著者 : 本岡類
「定年になったら、一緒にこの曲を合奏しよう」妻と交わした約束だった。そのために、ピアノを習った。二人の楽しみのはずだった…。突然の訃報、独りきりの家、人生設計の破綻。それでも「大人のピアノ教室」に通い続ける証券マンに、光はさすのか。混乱の中で立ちすくむ時、懐かしい妻の声がよみがえる-。夫婦の愛の物語。
孤独な魂たちが引き起こす戦慄のテロリズム。若者の間で、密かにその存在を囁かれる“おやじ殺しゲーム”。体験者はやがて妄想に取り憑かれ、実際に無差別殺人を始めるという-現代社会の闇を抉る、渾身の書下ろしサスペンス900枚。
誘拐された子供は闇に消えた。行方は?そして犯人は!?DIY店「パレット・ホームセンター」の社長・斎藤晴彦の一人息子が誘拐された!犯人は三千万円の身代金を要求、巧妙な受け取り方法を画策する。偶然受け渡し場所に居合わせた将棋棋士・水無瀬翔五段と奨励会時代の後輩・安野好平に誘拐の嫌疑がかけられ、捜査は混迷。安野の頼みで水無瀬自身も事件の解明に乗り出すが、やがて、安野は奇怪な殺人事件の犯人として逮捕されてしまう。水無瀬は後輩を救い出せるか?達意のトリックメーカー・本岡類が贈る、極上の本格推理。棋士探偵・水無瀬翔シリーズ最高傑作。
世紀末日本に彗星のごとく現れた団体「理性の跳躍」。エリート層を中心に七千名の会員を擁し、膨大な資金力を持つ彼らが主張する強者の論理が人々の心をとらえていく。だが、その陰でひっそりと不可解な死を遂げた男がいた-。混迷の現代社会を問う書き下ろし長編サスペンス。
エリート大学生が惨殺された。遺留品は名簿の一部と思える紙切れのみ。被害者は専門学校に通う息子の小学校時代の親友だったと知って、刑事は慄然とする。砂つぶのようにパラパラとして捉えどころのない若者、それを苦々しく感じている父親の世代。この二つの世代の狭間で暗躍する“裏情報社会の住人”。事件を解く鍵は、謎の言葉「羊ゲーム」にあった-。
悪意のない、ほんの不注意から起ってしまった事件。しかも自分が手を下したわけでもなんでもない不可抗力的事故…。きっかけはそんな曖昧な出来事だった。しかしその残り火は、東京周縁部の町や村を炎でおおい尽くしていった。あたかもかつての田園地帯が近代に復讐するかのように…。社会心理の、微妙な、しかし本質的な変化を捉える名手・本岡類が放つ、新感覚ミステリー。
電器店店員、引越しヘルパー、証券マンなど、都会で生活する仕事のプロ9人にしかけられた悪意の罠。それは、きっとあなたの傍にも-。気鋭作家のブラック・ミステリー集。
通産省に就職が決まっていた東大生が、卒業式の二日後に原因不明の自殺を図った。事件の取材を始めた新聞記者が、遺書の中の謎の言葉に導かれて意外な真相に辿りつく。しかし、その先には、さらに驚くべき展開が待ち受けていた…。脆くて幼い現代の若者達。彼らを取り巻く犯罪の構図を、社会心理ミステリーの旗手が鮮やかに描く意欲作。
誘拐犯からの連絡が、こともあろうに警察に届くとは。約束の場所に、しかし犯人は姿を見せなかった。そしてそれっきり音信が途絶えて…。児童心理の恐るべき深さ、移植医学の陥穽。最果てまで行きついた現代社会の闇を背景に描く、不可解きわまる誘拐事件。
なぜに心が波立つのか。昔から幾度となく考えてみた。だが、記憶は氷山の一角をのぞかせるだけで、肝心な部分は深い淵に沈みこんだままだ。-幼い頃。神輿が繰り出して、笛の音が流れる祭の日。何かが起こっている。閑静な住宅街に光る狂気のナイフ、幼児を狙う水曜日の通り魔はあなたの隣に。書下ろし社会派ミステリー。
迷宮入り寸前の殺人事件がきっかけだった。とるに足らぬダイイングメッセージが「絶対にバレない詐欺」解明の唯一の糸口だった。被害届もないまま、組織の綻び目を手繰ってゆく2人の刑事。犯人を絞り、詐欺の全容も明らかにした矢先-。現代社会に潜行する悪のトレンドを逸早く掬いあげる、著者ならではの同時代ミステリー。
東京・世田谷で白昼、弁護士夫人が絞殺された。最重要容疑者は夫・三田村行雄だったが、犯行時刻、彼は1000キロ離れた鹿児島におり、秘書からの電話を受けていたことが確認された。転送電話を使ったりはしていない。警視庁“独立捜査班”高月圭一は、三田村夫婦の過去の秘密に迫り、鉄壁のアリバイに挑むが…。