著者 : 恒川光太郎
気が付くと殺風景な部屋にいた高校二年生の鐘松孝平。彼は横須賀にむかってバイクを飛ばしている最中に、トラックに幅寄せされ……その後の記憶はなかった。建物の外には他にも多くの人々がおり、それぞれ別の時代と場所から、「死者の町」と名付けられたこの地にたどり着いたという。彼らは探検隊を結成し、町の外に足を踏み出す。一方、片思いの相手を亡くし自暴自棄になった大学生の佐伯逸輝は、藤沢市の砂浜を歩いていたところ奇妙な男に勧められクジを引くとーーいつのまにか見知らぬ地に立ち、“10の願い"を叶えることができるスターボードという板を手渡された。佐伯は己の理想の世界を思い描き、異世界を駆け巡ってゆく……。興奮と感動をよぶ、渾身のファンタジー長編!
路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた斉藤夕月(34歳・無職)。そこで10の願いが叶えられる 「スタープレイヤー」に選ばれ、使途を考えるうち、夕月は自らの暗い欲望や、人の抱える祈りの深さや業を目の当たりにする。 折しも、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく。 光と闇、生と死、善と悪、美と醜ーー無敵の力を手に、比類なき冒険が幕を開ける! 鬼才・恒川光太郎がRPG的興奮と神話世界を融合させ、異世界ファンタジーの地図を塗り替える、未曾有の創世記!
いっけん「怪談」よりも「伝奇小説」「時代小説」「ミステリー」のイメージが強烈な山田風太郎。だがその名も『怪談部屋』『二十世紀怪談』をはじめとする初期の奇想小説のみならず、その根幹には常に「怪異なるもの」に対する偏愛が、如実に窺われる。〈忍法帖〉シリーズの忍者たちが繰りだす超絶忍法の数々に脈打つ怪奇幻妖趣味しかり。有名な三遊亭圓朝の怪談復権アジテーション(『真景累ヶ淵』冒頭)から物語が語りだされるゴースト伝奇ストーリー『幻燈辻馬車』しかり。あるいは、死神さながら膨大な「死」の瞬間を凝視した特異なノンフィクション『人間臨終図巻』またしかり。その奔放多彩な文業はまさしく「二十世紀の怪談」を志向していたとも云えるのではないだろうか。今回の特集では、怪談専門誌としての独自のスタンスから、今も多くの作家たちの畏敬をあつめる現代エンターテインメントの巨人「山風(ヤマフウ)」の一面に、斬新なアプローチを試みる。巻頭では水木しげる氏が漫画化し、さらに京極夏彦氏が彩色を施した「大いなる幻術」をカラー12Pで掲載!貴重なインタビュー再録や、筒井康隆氏、貴志祐介氏が語る風太郎作品の魅力、菊地秀行氏、仁木英之氏、花房観音氏による短編競作など計約60P。
貌のない神は、喰うーー。赤い橋の向こう、世界から見捨てられたような禁断の地にさまよいこんだ私。 かの地の中心には、顔のない神が坐して、輝きを放っていた。万物を癒やす力を持つその神には、代々受け継がれている秘伝の奥義があった。そのことを知った私がとった行動とは?(「無貌の神」)デビュー作『夜市』を彷彿とさせる表題作ほか、生きることにつきまとうやるせなさをあぶりだしながら、時代も国籍もジャンルも縦横無尽に飛びこえ、自由闊達、神話的な語りの境地をみせる傑作ブラックファンタジー全6作! 無貌の神 青天狗の乱 死神と旅する女 十二月の悪魔 廃墟団地の風人 カイムルとラートリー
泉鏡花、岡本綺堂、江戸川乱歩ら怪異の文豪を深く魅了し、怪談実話の分野においても、『日本霊異記』の昔から稲川淳二の「生き人形」に至るまで、読む者の心胆を寒からしめる逸話を数多生み出してきた「人形/ヒトカタ」。 なぜ人は、みずからの似姿に、かくも惹かれてやまないのか。ときに苛烈に呪詛や祈願を込め、ときに諸共に舞い踊るのか──。 古今の怪談文芸において、変わることなく重要なモチーフとなってきた「人形/ヒトカタ」の恐怖と魅惑に、『幽』ではさまざまな角度から肉迫いたします。特集内では、山岸凉子氏のインタビューをはじめ、グラビアでは中川多里の人形写真と皆川博子の書き下ろし掌編による豪華コラボ企画や、人形作家の百鬼ゆめひな氏のインタビューも掲載。 他、有栖川有栖、山白朝子、恒川光太郎、福澤徹三、安曇潤平、諸星大二郎、高橋葉介、柴門ふみ、押切蓮介など、小説、実話、漫画人気連載、インタビュー多数。
