著者 : 新宮正春
表裏は兵法の根本なり。表裏とは謀なり。上泉信綱から新陰流の印可皆伝を受けた石舟斎宗厳に始まる柳生新陰流の系譜に現れた剣客たちの秘技、十兵衛三厳、左門友矩、兵庫助利厳、尾張の麒麟児兵助厳包などの剣技が冴えわたる。
時は天保・元禄の世、次々と起こる事件を前に、俳諧師・桃青こと松尾芭蕉の助けを借りて、同心・笹木仙十郎の推理が冴える。大老堀田正俊刺殺事件、赤穂浪士の討ち入りなど史実を舞台に、芭蕉の発句を一人ごちる、仙十郎の胸に去来するものは、人の世のあや、浮き沈み。
九州のさる城に囮のキリシタンが立てこもり、集まった10万余の幕府軍を巨艦が一気に叩き潰す。-ルソンの地で練られた壮大な幕府転覆計画に、豊臣の残党や、南方に取り残された侍たちが呼応する。幕府、細川藩、中国商人、イスパニア、オランダ、智恵と剣の限りを尽くし、島原の大乱が勃発した。
どんなにカードが揃っていても、エースは1枚しか存在しない。その“頂点”を目指して、因縁の二人と目されるライバルたちのパワフルでスリリングな戦いのドラマが展開される。心優しき男たちの生きざまと、幾多の名勝負、名場面を熱くさめた観察眼によって浮き彫りにする。-本書に収められたヒューマンな作品群には外からは窺い知れない“裸の選手”たちが息づいている。-プロ野球ノンフィクション・ノベル。
昭和60年、低迷を続ける王巨人軍に彗星のように現れた球世主2人ー投手・嘉手納宗七と代打・飯村勇司。それぞれ古琉拳と剣道の達人で、嘉手納は相手バッターを思い通りの場所に打たせ、一方、飯村は必ず狙った所へ打ち返せるという。2人の大活躍で王巨人軍にペナントの光が射しかけたある日、嘉手納は投球動作のさなか、原因不明の目まいを感じた。ハイテク野球ミステリー快作。
ときには弟と妹のため、ときには愛しき女のために、古流・流球拳法が唸る!炸裂する!L・Aのリトル・トーキョーで保安主任をつとめる「おれ」に、ある日、悲しい知らせがとどいた。旅行代理店につとめている弟が、植物人間にされてしまったというのだ。いったい誰の仕業なのか?何のために?「おれ」は見えない敵を追って、徒手空拳で立ち向かう決心をした…。シアトル、バンクーバー、香港などを舞台に、気鋭の著者が乾いた文体で男の情念を描く、ハードボイルドタッチの連作推理。
寛永11年、河合又五郎一行に上意討ちを仕掛ける荒木又右衛門は、上野城下に近い「鍵屋の辻こそ死に場所」と決めた。周りには義父服部采女が指揮する黒党が取り囲んでいる。手出しは無用。又右衛門の剛刀が走る。決闘から5年後、鳥取池田家へ身柄を移された又右衛門の身になにが起きたのかー。表現作他に暗躍する忍者の策略と濃厚なエロスが躍動する時代短編小説集。
日本人傭兵たちの愛憎と死闘!鎖国下の17世紀半ば、台湾のゼーランジャ城をめぐって戦いを繰り広げるオランダ軍と鄭成功軍。故国を捨て、それぞれの軍に雇われている日本人傭兵たちの相剋と生きざまを描く気鋭の長篇力作!
木辺勤は、「ハイテク球場の裏表」の取材で、エアドームにやってきた。スコアラーの片山との久しぶりの再会。片山は怯えた目でまわりを気にしながらいった。「ぼくらの商売はね、何かあると、スコアカードに書きこむ癖がつくものなんですよ」そしてその夜、彼はドーム内で死んだ。自殺か、他殺か-。木辺は、死体のそばに落ちていたスコアカードに、考えられないような間違いを発見した。そこから浮かびあがった“49-N”という記号は何を意味するのか。いま球場に、殺意の香りが漂いはじめる。野球ミステリー集。
有明の海辺で漁師として暮らすげんざは、むつごろう獲りの名人だった。6種類の竿と6個の釣針を使い分け、ひと振りで釣りあげる。そのげんざが、兄・仁錫と対決した…(「不知火殺法」)。少林寺拳法、銛打ちの殺法、跳躍術など、奇妙な武器と、恐るべき必殺技の数々。ユニークな発想が、時代伝奇小説の面白さを倍加させる傑作集。