著者 : 岸田るり子
見合いで結婚した夫には好きな人がいた。十年も前から、今も続いている。その事実を知っても、平凡な主婦の華美には、別れて自力で生きていくことが出来ない。そんな彼女の癒やしは、絵を描くことだけだった。ある日、自分のデジカメに撮った覚えのない少年と、彼が書いたと思われる詩が写っているのを見つける。その少年にひかれ、恋をした時、運命は、とんでもない方向へ動き始めた…。
絵を描くことが好きな少女さくらは、ある日、月光に照らされて池に浮かぶ美しい女性の姿を描く。その胸にはナイフが突き刺さっていた。大人になった彼女は、祖母に聞かされた話に愕然とする。絵を描いた二十年前、女優だった叔母のゆう子が、京都の広沢の池で刺殺されたというのだ。あの絵は空想ではなく、実際に起きた事件だったのか?さくらは、叔母の死の謎を探ろうとするが…。
東京で暮らす月光のもとへ、故郷の京都に残した双子の妹・冬花が殺人罪で逮捕されたという連絡が入った。被害者は冬花の高校時代の同級生・川井喜代。妹がなぜあの女を?二十年前、冬花を弄んだ喜代が許せず二人を引き離したはずだったのに。帰省した月光は、冬花に思いを寄せる男・杉田とともに真相解明に乗り出す。だが、浮かび上がるのは成功者となった喜代の疑惑と悪行、そして孤独な人々を引きずり込む黒い罠だったー。
色覚障害者のサイト“ランボー・クラブ”。仲間を探す中学生の菊巳が偶然見つけたそのサイトに掲げられた、ランボーの詩。なぜか解読できた原語の詩を読んだ時、彼にあるはずのない、鮮やかな血の色を見た記憶が蘇った。そして後日、何者かによってその詩が書き換えられ、詩になぞらえた死体が発見された!色覚障害の少年をめぐる事件の驚くべき真相とは?傑作本格ミステリ。
望川貴は幼稚園で出会った日仏混血の少女・万里枝プティに心を奪われ、二人は永遠の絆で結ばれていると確信する。小中高大学と同じ学校で過ごし、大学でも同じ文学サークルへ入会するが、そこで出会った大財閥の御曹司が万里枝に急接近する。貴は凡庸な容姿の自分とは違い、驚くほどの美貌を誇る異父兄・木村晴彦に、万里枝を誘惑するよう依頼する。貴の計画は成功するかに見えたがー。錯綜する愛憎。はたして真実の絆はどこに。
京都の医大に勤める秋沢宗一は、同僚の結婚披露宴で偶然、十三年前の恋人・亜木帆一二三に出会う。不思議なことに彼女は、未だ二十代の若さと美貌を持つ別人となっていた。昔の激しい恋情が甦った秋沢は、女の周辺を探るうち驚くべき事実を掴む。彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ…。気鋭が放つ、サスペンス・ミステリー。
絵が好きな少女・さくらには、不思議な力があった。空想で描いたはずの場所や物が、そのまま実在しているのだ。ある日、描いたのは、月光に照らされ、夜の池に浮かぶ美しい女性の姿。手には花束を抱え、胸にはナイフが突き刺さっていた。不吉なことと、母に絵を描くことを禁じられ、大人になったさくらは、祖母から叔母の話を聞いて愕然とする。女優だった叔母・ゆう子は、20年前、京都の広沢の池で刺殺されたというのだ。その死の様子は自分が昔描いたあの絵とそっくりである。さくらは、ゆう子が当時下宿していたペンションを捜し出し、部屋を借りて叔母の死の謎を探ろうとする。次第に明かされるゆう子の凄絶な人生。そして驚くべき死の真相とは…。
京都の医学部大学院に勤務する秋沢宗一は、研究室助手の結婚披露宴で、偶然ある女性を見かける。それは13年前、札幌時代に激しく愛しあった亜木帆一二三だった。不思議なことに、もう中年であるはずの一二三は20代の若さと美貌を持った別人となっていた。昔の燃えるような感情が甦り、どうしても彼女のことが忘れられない秋沢は、女の周辺を探るうち、驚くべき事実を掴む。彼女を愛した男たちが、次々と謎の死を遂げていたのだ…。第14回鮎川賞を受賞した気鋭が放つ、書下し長篇ミステリー。