世にありとある怪談は、文芸作品であれ映像作品であれ、「事実」と「虚構」を両端に据えた、面妖なるグラデーションのいずれかに位置づけられるはずだ。 その領域を、事実と虚構のボーダーランドと呼ぶことも可能だろう。近年、主に映像分野で注目を集めてきた「フェイク・ドキュメンタリー」もしくは「モキュメンタリー」は、そうした怪談本来の特性をいわば逆手にとることで、日常を切り裂き、現実を震撼させようとしてやまない、いかがわしくも魅力的なジャンルである。おりしも、それら映像作家の営為に挑発されるかのごとく、小野不由美の『残穢』を筆頭に、『幽』で連載中の京極夏彦『虚談』や辻村深月の最新刊『きのうの影踏み』など、虚実皮膜のあわいに果敢に踏み込む文芸作品も相次いでいる。 怪談という表現の本質を、いま一度、見つめ直すために──『幽』次号は「リアルか、フェイクか」というテーマで、怪談表現の過去と現在を総展望いたします。 特集 ◆浅田次郎『神坐す山の物語』ほかをめぐって 浅田次郎氏インタビュー 東雅夫 御嶽山(みたけさん)イベントルポ ◆論考 近世/近代/現代 小二田誠二「フェイク・ドキュメンタリーのルーツとしての江戸実録本をめぐって」 千街晶之「『リング』から『残穢』に至る怪談実話史をめぐって」ほか ◆復刻 平山盧江 ◆特別寄稿 福澤徹三 ◆インタビュー 『残穢』『鬼談百景』監督:中村義洋 ◆座談 NHKドラマ『怪異TV』制作秘話 ◆エッセイ 道尾秀介/花房観音/長江俊和/黒史郎 ◆連載 綾辻行人、小野不由美、京極夏彦、有栖川有栖、初野晴、朱野帰子、高橋葉介、諸星大二郎、柴門ふみ、波津彬子、伊藤三巳華ほか ◆インタビュー 辻村深月『きのうの影踏み』、田中康弘『山怪』ほか
昨年、没後110年を迎えたラフカディオ・ハーン/小泉八雲。節目の年にふさわしく、生誕地レフカダ島(ギリシア)での記念イベント、八雲ゆかりの地・松江(島根県)や焼津(静岡県)で記念行事が開催される一方、新たなコンセプトによる邦訳や舞台公演の試みが相次ぎ、曾孫にあたる小泉凡氏による『怪談四代記』が刊行されるなど、再評価の機運が高まっています。ハーン/八雲の名著『Kwaidan(怪談)』が刊行されたのは、1904年。創刊号以来の特集です。『幽』編集顧問 東雅夫
鳴り響く胡弓の音色は死者を、ヨマブリを、呼び寄せるーー。願いを叶えてくれる魔物の隠れ家に忍び込む子供たち。人を殺めた男が遭遇した、無人島の洞窟に潜む謎の軟体動物。小さなパーラーで働く不気味な女たち。深夜に走るお化け電車と女の人生。集落の祭りの夜に現れる予言者。転生を繰り返す女が垣間見た数奇な琉球の歴史。美しい海と島々を擁する沖縄が、しだいに“異界”へと変容してゆく。7つの奇妙な短篇を収録。 『私はフーイー 沖縄怪談短篇集』を改題し文庫化。
鎌倉の山中に庵を結ぶ僧に、謎めいた旅の男が語り聞かせる驚くべき来歴ー数奇な運命により、日本人でありながら蒙古軍の間諜として博多に潜入した仁風。本隊の撤退により仲間とともに取り残されるが、やがて追われる身となった一行を、邪神「窮奇」に仕える巫女・鈴華が思いのままに操りはじめる。(第一話「異神千夜」)元寇に際して渡来した一匹の獣。姿形を変え、時に悠然とたたずみ、時に妖しく跳梁する。古より潜むものたちの咆哮を、瞠目の幻視力で紡ぐ、傑作ダークファンタジー四篇。
放課後。それは学生たちがいちばん自由でいられる時間。授業を終えた彼らの日常には、いろんな謎があふれてる。屋根の上を闊歩する少年、とびきりおいしいココアの淹れ方、廊下で忽然と消えた泥棒、部員獲得のための演劇勝負、名探偵と一緒にまわる学園祭。はやみねかおる、東川篤哉、米澤穂信、初野晴、恒川光太郎という人気作家5人が、彩りゆたかな学校のミステリーで競演。豪華執筆陣でおくる、傑作短編アンソロジー!
しんと静まった真夜中を旅する怪しい集団。降りしきる雪の中、その集団に加わったぼくは、過去と現在を取り換えることになったーー(「夜行(やぎょう)の冬」)。古く湿った漁村から大都市の片隅、古代の南の島へと予想外の展開を繰り広げながら飛翔する五つの物語。日常と幻想の境界を往還し続ける鬼才による最重要短編集。 (講談社文庫) 魔術のような、奇跡のような。 稀有な才能が描く、世界の彼方ーー 今、信じている全ては嘘っぱちなのかもしれない。 しんと静まった真夜中を旅する怪しい集団。降りしきる雪の中、その集団に加わったぼくは、過去と現在を取り換えることになったーー(「夜行(やぎょう)の冬」)。 古く湿った漁村から大都市の片隅、古代の南の島へと予想外の展開を繰り広げながら飛翔する五つの物語。日常と幻想の境界を往還し続ける鬼才による最重要短編集。 風を放つ 迷走のオルネラ 夜行の冬 鸚鵡幻想曲 ゴロンド 解説 大森望
島に一本しかない紫焔樹。森の奥の聖域に入ることを許されたユナは、かつて〈果樹の巫女〉と呼ばれた少女だった……呪術的な南洋の島の世界を、自由な語りで高らかに飛翔する、新たな神話的物語の誕生!
現世から隠れて存在する異世界・穏(おん)で暮らすみなしごの少年・賢也。穏には、春夏秋冬のほかにもうひとつ、雷季と呼ばれる季節があったーー。著者入魂の傑作長編ホラー・ファンタジー!
とびっきりの解放感で校門を飛び出す。この瞬間は嫌なこともすべて忘れて……読者と選んだ好評アンソロジーシリーズ。休日編には角田光代、恒川光太郎、万城目学、森絵都、米澤穂信の傑作短編を収録。