著者 : 早見俊
突然、妖しい術を遣う美少年が江戸に現れた。彼は宗門改方からキリシタンを救うと、天草四郎の生まれ変わりを名乗ったという。時を同じくして、伊達政宗の命でローマ法王庁に派遣された支倉常長の孫・常信が、軍学者・沢村翔馬の塾に入門する。一方、公家の姫・由布の許には、父・飛鳥小路大納言からの文が届く。江戸に下向するので会いたいらしい。翔馬と由布の周りが騒がしくなる中、仙台藩を改易に追い込もうと、老中・松平信綱と腹臣・朽木誠一郎は、政宗直筆の「倒幕の密書」を手にすべく、陰謀を巡らせる。姫の守り人が正義の刃を揮う、シリーズ第二弾!
向坂勘十郎は群がる男たちを睨んだ。空色の小袖、草色の野袴、右手には十文字鑓を肩に担いでいる。六尺近い長身、豊かな髪を茶筅に結い、浅黒く日焼けしているが、鼻筋が通った男前だ。肩で風を切り、威風堂々、大股で歩く様は戦国の世の武芸者のようでもあった。寛永十二年、大坂落城から二十年、江戸の町には未だ戦国の気風が漂い、町のあちこちで争い事が絶えない。
軍学者の沢村翔馬は、さる事情により、美しい公家の姫・由布を守るべく、日本橋の二階家でともに暮らしている。口うるさい老侍女・お滝も一緒だ。気分転換に歌舞伎を観に行ったある日、翔馬は一瞬の隙をつかれ、由布を何者かに攫われてしまう。最近、唐土からやって来た清国人が江戸を荒らしているらしいが、なにか関わりがあるのか?それとも、以前勃発した百姓一揆で翔馬と敵対、大敗を喫し、恨みを抱く幕府老中・松平信綱の策謀なのか?信綱の腹臣は、高名な儒学者・林羅山の許で隣に旗を並べていた、好敵手・朽木誠一郎なのだが…。シリーズ第一弾!
五年前の乱で死んだ大塩平八郎の名を騙り、江戸で打ち壊しが発生、老中・水野忠邦が襲撃される。不思議な術でそれを助けたのは、芥川源丞という侍だった。折しも箱根山中では、幕閣を揺るがす密書が見つかり、将軍直属の闇御庭番・菅沼外記は背後を探ることに。密書を追ううち明らかになる芥川の正体。そして芥川の秘術と菅沼流気送術、二つの流儀が直接対決に!
先輩や同僚、はてはお奉行に対してさえくだけた言葉で話し、鉛仕込みの長ドスで喧嘩殺法を繰りだす、火盗同心・佐治剣之介。それもそのはず、剣之介はもとは不良町人。実家の金貸し業を手伝って容赦なく取り立てていたところを、火盗改長官・長谷川平蔵に見出されたという、異色の経歴のもちぬしであった。ある日、剣之介はふとしたことから、風神一家の正次郎という侠客と出会う。やくざ者ながら義侠心にあふれた正次郎と、常識はずれの剣之介は、正反対ながらなぜか互いに惹かれあうものを感じる。そしてついには、同心とやくざという立場を超えた二人組で、色街に巣食う悪党どもに決戦を挑む!好評シリーズ第三弾。
北町奉行所の元筆頭同心で今は“居眠り番”の蔵間源之助は、元老中で隠居の白河楽翁と鉄砲洲の鰻屋で食事をした直後、店の前で何者かに襲われ昏倒。その隙に楽翁は貴船党を名乗る一団に拉致され、身代金として松平家の家宝「鳳凰の香炉」を要求された。翌早朝、奥女中が貴船党の指定場所に香炉を運び、楽翁は…。家宝の香炉はいつの間にか贋物にすり替えられていた。
旗本の平九郎が飲み屋で会った品の良い老人。高名な絵師の老人は岡場所でひと悶着を起こし、彼を頼ってきたのだが…。(表題作)出世に無関心で何の運動もしてこなかった平九郎に降って湧いた番入り話。迷いに迷った挙句に彼が下した決断は?(「番入り始末」)このほか、「喧嘩の手柄」「まことの簪」の四編を収録。市井の片隅に生きる人たちの哀歓を描いた、江戸情緒溢れる傑作人情時代小説。
将軍直属の闇御庭番・菅沼外記は、江戸に流入する危険な抜け荷品の実態と、その流入経路を探る密命を受ける。棒手振りの義助は、魚河岸で仲間が死んだ背後に不審な犯罪の匂いを嗅ぎ、浅草奥山に小屋を張る唐人一座の花形・ホンファに魅了された春風は、怪しい廃寺へと導かれていくー。同様に事件を追う南町奉行の鳥居耀蔵と外記らの、新たな決戦が幕を開ける!
