著者 : 東江一紀
「人生はあたしをたたきのめすハンマーなの?」…父親の二人目の子を妊娠、母親にはいたぶられる毎日。ハーレム生まれの16歳、プリシャスは家族の暴力と無知に打ちのめされ、希望も夢もない生活を送っていた。死んでいた彼女の感情を生き返らせたのは、読み書きを教えてくれたレイン先生との出会いだった。つたない文字で綴り始めたプリシャスの日記は、レイン先生に導かれ、いつしか激しい怒りや愛への憧れをあらわす詩の世界へと変わっていく…。
あらゆる悪が正気を飲み込もうとするグリーンリバー刑務所。完全に秩序を失った囚人たちの暴動は、情夫をめぐる痴情のもつれから始まった。-本当に狂っているのは誰なのかー暴動で仮釈放が霧散した囚人医師は、ぎりぎりの理性をゆるがせながらも、巨漢の精神分裂症患者の「啓示」の声に導かれ、善悪の彼岸を彷徨する…。黙示録的プリズン・サスペンス。
2013年、イギリスでは犯罪者候補リストによる凶悪犯罪防止システム、ロンブローゾ・プログラムが導入されていた。が、極秘のはずの被登録者が何者かに次々と殺害される。しかも、彼らはいずれも後頭部をガス消音銃で撃たれていたー。フェミニストの女性警部ジェイクと多重殺人犯「ウィトゲンシュタイン」がくりひろげる殺人=哲学探究。著者渾身の超弩級サイコ・サスペンス。
平凡すぎるほど平凡なサラリーマン、デイヴィッド・エリオット。ある日、出勤した彼を出迎えたのは、上司の拳銃だった。あやうく危機を脱した彼に、今度はプロの殺し屋が襲いかかる。助けを求めてたずねた親友も彼の命を狙い、最愛の妻も子も敵にまわる。一体なぜ?何が起こったのか?顔のない敵を相手に超高層オフィスビルのなかで死闘が始まる。かつてベトナムで戦った兵士の本能がデイヴィッドに甦り、摩天楼は地獄の戦場と化してゆく。
1947年、ナチス・ドイツ崩壊後のベルリン。大戦を生き延びたグンターは廃墟と化した街で、細々と探偵稼業を再開していた。そんなある日、ソ連駐留軍の大佐から、殺人で逮捕された男の嫌疑を晴らしてほしいとの依頼を受け、グンターはウィーンに赴いた。彼は事件の核心に迫るにつれ、旧ナチの亡霊が蠢いていることを知った…。「ベルリン三部作」の掉尾を飾るスパイ小説巨編
人気女性キャスターがベストセラー作家を射殺、正当防衛の弁護を引き受けたパジェット弁護士。殺人現場で発見されたテープをめぐる検察側との攻防。そのテープから生々しく甦る、あの大女優の声、明らかになる、20年前の彼女の自殺の忌まわしい真相。そしてそのテープが、彼自身の運命の大きな落とし穴になろうとは-全米を興奮させた大型法廷サスペンス。
故郷アルトモア山から遠く離れ、非情なテロリストとして生きるジョン・ジョー。健気に留守を守るテロリストの妻。北アイルランドに潜入した若き諜報部員ブレン。彼を教育する“師”パーカー。弱さゆえ、密告者として敵に絡め取られた男…。さまざまな人生をはらんで、IRAと英国情報機関の戦いは今日も続く。IRA暫定派の活動拠点アルトモア山では、テロ活動の失敗が相次ぎ、密告者=売国奴がいるのではとの疑いが浮上する。この地では売国奴は死を意味する。山をあげての売国奴狩り。パーカーとブレンに操られた密告者は、発覚の薄氷を踏みながら、ジョン・ジョーを故郷に呼び戻す策を弄する。英国情報機関対テロリストの対決が迫る。
一九七六年五月。八月の民主党全国大会で副大統領候補に推されるはずの上院議員が、行方不明のわが娘を捜し出してほしいと言ってきた。期限は大会まで。ニールにとっての、長く切ない夏が始まった…。プロの探偵に稼業のイロハをたたき込まれた元ストリート・キッドが、ナイーブな心を減らず口の陰に隠して、胸のすく活躍を展開する。個性きらめく新鮮な探偵物語、ここに開幕。
