著者 : 村田勝彦
その夏わたしは、ひとり暮らしの老人に暖かい夕食を届ける、地元病院のボランティアを引き受けることになった。配達先の老婦人は、みなそれぞれに聡明で優しい人たちばかり。だがほっとしたのも束の間、ある夜わたしは、彼女らのひとりが略奪され、殺害される現場に行きあわせてしまう…。駆け出しミステリ作家マロリーの活躍を描く、ノスタルジック・ハードボイルド第一弾。
銃も棍棒もなしで、丸腰のまま保安官補をつとめる、一見物静かな男ルー・フォード。ウェスト・テキサスの小さな田舎町を牛耳る建設業者コンウェイを義兄の仇とねらう彼は、売春婦を利用し復讐をとげるが、そのために殺人をくり返すこととなり、心に巣食った病的な暴力癖をあらわにしていく…。たしかな人間観察眼によって描かれる「現実味のある異常者」の物語。“安物雑貨店のドストエフスキー”と称され、再評価の声の高いジム・トンプスンの幻の代表作、ついに登場!
突然姿を消したコラムニストのバリーの行方を突き止めてくれ-ニューズ社から私立探偵エイモス・ウォーカーにこんな依頼が舞いこんだのは、彼とバリーがヴェトナム時代からの親友だからだった。まずウォーカーはバリーのオフィスを調べ、埋め草記事を集めたマニラ・フェルダーを発見した。空港に駐車された車のトランクから発見された死体、地元の労働組合の委員長の二年前の死亡記事、デトロイト市警の警視の早期退職の記事…。これら雑多な記事のなかにバリーの行方を示唆するものが含まれているのではないかと考えたウォーカーが詳細を知ろうと動きだした矢先、記事にでていた警視が自殺した。はたして、これらの記事の裏には、どんな繋がりが隠されているのか?そして、バリーの失踪はそれにどう関わっているのか?正統派ハードボイルドの伝統を受け継いだ、タフなデトロイトの私立探偵エイモス・ウォーカー再登場。
自分の主催するロック・コンサートを妨害する者の正体を突き止めてほしい-大物プロモーターのシーガルに招かれて、彼の自宅で開かれていたパーティに出かけていった私立探偵ジェイコブ・アッシュは、その場で依頼を受けた。だが、事件はその直後に起きた。パーティで振る舞われていたコカインを吸った落ち目のロック・スターのクーニイが急死したのだ。コカインは何者かによってヘロインとすり替えられていた。これもシーガルに対する嫌がらせのひとつなのか?それとも、はじめから、奇行で知られ、業界内に多くの敵を作っていたクーニイを狙った計画殺人だったのか?アッシュはクーニイの身辺をあらいはじめるが、なぜか彼と関係のあった人間はつぎつぎと謎めいた事故死を遂げていった…!ドラッグに彩られた頽廃のロック・シーンを舞台に、アメリカン・ドリームの光と影を描いた著者の自信作。
ロサンジェルスにやってきた、流れ者のジェリー・ケルズは、ある組織のボスに呼ばれ、賭博船の用心棒になってくれと頼まれる…。“不況と混乱の時代”、“ギャング・エイジ”と呼ばれる30年代のロサンジェルスで、政界とつながる組織の陰謀にまきこまれる主人公は、したたかにハードに、反撃にでる。チャンドラーが“超ハードボイルド”と評し、ビル・プロンジーニやジョー・ゴアズも“『裏切りの街』はまさにハードボイルドだ”と絶賛した極めつきの名作。ポール・ケイン唯一の長篇。