著者 : 川村湊
昭和五年、「文学時代」懸賞小説に当選し文壇にデビュー。繊細な筆致で庶民生活の心理の葛藤を情感豊かに描き、「神楽坂」は芥川賞候補作となる。表題作のほか生地秋田を題材にした「凍雲」、「父」「旅役者の妻より」「女心拾遺」「〓(く)女抄録」「鴻ノ巣女房」を収録。胸を病み三十七歳で逝去、坂口安吾によって伝説化された薄命の女性作家矢田津世子の代表的短篇小説八篇。
口承文芸の精華・ユーカラを生み出したアイヌ民族は、近代以降、文化や言葉を抑圧され、長く沈黙を強いられた。そんな中から、神謡の日本語訳に若い命を燃やした知里幸恵、短歌にアイヌの苦悩と誇りを籠めたバチェラー八重子や違星北斗、民族と自己のアイデンティティを追求した鳩沢佐美夫、アイヌ語の弔詞に民族の世界観を凝縮した萱野茂などが現れた。現代アイヌ文学を代表する九人の作品を精選する画期的なアンソロジー。
夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の1年間。寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という新しい創作上の方法を精妙に駆使し、第1回野間文芸新人賞を受賞した津島佑子の初期代表作。 光の領分 水辺 木の日曜日 鳥の夢 声 呪文 砂丘 赤い光 体 地表 焔 光素
処女作「風宴」の、青春の無為と高貴さの並存する風景。出世作「桜島」の、極限状況下の青春の精緻な心象風景。そして秀作「日の果て」。「桜島」「日の果て」と照応する毎日出版文化賞受賞の「幻化」。不気味で純粋な“生”の旋律を伝える作家・梅崎春生の、戦後日本の文学を代表する作品群。 ●風宴 ●桜島 ●日の果て ●幻化
なぜ、それが“物語・歴史”だったのだろうかーー。おのれの胸にある磊塊を、全き孤独の奥底で果然と破砕し、みずからがみずから火をおこし、みずからの光を掲げる。人生的・文学的苦闘の中から、凛然として屹立する“大いなる野性”坂口安吾の“物語・歴史小説世界”。 ●桜の森の満開の下 ●梟雄 ●花咲ける石
“余は偉大なる落伍者となって歴史のなかによみがえる”雪の国新潟の教室の机に彫って上京し、あえて、孤独な自己鍛練の世界に彷徨する、“精神の巨人”坂口安吾の繊細にして豪放、聖にして俗の、ダイナミックな自伝世界。 ●女占師の前にて ●おみな ●孤独閑談 他