著者 : 嶋田洋一
大雪に見舞われたニューヨーク州の街バッファロー。元私立探偵のジョー・クルツは三人組の男に命を狙われたが、返り討ちにした。やがて、彼らの雇い主が以前手助けをした男であることがわかった。ファリーノ・ファミリーの後継者であるその男リトル・スキャグはいま刑務所で服役中だが、姉のアンジェリーナを介して指令を下したようだった。彼女を脅してそれを確かめたクルツは、そこで意外なことを聞かされる。彼女がゴンザガ・ファミリーのドン、エミリオ・ゴンザガを殺したいと思っていること。そして、ゴンザガがクルツの恋人を殺させた当人だという衝撃の事実も。ファリーノ・ファミリーがゴンザガに乗っ取られようとしていることも、後で判明した。この時クルツは、一人のバイオリニストから、娘を殺した犯人を捕らえてくれという依頼を受けていた。だが、強力な権力を持つその犯人はクルツに追っ手を差し向けてくる。それをかわしながら、クルツはアンジェリーナを利用してゴンザガへの復讐計画を整えていくが…。鋼鉄のハートを持つ男ジョー・クルツと、一筋縄ではいかない者たちの熾烈な闘い。鬼才が『鋼』に続いて放つハード・アクション・シリーズ第2作。
「おれを殺したりはしないよな?」「だめか?」「やめてくれ。永久にムショ暮らしだぞ!」「おれはまだそれほど歳じゃない。何年か無駄にしたっていいさ」殺人罪で11年の刑務所暮らしを終えた元私立探偵のクルツは、すぐにファリーノ・ファミリーのドンの邸宅を訪れる。高齢のドンが負傷して以来、弱体化してしまったファミリーのトラブルを解決してやろうというのだ。1カ月前、ファミリーの内情を熟知している会計士が失踪した。時を同じくして、ファミリーの生命線である密輸事業に妨害が頻発する。荷物を運ぶトラックが次々とハイジャックされるのだ。対立組織の差し金か、FBIの介入か、あるいはファミリー内部の裏切りか。背に腹はかえられないのか、ドンはクルツのオファーを受け入れる。だが、調査に着手したクルツの背後に、早くも殺し屋の影が…。正義か?悪か?鋼鉄のハートと腕っぷしで街の暗部を叩き切る、非情の男ジョー・クルツ。SF&ホラーの鬼才が挑む、ハード・アクションの会心作。
クリスマス・イヴ-酷寒のモントリオールでなくとも張り込みには辛い日だ。エンジンを切った車の中で、エミール・センクマルス部長刑事は、若い相棒とともに、降り始めた雪を透かして街路に眼を凝らしていた。やがて、彼らが見張るアパートに奇妙な人影が入って行く。真っ赤な衣裳に白い髭、プレゼントの袋をかついだサンタクロースだ。いくら今日がクリスマス・イヴだといっても…サンタクロースの後を追いアパートの一室に踏み込んだセンクマルスは、そこで無残な光景に出くわした。クロゼットの中に、スチールのフックで吊り下げられたサンタクロースの死体だ。死体の顔を覗き込んだセンクマルスは、息を呑んだ。それは、彼に密かに情報を流していた、密告者の青年だったのだ。そのうえ青年の死体には、残酷な拷問の痕跡、さらにはセンクマルスへの挑戦状が!街ではバイク・ギャングの抗争に巻きこまれた子供が爆死する事件が起きていた。激化する一方の抗争には、ロシア・マフィアの影も落ち、不穏な空気が充満している。そんななかをサンタクロース殺人を追って奔走するセンクマルスだが、事件の背後には信じがたいほど巨大な謀略が潜んでいた-カナダ文壇の大物作家が匿名で放つ、傑作大型警察小説。
