著者 : 本多孝好
真実を見抜き、罪を償わせる。 たった、それだけ。それだけのことが、なぜこんなにも難しいーー? マンションの一室で発生したある殺人事件の現場に向かった、県警捜査一課の和泉。 そこで出会った女性警官・瀬良の第一印象は、簡単に言えば「最悪」だった。 しかし、上の命令で瀬良とタッグを組み殺人事件を捜査することになり、 和泉は彼女の類い稀な観察力を知ることになる。 二人の懸命な捜査により、事件のかたちは徐々に輪郭を現していくが、 待ち受けていたのは「正しい刑罰」の在り方を問う、予想外の真相だったーー。 和泉と瀬良が立ち向かった最初の事件「イージー・ケース」ほか、 事件に関する証言を頑なに拒み続ける容疑者の謎を追う「ノー・リプライ」、 解決の糸口が見えない誘拐事件を描く書き下ろし中編「ホワイト・ポートレイト」を収録。 心揺さぶる結末に息を呑む、圧巻の警察ミステリー! 【著者略歴】 本多孝好 (ほんだ・たかよし) 1971年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。 1994年「眠りの海」で第16回小説推理新人賞を受賞。1999年同作を収録した『MISSING』で単行本デビュー。「このミステリーがすごい! 2000年版」でトップ10入りするなどの高い評価を得て一躍脚光を浴びる。 著書に『MOMENT』『WILL』『MEMORY』『FINE DAYS』『真夜中の五分前』『正義のミカタ I'm a loser』『チェーン・ポイズン』『at Home』『ストレイヤーズ・クロニクル』『Good old boys』『dele』『アフター・サイレンス』などがある。
警察専門のカウンセラー・高階唯子の仕事は、事件被害者やその家族のケアをすることだ。夫を殺されたのに自分こそ罰を受けるべきだという妻。誘拐犯をかばい嘘の証言をする少女。心の傷から快復したはずなのに、姉を殺した加害者に復讐した少年…多くを語らないクライエントが抱える痛みと謎を解決するため、唯子は奔走する。絶望の淵で、人は誰を想い、何を願うのか。そして長い沈黙の後に訪れる、小さいけれど確かな希望ー。深く胸に響く物語。
故人より託されたデータを極秘に削除する会社『dele.LIFE』。その所長、坂上圭司が姿を消した。真柴祐太郎はかつての雇い主を捜し始めるが、手がかりと思しきファイルは得体の知れぬ陰謀へと繋がっていきー(「リターン・ジャーニー」)。誰からも愛された女子中学生が自殺した。彼女の死と、遺されたデータの謎に迫る「スタンド・アローン」を含む全2篇。データに込められた秘密や想いが胸を震わすミステリ、待望の第3弾。
一番弱いのに、一番楽しくサッカーをやれる「牧原スワンズ」の四年生チーム。公式戦では一勝はおろか、まだ一点も取ったことがない市内屈指の弱さを誇っている。今年最後の公式戦となる市大会に挑む子どもたち。しかし、チームの活動を手伝う父親たちは、それぞれに悩みを抱えていた。八組の家族のありようとその成長を描き、すべての頑張るお父さんと子どもたちへあたたかなエールを贈る物語。
孤独な少女・翼と、風俗店「ピーチドロップス」のオーナーで大学生の早瀬俊。二人をつなぐ“大切な人”が姿を消して以来、同業の女の子が行方不明になる事件が界隈で相次ぐ。常連客、担任教師、元警察官ー寂しさを抱えた人々が交錯する場所にかけられた、残酷な魔法とは。切ない余韻が迫る、傑作ミステリー。
『dele.LIFE』は依頼人が死んだときに動き出す。託された秘密のデータを削除するのが、この会社の仕事だ。所長の圭司の指示を受け依頼人の死亡確認をする祐太郎は、この世と繋がる一筋の縁を切るような仕事に、いまだ割り切れないものを感じていた。ある日祐太郎の妹・鈴が通っていた大学病院の元教授から依頼が舞い込む。新薬の治験中に死んだ鈴。その真相に2人は近づくが…記憶と記録をめぐるミステリ、待望の第2弾。
「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除する」。それが『dele.LIFE』の仕事だ。淡々と依頼をこなす圭司に対し、新入りの祐太郎はどこか疑問を感じていた。詐欺の証拠、謎の写真、隠し金ー。依頼人の秘密のデータを覗いてしまった2人は、思わぬ真相や事件に直面してゆく。死にゆく者が依頼に込めた想い。遺された者の胸に残る記憶。生と死、記録と記憶をめぐる、心震わすミステリ。
『dele.LIFE』の仕事は、誰かが死んだときに始まる。死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除するーそれが、この会社の仕事だ。新入りの真柴祐太郎が足を使って裏を取り、所長の坂上圭司がデータを削除する。淡々と依頼を遂行する圭司のスタンスに対し、祐太郎はどこか疑問を感じていた。詐欺の証拠、異性の写真、隠し金ー。依頼人の秘密のファイルを覗いてしまった二人は、次々と事件に巻き込まれる。この世を去る者が消したかった“記録”と、遺された者が抱く“記憶”。秘められた謎と真相、そして込められた想いとは。“生”と“死”、“記憶”と“記録”をめぐる連作ミステリ。
個性あふれる作家陣が、大人への階段を上ろうとする人生の一瞬を鋭くとらえた短編作品集。内面から湧き出る衝動をもてあまし、人生のほろ苦さを味わいながらも大人未満のところにいる。そんな人々が集まる場所。人気作家勢揃いのアンソロジー。
横浜・伊勢佐木町で風俗店『ピーチドロップス』を営む大学生・早瀬俊。彼は進藤翼という少女と二人で暮らしていた。深い翳を宿す青年・早瀬と、非の打ち所がない少女・翼。店の常連客、翼の担任教師、老いた元警官など周囲の人物たちから、少しずつ早瀬と翼の秘密が明かされていくー。埋めることのできない「喪失」。「生と死」を描いてきた著者が投げかける新たな傑作!この物語の行く末は?驚嘆のミステリー!!