1938年夏。ナチ党支配下のベルリンは緊迫した空気に包まれていた。私立探偵グンターは富豪の未亡人からゆすり事件を依頼されるが、犯人と目される男は何者かによって消されてしまう。一方、刑事警察首脳の脅しによって、アーリア人少女連続殺人事件の捜査の指揮を執ることになったグンターは、ゆすり事件との奇妙な符合に気付いた…。絶賛を浴びたグンター・シリーズ第2弾。
ミッドウェスト大学の教授だったバウマンは、酔っ払い運転で少女を轢き殺したため、二千人の凶悪犯が収容された州立刑務所に服役している。刑期を無事に終えることだけを考えていた彼だが、所内で起きた連続殺人の捜査をする羽目に…。暴力沙汰とドラッグが蔓延するこの世界で、バウマンは果たして真犯人を突き止め、生き残ることができるか?迫真の超大型エンターテインメント。
連続殺人の被害者メッツラーと親しかったゲイの青年、カズンズの助けを借り、事件の関係者を洗うバウマン。〈終身刑囚クラブ〉〈黒い国士軍〉など囚人グループ間の苛烈な抗争に巻き込まれつつ、捜査を進めた末に浮かび上がったのは驚くべき事実だった…。舞台は一つの街ほどの規模を持つ巨大な重警備刑務所、主人公は元大学教授。ミッチェル・スミスが圧倒的な迫力で描く問題作。
1936年、ベルリン。オリンピックを間近に控えながらも、ナチ党の独裁に屈し、ユダヤ人への迫害が始まったこの街で、失踪人探しを仕事にするグンターに、鉄鋼王ジクスから調査の依頼が舞い込んだ。ジクスの一人娘とその夫が殺され、高価な首飾りが盗まれたという。グンターはナチ党政府高官だった娘婿の身近を洗い始めるが…。破局の予感に震える街を舞台に描く傑作ハードボイルド。
高級娼婦は死んでいた。自宅マンションの浴室で椅子に縛りつけられ、シャワーの熱湯を浴びせられてー。ニューヨーク市警の落ちこぼれ集団、遊軍部隊に所属する女性刑事エリー・クラインは相棒のナードンと共にこの事件の捜査に乗り出した。が、第二、第三の殺人が発生、捜査は難航する。多くを喪い、傷つきながらも、エリーが犯人を執拗に追いつめるまでを冷徹な筆致で描く警察小説。
学術論文をまとめるため渡英したドロレス・デュアラーは、ある日、やはり単身でロンドンに赴任していた商社副社長ヴィクター・モリセイと出会い、一夜をともにする。徹底的な女権拡張論者、自然保護論者であるドロレス、男性主導社会の論理に固執し、常に勝者であることを目指すヴィクターーまったく相容れぬはずの男と女が、運命の糸に引きずられるように恋に陥ちた。
ドロレスは男性の支配する社会、生産性のみが重視される社会への憤りを訴え、ヴィクターはそれを認めたうえで彼女の潔癖さ、偏狭さを指摘した。ふたりは互いにおのれの信念を譲らず、会うたびに反発し、だが同時に強く引かれあう。-他人を傷つけながら生きていかざるをえない男と、他人の心の傷みに涙を流す女。理性と感性がぎりぎりまでせめぎあう愛の極限を精緻に描く長編。
フラナリーは下水道を点検中、まっぷたつに切断された男の死体を発見した。男はラテン系で、検屍官によれば、鰐に噛みちぎられているという。果たして大都市シカゴの下水道に人喰い鰐が棲息しているのか?折りしも愛鳥を何羽も盗まれたという女性が、フラナリーに助けを求めてきた。捜査にのりだしたフラナリーはやがて、一見無関係なこのふたつの事件の間に思わぬ接点を見出すが…。