闇御庭番・菅沼外記は新潟湊を訪れ、薩摩藩の御納戸役が、豪商の北国屋へ一つの壺を手渡すのを目撃する。それは一国を滅ぼしかねない危険な「抜け荷」だった。その流通を阻止しようとする外記の前に、次々現れる敵。一方江戸では、老中・水野忠邦の進める強引な奢侈取締まりが、悲しい殺しを引き起こすー。手に汗握る騙し合いと悪党退治。痛快なシリーズ第三弾。
老中水野忠邦と目付鳥居耀蔵の悪政を正すべく将軍家慶の「闇御庭番」となった菅沼外記。卑劣な「三方領知替」の計画を実現させようと庄内藩に隠密を放った水野らの企みを阻止すべく、家慶の命を受けた外記らは芭蕉の『おくのほそ道』を辿る旅に出る。道中、隠密たちとの攻防と知恵比べの果てに、酒田湊でついに決戦!時代小説の醍醐味が詰まったシリーズ第二弾。
将軍・家慶の公儀御庭番である菅沼外記は、老中・水野忠邦の命により佞臣・中野石翁を罠に嵌めるが、口封じのために水野に命を狙われてしまう。外記は試練を経て、水野とその配下の御目付・鳥居耀蔵の悪政を正す「闇御庭番」として生まれ変わる。家慶の密命を帯び、仲間とともに巨悪に立ち向かう正義の男。時代小説の醍醐味が詰まった傑作シリーズ、ここに始まる。
質屋に現れた武家奉公の女。質草代りの金を受け取らず、幼子を残し姿を消した…。(「武士の体面」)常磐津の師匠を人質に、稽古場に立て籠もった浪人。なぜか、刀の目利きを要求するが…。(表題作)刀の目利きと研ぎで評判の下級旗本・関口平九郎。お調子者の質屋の若旦那・卯之吉。冷や飯食いの同心・深尾左門。三人の男たちが、お江戸を騒がす難事件の謎を解きほぐす。書き下ろし時代小説四編。
刀の目利きと研ぎで生計を助け、腕が立つが出世には無関心の下級旗本・関口平九郎。世間の噂に敏感な、お調子者の質屋の若旦那・万寿屋卯之吉。世間を冷めた眼で見る、はぐれ狼の同心・深尾左門。同じ常磐津の師匠のもとに通う、身分や生い立ち、暮らしも違う三人の男が、それぞれの立場、特技を生かし、江戸の市井で起こる事件を人情味あふれる方法で解決する、書き下ろし連作時代小説四編。
水野藤十郎勝成は三河刈谷城主惣兵衛忠重の嫡男。勇猛果敢に戦場を疾駆する若武者だ。一騎駆け、一番鑓が生き甲斐で、短気で荒々しい気性を心配する父とはしばしば対立するのだった。織田信長に伺候するために京に滞在していた藤十郎は、本能寺の変に際し、父と自らの命も瀬戸際に立たされた。援軍手配のために刈谷へ向かう藤十郎の命運やいかに!風雲急の戦国冒険譚がここに始まる。
表の顔は小普請組旗本、裏の顔は御側衆の隠密。能登川清兵衛は、相次ぐ公儀隠密の失踪が、南朝の皇統にあたる上月家の改易騒動に絡んでいると聞き、探り始める。近頃江戸を賑わせる六重の見世物小屋・天空楼に興じる江戸庶民を横目に、やんごとなき上月家の隠し財宝「錦の御旗」をめぐる争奪戦が始まる。清兵衛は道具を駆使し、陰謀を斬る!好評シリーズ、完結編。
「この世には、罪を犯しながらも裁きを免れて、大手を振って生きておる連中がおる。そうした悪党に天罰を下すのだ」闇奉行と名乗る者の手で、罪を免れた悪党たちの打ち首が辻々に晒されつづける。北町奉行所の元筆頭同心・蔵間源之助は、今は居眠り番と揶揄される閑職だが、闇奉行を喝采する江戸中の熱狂に、恐るべき危うさを感知しはじめていた…。
密命を受け、佃島を公儀目付・鳥居耀蔵の陰謀から守る用心棒となった立花左京介。彼はその物腰と口癖から「左様介」の綽名で、島民から親しまれている。ある日、大御所・徳川家斉が、家康の故事にちなみ白魚漁見物に佃島を訪れるという知らせが。島民達は重圧を感じつつ、名誉なことと張り切るが、左京介は家斉の警護と称した鳥居の不穏な動きを察知。真意を探るため、聞き込みを始めるが…。島に息づく人情が胸をうつ傑作時代小説!
駿河の国境の寒村から村人が全員消えた!疫病か、それとも大久保長安の秘匿した財宝を狙うものの仕業なのか。徳川家康の遺骸を日光から駿河の久能山に運ぶ天海一行の護衛の途次、大道寺菊千代は大きな謎に直面する。そして、天海の命と久能山東照社に奉納される百万両を狙って襲い掛かる、忍び集団・風魔党の面々。菊千代率いる大江戸無双七人衆、最後の血戦。書下ろし時代小説。