大天変と呼ばれる気候の大変動により極地の氷が融け、結果、水没地域のアジア・アフリカからの大量の移民が溢れ返ることになったロンドン。街全体が異国情緒に満ち、ロンドンの裏世界はさまざまな人種によって構成され、毎日騒然とした雰囲気に包まれている。しかも、「ドール」と呼ばれる人工的に合成された肉体に電子チップを埋めこんだ一種のロボットの人権を主張するグループが爆弾テロを繰り返していた。逮捕歴のある遺伝子ハッカーのアレックスは、戦闘用に改造したドールを闘わせる闘技場建設を試みるギャングと、そのギャングに私憤を抱く刑事の間に立っていたが、やがていやおうもなく争いに巻き込まれていった。そして、争いの渦中、現れた謎の美少女ミレーナはアレックスに手伝わせて盗んできたドールのチップを入れ替え、知性を持った「フェアリイ」を造りあげ、フェアリイとともに姿を消してしまった。アレックスはミレーナの後を追ったが…。アーサー・C・クラーク賞/ジョン・W・キャンベル記念賞を受賞した、イギリスSF界最高の有望作家が描く、ナノテクSFの傑作。
わたしはなんとしても作家になりたい!創作意欲に燃える家事ロボット-キャル-が、様々な機能を付け足し、執筆内容もしだいに上達して、やがては主人の作家を凌駕する作品を書き上げたとき…作家志望のロボットの奮闘を、ブラックな笑いにつつんで見事に描きあげたロボット・シリーズの名作「キャル」。「リア王」のコンピュ・ドラマ化に成功し世界的な名声を得た演出家ウイラードのところに、ひとりの作家が訪れた。自分の作品をコンピュ・ドラマ化してほしいという。しかもひきかえに、十万グロボ・ドル相当のゴールド-黄金を支払おうというのだ!映像化を拒否するような内容の原作を、コンピュータを使っていかに立体映像化するか…息詰まるコンピュ・ドラマ作成現場を描きヒューゴー賞を受賞した「ゴールド-黄金-」。そのほか、作家志望の若者たちにSF小説作法を伝授する「SF作家になるためのヒント」、著者みずからがロボット・シリーズについて解説する「ロボット年代記」など、愉快でためになるエッセーの数々をあわせて収録した、アシモフ最後のヴァラエティ溢れるSF作品集。
永遠の生命を持つ美しき魔女クンドリーは、世界制覇の野望を抱く魔法使いクリンゾールに仕えていた。今度の使命は、聖杯の守護者アムフォルタス王を篭絡し魔力の源である聖杯を手に入れることだった。だが、あろうことかクンドリーはアムフォルタスを愛してしまった。愛を貫くためにクリンゾールに逆らおうとするクンドリーを待ち受けていた運命は。ワーグナーのオペラ『パルジファル』に材を取った歴史ファンタジイ。
本書は、ドラキュラ伯爵とその眷族の物語である。ベラ・ルゴシ主演の『魔人ドラキュラ』から60年経った現在まで、クリスト・ファー・リイ主演の作品など無数のドラキュラ映画が製作され、巨匠フランシス・コッポラ監督も新たに大作映画化に挑戦した。本書はそういったストーカーの子供たちの活躍を、SF、ミステリー、ホラーなどの分野の俊英たちが描いたホラー・アンソロジーの決定版である。
21世紀もなかばを過ぎ、地球は人口爆発や環境破壊で、他の惑星への植民を迫られていた。しかし、〈ひも〉という超空間通路をもちいた惑星探査には、多大なリスクがあった。不安定な〈ひも〉がいつ消滅するかわからず、しかも居住可能惑星はいまだに発見できていない。けれども青年セドリックは、この冒険に魅せられていた。やがて彼は、惑星探査を独占している組織“機構”から招きを受けたのだが…。大型娯楽SF開幕。
驚くべきニュースが“機構”に飛びこんできた。第三級惑星ナイルの探査チームが石斧で殺されたのだ。この惑星には知的生物がいるのか?ついにファーストコンタクトの時がやってきたのか?セドリックは、“天命”を察知する超能力をもつアライア王女とともに〈ひも〉を通って宇宙へ旅立ったが、その裏では、世界権力をめぐる権謀術数が渦巻いていた…。人気作家ダンカンが満を持して放つエンターテイメントSF快作。
本書はホラー、ミステリー、SFなどの分野で活躍中のベテラン作家が吸血鬼ドラキュラをテーマに競作し、監修の菊地秀行による書き下ろしエッセイも加えた、ホラー・アンソロジーの決定版である。
