著者 : 杉本章子
江戸のおんなを描いて「不世出の名人」と評された作家による最後の傑作!夫が浮気相手と子まで生したことに嫌気が差して、おこうは婚家を離れた。実家に戻っても安息は訪れない。奉公人の周旋や仲介をする口入れ屋の女主人に雇ってほしいと必死で頼んだのだが。単行本未収録の「ふたたびの浮き世」も掲載
お狂言師仲間が、大奥の女子同士の色模様「といちはいち組」に引きこまれたあげく、自害に見せかけて殺められた。隠密の手駒もつとめる人気役者の歌吉が、密命を帯びる。そして、互いに想う歌吉と日向新吾だが…。文字通り我が身を削って書き継いだ著者渾身の遺作。
浮気相手との間に子まで生した夫との縁を切り、実家に戻っても居場所がなかったおこう。器量が逆に災いして奉公先を次々に変えるも、容色を武器にすることをきっぱり断るお島。嫁をいびり追い出したと噂されるお久米。妾奉公を自ら望んでやってきたお雪。あらぬ盗みの疑いをかけられた女中頭のお徳ー。人と人との縁を結ぶ「三春屋」で女たちの運命は変わってゆく…著者3年ぶりの傑作最新刊!名手の紡ぐ江戸の人生模様。
今をときめくお狂言師の歌吉は隠密の手駒も務める。踊りを披露したこともある将軍家慶の養女精姫の嫁ぎ先として名の挙がる井伊家と有馬家の使者が、心中に見せかけて殺された。男は井伊家御用達の畳表問屋堺屋の跡取りで、歌吉を小鋸で斬りつけたお糸のもと許嫁。因縁のお糸から事情を探れという密命が。
金子弥一郎は慶応3年に異例の若さで定町回り同心となったものの、幕府は瓦解して町奉行も消滅。新政府に仕官した同僚の誘いにも気が進まず、元岡っ引の始めた料理茶屋に居候を決め込んだが、ひょんな縁で佐幕派の「中外新聞」で種取り記者として探索にあたることに。元「八丁堀」同心の矜持を描く傑作長編。
江戸時代にも「占い」は流行し、女性たちはそのお告げに一喜一憂していた。実際に出版されていた占い本「女用知恵鑑宝織」。女の吉凶を生まれ月ごとにズバリあてるこの本をめぐる女の喜びと悲哀ー。月ごとの風物を織り込みながら、江戸の女の恋愛を生き生きと描き出す、切なくも愛らしい傑作時代小説。
火事の怪我で視力を失った呉服太物店「美濃屋」の主・信太郎と、その身を案じるおぬい。眼も回復しないまま、美濃屋では手代頭の助四郎が店を飛び出し、別家・菱屋とも義絶するなど揉め事が続く。そんなある日、江戸を大きな揺れが襲うー。崩れゆく町と揺るがぬ家族を描く、静かな迫力に満ちた好評シリーズ。
父の遺言により、美濃屋の跡を継ぐことになった信太郎。世話になった長屋の仲間と別れの宴をしていたとき、河原崎座が火事になった。恩人を助けるため、燃え盛る河原崎座に駆け込んだ信太郎だが、そのせいで目が見えなくなってしまう。大店の主人となる信太郎の手助けをするため、おぬいは一大決心をした。
路考お粂と謳われた水木歌仙の下で踊りの稽古に励むお吉。十三で「歌吉」の名をいただいて五年、ようやく大名家の奥向きで踊りを披露するお狂言師の一座に加えてもらえることになった矢先、嫉妬した相弟子に小鋸で頬に一生消えない傷をつけられる。そんな折、公儀の隠密より姉弟子を探れという密命が…。
“中橋小町”の歌吉は、お狂言師にして、お小人目付の協力者。宿下がりしたままの坂東流名取・照代を再び召し出そうとする上様に、一夜だけの舞台に立つ事になった照代と連れ舞を舞う事に。大奥の陰謀から照代を守ってやれるのは、歌吉をおいてほかにいない。直木賞作家が描く長編時代小説。
吉原の引手茶屋の子持ち後家、おぬいと深い仲になり、内証勘当された老舗太物問屋美濃屋の跡取り息子、信太郎。子供も授かった二人に救いの手を差し伸べたのは、他ならぬ父、卯兵衛だった。日々の暮らしの中で培ってきた「きずな」が彼らの人生を大きく変えていく、大好評シリーズ第四弾。
信太郎の幼馴じみ、元吉が何者かに刺された。その背後には、せつなすぎる恋と、大きな「狐」のたくらみがあったー。ご一新まであと十四年。黒船には大騒ぎした江戸っ子たちが、今も昔も変らぬ人情で、闇に潜んだ巨悪のからくりを解き明かす。これぞ、捕物帖の醍醐味!大好評の人情始末帖シリーズ第3弾。
「水雷屯」とは占いでいう多事多難の相。子持ちの後家と恋仲になって実家の呉服太物店から勘当中の信太郎は、ある時義兄・庄二郎から相談を持ちかけられた。なんと妾宅で手形を奪われ、妾も行方不明だという。頼った占いでも「水雷屯」の相が出てー信太郎は義兄を窮地から救えるのか?好評シリーズ第2弾。
おすずという許嫁がありながら、子持ちの後家と深みにはまり、呉服太物店を勘当された総領息子の信太郎。その後おすずは賊に辱められ、自害して果てた。「一度だけ」とおすずが身を預けてきたあのとき、願いをきいてあげていたら…後悔の念を抱きながら、信太郎は賊を追うー。平成14年度中山義秀文学賞受賞作。
雨の大川端を蛇の目をさして去って行く嫂佐江の後ろ姿を描いた光線画「東京新大橋雨中図」で好評を博した最後の木版浮世絵師小林清親は、もと御蔵屋敷の御勘定掛であった。彼の波瀾に充ちた半生と江戸から明治に移り変わる時代の流れ、風俗、そして庶民の生きざまをあざやかに描いた第100回直木賞受賞作。