著者 : 岩瀬徳子
ニューヨークの名門出版社ワーグナー・ブックスで、編集アシスタントとして働く26歳の黒人女性ネラ。いつかは名作を送り出したいと夢見ているが、昇進は遠く、恵まれた白人ばかりの同僚の無神経さに苛立つ日々だったー隣の席に、職場で二人目の黒人女性、新人のヘイゼルがやってくるまでは。黒人女性としての自信と問題意識を持つヘイゼルとなら、手を取り合って出版界に蔓延する差別や偏見と闘っていけそうだった。しかし喜びもつかの間、トラブルが起きてネラの評価は下がる一方、うまく立ち回ったヘイゼルは上層部に目をかけられるようになる。落ち込むネラに追い打ちをかけたのは、「ワーグナーを去れ」と告げる手紙だった。誰が書いたのか?畏怖される編集長か、怒らせてしまった作家か、不満げな上司か。それとも、得体が知れないヘイゼルか?皮肉と風刺に満ちた、お仕事小説にしてスリラー。
フィリクスは何かを隠しているようだ。“わたし”は浮気を疑い、彼の携帯電話を覗き見てしまう。そこには、SNSで悪名高い陰謀論者がいた。荒唐無稽で差別的な言葉をばらまく男…これが愛した人の本当の姿なのか?“わたし”が本心を確かめようとした直前、彼が事故死したという報せが届く。謎を抱え、“わたし”は出会いの地を訪れる。さらなる衝撃の事実が待っているとは知らずにー。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストはじめ、米国の有力メディアが激賞するスリルに満ちた文芸作品。
エミラは25歳のアフリカ系アメリカ人。大学卒業後、定職に就かずにベビーシッターをしているが、そろそろきちんと健康保険に入れる職に就きたい。ある日、ベビーシッター先の白人の子どもを連れて高級スーパーを歩いていると、誘拐の疑いをかけられてしまう。雇い主の白人女性は正式に抗議すべきだと焚きつけてくるが、エミラは今一つ気が進まない。一見リベラルだが、無意識な差別感情に溢れる白人に圧倒されっぱなしのエミラが選ぶ生き方はー。女優リース・ウィザースプーンのブッククラブに選書され、英米で話題沸騰。70万部突破のブッカー賞候補作。
夫を事故で亡くして以来、不眠に苛まれているイーデンは、星空の保護区として有名なダークスカイ・パークを結婚記念日直前に訪れる。生前の夫が予約していたのだ。だがゲストハウスで別のグループと同宿を余儀なくされることに。彼らはマロイという魅力的な男性を中心とした同窓の面々だった。その夜、何者かに彼が殺され、疑心暗鬼に陥る宿泊者たち。そしてイーデンは思いがけないことを指摘される…ジェフリー・ディーヴァー絶賛の、誰一人として信じられないフーダニット。アンソニー賞受賞作
ピップ・タイラーは23歳。高額の奨学金ローンを抱え、自宅はアナーキストたちとのシェアハウス。仕事は歩合制の電話営業。ただひとりの身内である母親は、どうも偽名を使っているらしく、さらに父親が誰なのか教えてくれない。父親についてわかるのではないかーそんな希望をもって、ピップは南米に本拠地を置く情報公開組織“サンライト・プロジェクト”に参加し、謎めいたリーダー、アンドレアス・ヴォルフを知る。ヴォルフは彼女にある秘密を打ち明けるのだが…秘密と嘘、理想主義、正義と不正、愛情、憎悪、そして殺人ー壮大なスケールで織りなされる現代版『大いなる遺産』。
アイリーンは平凡で物静かな女に見えた。だが、内には激しい感情を抱え、自分だけのルールに従って生きていた。酒浸りの父親を憎み、自分の女らしさも嫌悪した。ろくに食事をせず、母親が遺したサイズの合わない服を着た。シャワーは浴びず、体の汚れはできるかぎり我慢するのを好んだ。彼女が「監獄」と呼ぶ少年矯正施設で働くときは、ひとりで、同僚や少年たちの妄想を膨らませていた。単調につづく彼女の人生に転機は突然やってくる。魅力的な女性レベッカとともに、取り返しのつかないかたちでー強烈なまでに暗く屈折しつつ、たくましくもある等身大の女性を描き出すアメリカの新鋭のデビュー長篇。PEN/ヘミングウェイ賞受賞、ブッカー賞最終候補。