著者 : 景山民夫
押さえておくべき古典から、人気作家による知られざる名品まで、短・掌編を精選。軽快な作品から始まり、歯ごたえのあるどっしりした佳作まで、飽きずに読ませる自慢のセットリスト。(解説/池上冬樹)
16世紀から、略奪と侵略を繰り返された黄金の国、ペルー。遺跡の発掘調査のためカハマルカに向かう考古学者・小矢哲生とその研究チームは、黄金の出土品を狙う何者かに襲撃されるが…。南米ペルーの遺跡を舞台に展開する、著者最後の冒険小説。
毒島町の財政は破綻寸前だ。予算を根こそぎ使ったあげく、町長はポックリあの世行き。残された者たちが苦しまぎれに思いついた、観光客誘致の妙手とは…?表題作をはじめ、人の心を読んで犯罪捜査を行う刑事が活躍する「チャネリング刑事」、謎の団体「裏プロレス」の死闘を描く「闇のリング」、ジュラシックならぬ「クラシック・パーク」など、バカバカしい笑いに溢れた11編。
ニューヨークJFK空港で、航空会社の職員が誤って同性の別人にチケットを発券したために怒り発した“このボンクラ”という口癖が、航空機の爆破予告に聞こえた-商社のエグゼクティブとしての絶対的な自信を見詰め直したときに見えてくる、火焔の中で生きる神話上の生物“サラマンダー”。自らの生を真摯に顧みたときに見えてくる豊かな生き方とは。会心の長編小説。
大地震発生。恐怖と冒険の近未来小説。シベリアの核兵器解体施設を襲った地震は、予期せぬ核事故をひき起こした。地球の破局まであと十数時間。閉じられた地下世界で、国際混成チームの活躍がはじまる。ロシア・日本・アメリカを結んで描く痛快巨篇。
俺は関東テレビ総務部総務課制作庶務係の、宇賀神邦彦だ。仕事は局内で起った面倒ごとを裏側から始末して回ること。もともと制作部のディレクターをやっていたが、四年間で九本の番組をコケさせ、落とし前をつけさせられてる訳だ。腐れ縁の上司、田所制作局長の罵声「バカヤロー」が俺の出番の合図になる。愛車マスタングを駆って、今日も一丁行くとするか。トラブル・バスター、人は俺をそう呼ぶ。
360度人工の明りが目に入らないところ、そこが俺の休暇の土地さー。ネバダ砂漠でひとりバイクを乗りまわして、休暇を過ごす公認会計士との出会いを爽やかに描いた表題作。暴走族に因縁をつけられ、骨董もののシトロエン2CVで目隠しレースに臨む「チキンレース」。ほかに「元禄異種格闘技戦」「ボトムライン」「ご町内諜報戦」など、多彩なアイデアとスタイルがはじける第一作品集。
’60年代最後の年、22歳の上山哲夫は、アコースティック・ギターひとつを持ってアメリカへ旅立つ。子供の頃、ベース・キャンプの金網の向こう側にしかなかった「アメリカ」を求めて。西海岸から東へたどる哲夫が出会ったものはベトナム戦争の影とヒッピーたち…。巨大な異文化に裸で身をさらし、己れの根を必死に捉まえようと彷徨する若者の姿を鋭い感性で描きだした青春の書。
殺人犯は野毛山動物園のオランウータン!(「檻の中の密林」)、三浦半島の洋館で主人が殺された(「三浦小夜曲」)、黄金町に流れてきたフィリピン人ホステスの運命(「真冬のハイビスカス」)など、7編。
俺は、関東テレビの揉めごと解決屋・宇賀神邦彦、通称トラブルバスターだ。メキシコ・ロケの途上、国境の南グァテマラまで足をのばしたカメラマンが帰国後、取材したビデオテープとともに行方不明に。事件を追って、宇賀神邦彦が行動を開始した。パートナーは、なんと16歳の女子高生。
小畑洋介、12歳。海洋生物学者の父、徹郎とフィジー諸島のパゴパゴ島に移り住んで3年になる。洋助はある朝、通学の途中、珊瑚礁の潮だまりにひとつの生命を発見した。“奇跡”との出会いだった。それは6000万年以上も昔に死に絶えたはずのプレシオザウルスの生まれたばかりの姿だったのである。しなやかな肢体と愛らしい黒い瞳を持ったその奇跡の生命は、洋助を見つめ、「COO」と歓喜の産声をあげた。こうして少年と幼い恐竜クーとのきらめく至福の日々がはじまった。だが平和は長くは続かなかった。第99回直木賞にかがやく、感動の冒険ファンタジー、待望の文庫化。
ボルネオの森林保護区で働く西緑郎は、病院で死を前にした老人から封筒を託される。西は手紙と3カラットのダイヤが入ったそれを老人の従妹アイリーンに届けるが、2人は何者かの襲撃をうける。手紙は“マレーの虎”山下奉文の幻の財宝のありかを教えるものだったのだ。アイリーンの愛車ダッジ・チャレンジャーを駆って、マレー半島を舞台にすさまじいカー・チェイスが始まった。
夢がまだテレビ界に満ちあふれていた昭和40年代、日曜日の夜6時半に一世を風靡したバラエティ番組があった。ADになりたての僕は憧れの番組についたものの毎日が失敗のくりかえし。鉄拳と罵声の洪水だったけれど、テレビに恋した男たちはキラキラと輝いて、僕にはとてつもなくまぶしく見えたのだった。
青春の時間は自分の手で廻したい。そう決心した僕は、’60年代最後の年、たった一人東へ飛ぶ。ハワイから本土、大陸を横切ってNYへ。そこには子供のころ、ベースの内側にしかなかったアメリカがあった。そして病める素顔も。“青春の光と影”をBGMに、光り輝やく国アメリカとの対決を鋭い感性で描く傑作。