著者 : 本城雅人
ファンたちが、思い思いの選手を組み合わせて、ペナントを戦うシミュレーションゲーム「ファンタジーベースボール」。全米野球ファンの頂点を争う戦いで、見事に優勝した野球好きの青年、大野俊太郎は、ニューヨーク・ヤンキースでGM補佐を務めた立花の抜擢で、IT企業に買収されたばかりの新生横浜ベイズの副GMに就任する。ビリー・ビーンの「マネーボール」に代表されるように、野球を統計学から分析するセイバーメトリクスを駆使し、万年下位の弱小球団をテコ入れし、見事チームに首位を快走させる辣腕フロントとなる。だが、俊太郎に、思いもよらぬに新たな試練が……。それは、ベイズと球界の盟主・東都ジェッツとの合併話だった。しかし、合併話は、大変革への単なる序章にすぎなかった。 東都ジェッツのオーナーである東都新聞社主の京極四郎は、日本の球団を四球団に再編。なんとメジャーリーグの極東地区の一部に編入することを画策していた。大野はこの歴史的大転換の渦に巻き込まれていく。 日本球団とメジャーの合併が実現したら……。 デビュー作『ノーバデイノウズ』で、サムライジャパン野球文学賞を受賞した著者が、統一球や経営難がたびたび持ち上がり、くすぶる球界再編や、スターのメジャー流出で揺れる現在の球界の行く末を、暗示するかのようなシミュレーション小説に挑む。 「ベースボール」と「野球」の本質の違い、そして、合従連衡で揺れる日本各地の地域性、随所で描かれる迫真の野球シーン、そしてグッズや審判の問題にいたるまで、選手たち、オーナー、監督たちの葛藤と苦悩、そして、野球への思いをリアルに描きだした傑作。これは、まさに野球のTPP問題! 単行本刊行時には、多くの書評で絶賛された、日本プロ野球を愛するすべての人々に捧げたい、これまでになかったスケールで描く野球小説。
日本一の騎手の二番手。僕の父さん。負けても笑って、また来週も馬に乗る。大嫌いだった。そんな父さんが、12年前。レース中の落馬で死んだ。でもあれは、本当に事故だったのか?真実を探るために、息子は騎手の道を選ぶ。ある競馬関係者に疑念を抱いたままー。
プロ野球で、今シーズンオフのFAの目玉となった投手・結城憲吾のスポーツ代理人として、マスコミをにぎわす男、善場圭一。彼は、プロの世界に身を置いたものの一年で引退。その後は代理人に転じ、業界でも一風変わった存在として知られている。「選手の評価は、年俸で決まる」と言いきるその姿勢は、金の亡者「ゼニバ」と蔑まれ、忌み嫌われている。だが、その実態は、悪役に徹して選手の盾となることで、選手からは絶大の信頼を寄せられるスポーツ代理人である。結城のFAが大詰めを迎えたとき、突如スポーツマネージメントの大手、グリーンパークのやり手女社長羽田貴子と、彼女とCMの契約を結んだ結城に、善場は呼び出され、羽田から意外な提案を受ける。それは、結城と並ぶ球界の盟主・東都ジェッツの元四番だった瀬司の行方を探してほしいという依頼だった。もし、瀬司を見つけ出したら、結城からグリーンパークは手を引いてもよいという破格の条件だ。だが、善場には、以前、代理人契約をしていた瀬司と羽田にまつわるある苦い思い出があった。瀬司の捜索を引き受けた善場に、羽田は、瀬司が生前、自分に何かあれば、瀬司に手渡すようにと伝えていたというリストを善場に手渡す。善場は、そのリストをたどるうち、一人の甲子園優勝投手の自殺に行きあたるが……。サムライ野球文学賞を受賞した『ノーバディノウズ』、そして、二宮清純氏や玉木正之氏など、多くのスポーツライターが、絶賛した『球界消滅』で話題となった本城雅人が、金銭と、野球。そして、代理人制度。野球のストーブリーグにおける陰の主役の知られざる実態をあぶりだしつつ、その裏に描かれる駆け引きを、プロ野球選手たちの身に降りかかった事件を通して描く傑作スポーツミステリー。
ケンタッキーダービーを目前に控え、本命馬の誘拐未遂事件が発生。日本人調教師の勇敢な行動で事なきを得、レースは予定どおり開催された。本命馬が順当に優勝、そして日本勢も四着と大健闘。だが、その立役者の騎手・竜見秀行が翌日、変死体で発見される。ふたつの事件をめぐる奇妙な接点。やがて優勝馬にある疑惑が。息を呑む極上ミステリー。
裏で糸を引いているヤツがいる?ミクロコスモス・ギャラクシー・チーフスカウト堂神恭介。“怪物スカウト”と恐れられ、選手獲得のためなら手段を選ばず、裏社会との黒い噂も絶えない。その堂神が「人気球団G以外なら野球浪人します」と宣言した大学生を、強行一位指名した。Gに喧嘩を仕掛けたのだ!-「ドラフト一巡目 指名拒否」ほか、プロ野球スカウトたちのかけひき、思惑と欲望が交錯する連作短篇集。
選手、球団、マスコミ…。すべてを操る全能の代理人、善場圭一登場。金の亡者と忌み嫌われ「ゼニバ」と蔑まれる代理人、善場。だが選手の盾となって悪役に徹する姿勢で絶大な信頼を集めている。古い慣習に縛られた球界に新風を吹き込む彼は改革者か破壊者なのか。