惑星トリプレットの古代遺跡にある不思議な〈トンネル〉-それは、科学が異常に発達したシャムシール、呪文で精霊を呼びだせるカリックスのふたつの異世界に通じている。〈二十世界〉を統治する星間政府は管理局を設立し、トリプレットへの無断立入りを禁止してきた。だが、惑星オータリスのはねっかえり女子大生ダナエは、大金持ちの父親のコネでトリプレット調査の資格を手に入れた。経験豊富な案内人ラヴァジンを雇い、勇躍、ダナエは異世界へとおもむく…。
惑星トリプレットの〈トンネル〉が通じている異世界シャムシールとカリックスは封建主義的な価値観が支配する世界。地元の慣習にうといダナエは、ラヴァジンの制止も振りきり、トラブルばかり巻き起こす。しかし、そんなダナエが、偶然目撃してしまったのは、二つの世界どころか自分の世界にまで影響するほどの恐るべき陰謀だった…。冒険SFの名手ザーンが、元気いっぱいの女子大生をヒロインに、SFとファンタジイの両方の面白さを詰めこんで描く一大冒険譚。
オカルト集団アラクネーの、〈目醒めの時〉が近づいていた。ついにダン・ブレイディはアラクネーの本拠地へと足を踏み入れる。町の名はハースト・アンダー。ここが彼の1年におよぶ闘いの最後の場所となるはずだ・・・。アラクネーに連れ去られたダンの2人の子供は無事奪還なるか?アラクネーが造営を進めてきた〈迷宮〉とは?そして,目醒める者は誰?オカルト知識を縦横無尽に駆使して描いたアクション・シリーズ,堂々完結。
日々夢想にふけり、ミリタリーごっこに興じる子供たち。そんなある日、リーダー格のティップが何者かに殺された。子供たちは自らの手で仲間の仇を討たんと、まだ見ぬ敵を求め、死亡現場の探検にでかける。だが、そこでもまた一人…。ただならぬ危険を感じたフリンとピッパの兄妹は、身を守るべく、家に代々伝わる呪文の書を持ち出すが…。一方ダン・ブレイディは、エレンの霊から謎の警告を受けていたー月が昇る、危ない、と。
ジェフ・コクレインは10歳になる一人娘を連れ、ゴーストハンティングを職業として生計を立ててきた。怪奇現象が頻発するピットハーストの農場に招かれた彼は、調査を進めるうち、人知れず穿たれた謎の坑道を発見する。開けてはならぬ暗黒の神殿に足を踏み入れた彼らを襲う、アラクネーの恐怖ーやがて彼はダン・ブレイディと合流し、この神殿攻略に乗り出すが…。だがその頃、ジェフの娘にもアラクネーの魔手が及ぼうとしていた。
「西から“危険”がやってくる」エレンの霊が、ダン・ブレイディに告げた。だがそれは一体、どんな“危険”だというのだろう?一方、彼のもとに送り込まれた愛娘の心霊像を手掛かりに、ダンはペニン山脈の麓の町、キャステリグへ赴く。そこで彼を待ちうけていたのは、奇妙な少女と老人だった。アラクネーの被害者だという彼らから告げられた、響くべき計画とは?…血と殺戮を求める悪霊たちの響宴が、いま始まろうとしている。
イングランド地方の、悲劇と呪いの歴史に彩られた寒村ノーフォーク。形容しがたい力に導かれ、この地を再訪するさまざまな男女。おりしも、そこでは考古学者たちの古代ノルド人の遺跡調査が進められていた。やがて男たちの失踪を発端に、この町を惨劇が襲いはじめた。謎の力が秘められた古き護符をめぐって、ダン・ブレイディと“アラクネー”の死闘が幕を上げるー。本格アクション・ホラー、〈ナイトハンター〉シリーズ第2弾。
クリスマスを目前に控えた夜、ダン・ブレイディの家庭を超常現象が襲った。妻と二人の子供はいずこへか連れ去られ、ダン一人が瀕死の状態で取り残される。奴らは何者か。そして、なぜ?その日を境に、彼の周囲を次次と奇怪な現象が襲いはじめた…。彼の人生は変わった。闇に蠢く邪教集団を相手に、ただ一人、身を挺して戦いを挑む男ーナイトハンター。世界幻想文学大賞受賞作家がいまひとつの名で描くサイキック・ホラー第1弾。