防衛副大臣となった渡瀬浩一郎に囚われたままの亘を、必死に探す昴。渡瀬は自身の黒い野望を達成するため、暗殺者・武部に昴の殺害を指示。一方、「破綻」のタイムリミットが近づく“アゲハ”達は、渡瀬抹殺のため動き出す。“アゲハ”の中心人物、学の体内で人類滅亡のウィルスが着々と生成されていく中、ついに三者が、富士山演習場で激突。誰が敵で誰が味方なのかー。死闘のシリーズ最終章!
特殊能力を持つ昴・沙耶・隆二・良介。東京での国際会議に出席する遺伝子工学者に復讐するため現れる“アゲハ”を生け捕りにしろと、渡瀬から命令される。一方、会場ホテルの警備システムを任されたセキュリティ会社社長の神谷昌樹も独自のゲームを仕掛ける。昴たちの体は既に限界にきており、いつ「破綻」してもおかしくない状態。そんな中、“アゲハ”と渡瀬の対決が近づくー。緊迫の第2弾。
瞬時に移動できる超人的運動能力、普通の人には聞こえない小さな音まで聞き分ける鋭敏な聴覚、決して忘却しない驚異的な視覚記憶力ー常人とはかけ離れた特殊能力を持つ4人は仲間の亘を人質に取られ、老獪な政治家・渡瀬浩一郎のために裏の仕事をしている。そんな彼らに、世間を賑わしている残虐な殺人集団“アゲハ”の追跡が命じられる。“アゲハ”とは何者なのか。今、壮絶な戦いが幕を開けるー。
ビデオジャーナリスト楠瀬薫の前に突然現れた少女。それはかつて、“超能力少女”として世間を騒がせた諏訪礼だった。あの時、薫の取材で姿を消した礼が今なぜ?過去を贖うため礼を匿った薫を襲うストーカー、協力する知人の怪死、大物政治家の影。陰謀の黒幕は誰か。礼が抱える秘密とは。二人の逃避行は想定不能の結末へー心理の盲点を描き抜く驚愕のサスペンス長篇!
葬儀店のひとり娘に産まれた森野、そして文房具店の息子である神田。同じ商店街で幼馴染みとしてふたりは育った。中学三年のとき、森野が教師に怪我を負わせて学校に来なくなった。事件の真相はどうだったのか。ふたりと関わった人たちの眼差しを通じて、次第に明らかになる。ふたりの間に流れた時間、共有した想い出、すれ違った思い…。大切な記憶と素敵な未来を優しく包みこんだ珠玉の連作集。
父は泥棒、母は結婚詐欺師。僕はパスポート偽造屋で働いており、弟はゲームの中で世界を救ってばかりいる。一家はそれなりに平和に暮らしていたが、ある日、母が結婚詐欺のターゲットに逆に誘拐されてしまう。犯人に呼び出された父と僕は、偽札が詰まった紙袋を持って母を助けに向かうがー。巧妙な伏線が張り巡らされ、驚きと涙なくしては読めない結末を迎える表題作を始め、現代の家族のかたちを描ききった傑作小説集。
「私が殺した女性の、娘さんを守って欲しいのです」。3年前に医大を辞めた僕に、教授が切り出した突然の依頼。それが物語の始まりだった。不登校児を集めた塾でバイトしている僕は、他人の波長にシンクロしてしまう能力を持っており、同時にそれは人を傷つける呪いでもあった。一番近くにいる女性にもそのことを打ち明けられない僕だったがー。人と人はどこまで分かりあえるのか?瑞々しさに満ちた傑作長編小説。
彼女と会ったとき、誰かに似ていると思った。何のことはない。その顔は、幼い頃の私と同じ顔なのだ。生徒に対して距離をとって接する私が、彼女にだけ近づいたのは自然な流れだったー。夜の海辺で、恋人と過ごした日日を回想する私。だがその裏には、これまで見えていなかった真実が息を潜めていた。(「眠りの海」)「このミステリーがすごい!2000年版」第10位!透明感溢れる哀切と驚きにみちた、デビュー短編集。