著者 : 市田泉
どこかの記憶はあなたの記憶 彼女が噓のつもりで適当に言った不気味なローカル番組は実在し、しかも彼女自身も出演していた(「二つの真実と一つの嘘」)。飛び込んだ人間がたまに消える池で行方不明になった兄の思い出(「センチュリーはそのままにしておいた」)。バラッドの謎を解き明かそうとするネットユーザーたちは、その歌に秘められた恐ろしい意味に気づきはじめる(「オークの心臓集まるところ」)。6人のガールスカウトたちのわたしたちがキャンプで体験したこと(「科学的事実!」)。 迷っても、しっかりと着実に、奇想と現実の狭間を歩む。もっとも新しく、もっとも懐かしい、記憶を揺さぶる奇想短篇集。
翻訳家・柴田元幸氏推薦 「理系の緻密な思考力と、文系のしなやかな想像力の奇跡のような共存。」 時に切なく、時におかしく、そして 時にはちょっぴり怖い幽霊たちの物語を100編収めた いつか幽霊になるあなたのためのふしぎな短編集 失恋した瞬間を永遠に繰り返す幽霊、雨となって降り注ぐ幽霊、方向音痴の幽霊、瞬間転送装置が生み出す幽霊……イタロ・カルヴィーノ短編賞受賞作家が贈る、時に切なく、時におかしく、そして時にはちょっと怖い幽霊たちの物語を100編収めた不思議な短編集。
姉さんはブラックホール、 姉さんは倒れてくる木、 姉さんは海。 彼女がいなかったら、わたしは一人の人間ではない。 マン・ブッカー賞史上最年少候補となり、 シャーリイ・ジャクスンとスティーヴン・キングの 申し子と称賛された新鋭による、 一篇の詩のように忘れがたい物語 絵本作家の母に育てられた、9月生まれのセプテンバーと、翌年7月生まれのジュライ。内気で意志の弱いジュライは、貪欲で残忍な姉の支配下に置かれているが、二人の絆は他の誰も必要としないほど強いものだった。彼女たちは春先に学校で起きたある事件をきっかけに、オックスフォードから亡父が生まれ育った〈セトルハウス〉へと引っ越してきたが、それを機にジュライの中には奇妙な違和感が芽生える……最年少でブッカー賞候補となった俊英による、一編の詩のように忘れがたい物語。
大学院生ザカリーが図書館で出会った、著者名の記されていない本。そこには誰も知るはずのない、彼の少年時代の不思議な体験が記されていた。本の秘密を追う彼は、謎の男に導かれて魔法の扉をくぐり、どことも知れない地下に広がる“星のない海”の岸辺にある、物語で満ちた迷宮にたどりつく…めくるめく物語の魅力を巡る傑作本格ファンタジー。ドラゴン賞ファンタジー長編部門受賞作。
常に太陽に同じ面を向ける植民惑星の、永遠の昼と夜に挟まれた黄昏地帯で、ゆるやかに衰退してゆく人類。ソフィーは愛する対象であり革命を志すビアンカをかばって町を追放されるが、永遠の夜の中で異質な知的生命体と出会い、人類がこの過酷な惑星で生き延びるための重大な秘密に迫ってゆく…。ネビュラ賞・ローカス賞受賞『空のあらゆる鳥を』の新鋭作家が放つ、ローカス賞SF長編部門受賞・ヒューゴー賞候補作。
余命わずかな元スミソニアン博物館学芸員のため、幻の飛行機械の動画を再現しようとする友人たちが遭遇した奇跡、演劇一族に生まれた6人姉妹の末妹と6人兄弟の末弟が屋敷の屋根裏で出会う不思議……ネビュラ賞や世界幻想文学大賞を受賞した作品ばかり4編を収めた、不世出の天才作家による珠玉の抒情SF選集。
両親の死を契機に、父親の謎めいた過去を調べ始めたメアリ・ジキル嬢。父の旧友ハイド氏とは何者なのか? ホームズとワトソンの助けを借りて調査するうち、彼女は科学者が狂気の研究の末に生み出した娘たちと出会い!? 19世紀ロンドンで展開するSFミステリ
魔法使いの少女パトリシアと天才科学少年ローレンス。特別な才能を持つがゆえに周囲に疎まれるもの同士として友情を育んだ二人は、やがて地球と人類の行く末を左右する運命にあった。しかし未来を予知した暗殺者に狙われた二人は引き裂かれ、別々の道を歩むことに。そして成長した二人は、人類滅亡の危機を前にして、魔術師と科学者という対立する二つの秘密組織の一員として再会を果たす…。ネビュラ賞・ローカス賞・クロフォード賞受賞の傑作SFファンタジイ。
