著者 : 戌井昭人
勝田繁太郎(26歳)は、働く意欲がなく、これといった趣味もなく、恋愛経験もゼロで、ただただ平穏にのんびり過ごす日常を愛する男。人に気を遣うことができず、仕事でミスをくり返してもまったく気にしないマスペースさゆえ、彼の周囲では珍事が尽きず、周囲からは疎まれている。だが、高名な陶芸家として知られる祖父だけは繁太郎の人間性に好感を持ち、彼の陶芸の才能を見出していた。陶芸への興味を引き出し、あとを継がせようと画策する祖父の思惑は果たされるのか。そして、繁太郎が成長する日は訪れるのだろうかー。破天荒な祖父との交流と、26歳にして訪れる初恋。笑って、笑って、少ししんみりして、心温まる。世のおかしみと愛すべき人々を、疾走感あふれる筆致でユーモラスに描く至極の長編大衆小説。
魔術団の女を探して、いざモロッコへ!!残されたゼンマイの小箱をたよりに、昔の恋人をたずねて、オトコ二人の珍道中。見つけたのは、ひとりの女か、それとも人生かー。野間文芸新人賞の新鋭による最新傑作小説。
浅草・酉の市でイカサマ賭博に巻き込まれた脚本家の「おれ」は、まるでサイコロの目に導かれるように、地方のさびれた温泉街に辿り着く。そこであてがわれたのは、ヌード劇場の司会業。三味線弾きのルリ婆さんと、その孫リッちゃんとの共同生活の末に訪れた、意外な結末とは。野間文芸新人賞受賞作家の話題作。
芥川賞5回落選!作家による、血まみれダメ男ブルース。ドタバタ、ワヤクチャ、ろくでなしー賢くなんか生きらんないけど、それでも俺は生きてやる。おかかえ運転手に、売れない舞台役者、同じく甲斐性なしのサックス奏者…しぶとく這い回る底辺男の、諧謔と哀歓と正義。
亀岡拓次37歳、独身。職業・脇役俳優。撮影がある場所なら、長野、山形、山梨、モロッコ…どこへでも出かける。楽しみは一人で酒を飲むこと。うらぶれた酒場で、二日酔いの撮影現場で、今日も亀岡は奇跡を起こす。読めば亀岡を好きにならずにいられない、川端康成賞作家が描く、とびきりキュートな小説集。
ひとたび足を踏み入れれば、もうそこから出られない。ここは魔境か?桃源郷か?亡き父の後を継ぎ、万病に効くお灸「天祐子霊草麻王」を行商する「わたし」は、父の残した顧客名簿を頼りに日本海側の村を訪れる。善良な老人達が暮らす素朴な山里かと思いきや、なにやらわけありの人たちもちらほら。やがて、帰りのバスに乗り遅れた「わたし」は、この村で一泊することになるのだが…。
変化を求めず、目の前のことをやり過ごしてきた田野と痛い目に遭いつづけながらあっけらかんとしたモモ。不忍池で出会ったふたりは上野から霞ヶ浦をめざす。どんづまりを描きもはや笑うしかないのか「すっぽん心中」。スイッチの入った男の狂騒「植木鉢」、屋上の狂人のバトルと本心「鳩居野郎」を併録。おかしさと哀愁は他の追随を許さぬ現代小説。