞」受賞作品であり、デリーベスの生涯のテーマである「幼年時代への回想と死へのこだわり」が糸杉の影に託して色濃く投影された作品である。 第1部では孤児で育った主人公ペドロが同じく孤児の境遇にある12歳の親友を肺結核で失い、幼くしてすでに人生に深い虚無感を抱く過程が描かれる。 第2部では、少しでも俗世間を離れるべく船乗りの職業を選ぶのだが、ふとした機会に最愛の女性に巡り会う。人生を厭い、すべてに懐疑的なこれまでの生活を捨てて彼女の手を取り、希望の未来へ向けて歩み始めたばかりのところで身重の妻を交通事故であっけなく失ってしまった。ここに親友の死と最愛の妻の死とがひとつに重なって主人公を悲嘆のどん底へ突き落とすのだが、やがてそこから瞳をあげて明るい将来へ踏み出すまでの姿を描いている。
スペインで130万部を越すロングセラー。カスティーリャ地方を舞台に、妻と死別し、友人も次々と先立ち、自慢の息子も都会へ出て行った定年退職後のエロイ老人の孤独感を、お手伝いの田舎娘デシーとの日常生活を通じて描く。