揚州虐殺のなかを生きた遊女を描いた表題作、満州で巨大熊を捕獲しようとした探検隊が出会った悪夢「烏蘇里羆(ウスリーひぐま)」など全7篇を収録
近未来アメリカ、すべての女性は一日100語以上喋ることを禁じられた。その中で怒りを抱えながら夫と子供たちと暮らす認知言語学者のジーンの生活に、ある日転機が訪れる。声を、愛を、創造を奪われた女たちを描く、いまこの時代に読むべきディストピア物語。
帝国オロンドリアを二分した、書物と言葉を巡る大乱。その只中を生きた四人の女性たちー戦いにその身を投じた剣の乙女、彼女を愛した遊牧民の歌い手、反乱軍に囚われた女司祭、政略結婚の駒として翻弄された王家の娘は、正史からは葬られた物語を自らの声で語り始める。響き合う物語からやがて立ち上がるのは、彼女たちにとっての“歴史”-デビュー作にして世界幻想文学大賞など四冠の長編『図書館島』の世界に連なる、壮大にして精緻なる傑作ファンタジイ。
文字を持たぬ辺境の島に生まれ、異国の師の導きで書物に耽溺して育った青年は、長じて憧れの帝都に旅立つ。だが航海中、不治の病の娘と出会ったがために、彼の運命は一変する。世界じゅうの書物を収めた王立図書館のある島で幽閉された彼は、書き記された“文字”を奉じる人々と語り伝える“声”を信じる人々の戦いに巻き込まれてゆく…。デビュー長篇にして世界幻想文学大賞・英国幻想文学大賞など四冠制覇、書物と物語をめぐる傑作本格ファンタジイ。
「モリーに宇宙服が出はじめたのは春だった。」--皮膚が宇宙服になって飛んでいってしまう人々、恋人に贈られた手編みセーターの中で迷子になる男、誰もが常に金魚鉢を抱えていなければいけない星でのバカンス、自分の寝言を録音しようとした男が味わう恐怖……とびきり奇妙で切ない、奇想に満ちた短編集。岸本佐知子訳し下ろしの短編一編を追加し、待望の文庫化。2001年度フィリップ・K・ディック賞候補作。
不治の病を宣告された母が愛する娘のために選び取った行動をつづる表題作、明治時代の満州にやってきた熊狩り探検隊一行の思いがけない運命を描いた「烏蘇里羆(ウスリーひぐま)」など、あたたかな幻想と鋭い知性の交錯を透徹した眼差しで描いた16篇を収録した、待望の第二短篇集。 〈収録作品〉烏蘇里羆/草を結びて環を銜えん/重荷は常に汝とともに/母の記憶に/存在/シミュラクラ/レギュラー/ループのなかで/状態変化/パーフェクト・マッチ/カサンドラ/残されし者/上級読者のための比較認知科学絵本/訴訟師と猿の王/万味調和/
豚の頭をかぶる男、病気の患者を演じる女……。英国SF界のトップランナー、チャイナ・ミエヴィルが、人間のもつシュールで残酷な面を鋭く描き出し心に爪痕をのこす28の物語を収録した短篇集。
本好きの女の子チャーメインは、魔法使いの家の留守番を頼まれた。家の扉は王宮や過去の世界など、さまざまなところに通じているらしい。魔法の本をのぞいたせいで恐ろしい魔物に出会ってしまったり、魔法使いの弟子を名乗る少年がころがりこんできたり…。やがてチャーメインは、王宮で進行している陰謀を食いとめるため、遠国の魔女ソフィーと協力することに…? ソフィーの夫ハウルも、意外な姿で登場!「ハウルの動く城」シリーズ第三弾・完結編。
パラディスは狂える者の都。あるいは、パラディスそのものが狂っているのか。汚染された街パラダイスに住む双子の兄妹。恋人殺しの疑いをかけられたパラディの女画家。役者に焦がれその身を投げ出したあげくに捨てられたパラディスの若い娘。異なる時、異なる世界のパラディス。だが狂気に搦めとられた彼らの運命は歪み、交わってゆく。闇の女王タニス・リーの幻惑に満ちた物語。
パラディスは生者の、半生者の、蘇生者の、死なざる者の都であると同時に、死者の都でもあるのです。婚礼の新床で花嫁が夫の手で殺された。夫が死ぬまで隠し通したその理由とは。(「鼬の花嫁」)周囲の人間が次々と衰弱し死に至るという、不吉な噂が囁かれる女性の正体は。(「美しき淑女」)退廃と背徳の都パラディスに眠る死者の物語8編を収録。闇の女王タニス・リーの傑作短編集。