著者 : 松永義弘
「家老職はお家の引け際(改易、断絶)に役に立てばよい」昼行灯といわれた大石内蔵助が、時代の分水嶺となった元禄に、易きにつきがちな心を励まし、片落ちな裁定に生命を賭け、人間としての一分を貫き通すため四十六人の同士たちと共に立ち上がった戦いの日々を描く。
ねねは栄耀栄華にほとんど関心がなかったが、夫秀吉は大変な野心家で、あれよあれよという間に長浜12万石の大名になってしまった。以前は戦国の世であっても夫に抱かれて死ねればいいと考えていたが、今では夫の仕事に参加して、それに身をゆだねた上で、死を覚悟せねばならなくなったことに夫婦の絆を感じて…。
「一城の主とまでいかないが、ほどほどに出世して、相応の一家をなす男」とはねねの父・杉原助左衛門の藤吉郎評であった。ねねもその程度でいいと思う。だが、藤吉郎の幼いころからの苦労と猿に似た顔であれば道化て皆に笑ってもらいながら出世するしかないという悲痛な本音をきいた時、ねねは、初めて藤吉郎を理解した。
戦国乱世の炎激しく、留まることなく燃えるその渦の中に生きる男たち…時流に乗り多くを得る者、時勢に立ち向かい翻弄される者…その陰で、愛する人を思いすべてを捧げて生きようとする女たち…。哀しくも雄々しい戦国士魂を、雄渾の筆致で描き射る傑作群。
幕末、京の都に名を馳せた「新選組」副長・土方歳三、多摩に生まれ、薬行商をしながら剣を磨き、天然理心流の奥義を極めた剣の達人。さらに近藤勇と幕府の浪士組に参加、池田屋襲撃で一躍その名をとどろかせる。士道の美学に殉ずるべく、一人我が道をゆく若き剣士は、北辺の地に炎のごとき最期の咆哮をあげた…。断髪に洋装、進取の気風あふれる土方歳三の、波爛万丈の生涯。
天然理心流の奥義を極め、剣ひとすじに我が道を生きようとする多摩の若鮎・土方歳三の行手の、維新回天の激流あまりにもすさまじく…、新選組副長として“誠”の旗の下、京の巷を跋扈したのち士道の美学に殉ずるべく1人生き抜く彼の雄姿は、北辺の地に炎のごとき生涯の最期の咆哮をあげる…。待望の書下ろし歴史長編。
慶長17年(1812)夏、船島において佐々木小次郎と試合した宮本武蔵は、みごとに強敵小次郎を倒した。その後、因州鳥取6万5千石の池田家中の士に円明二刀流を指南していた武蔵に、19年春、新当唯一流岩井唯一赤山なる剣客が試合を挑む高札を立てた。が、この剣客をも苦もなく打ち倒したのち、武蔵は京へと向かった。その武蔵を追う者に、一族の長宍戸梅軒の仇討ちを名目とする手裏剣の名手天郷一郎太・小三郎の兄弟がいた。大坂夏の陣の直前、豊臣方につこうとして真田幸村らの反対に遭った武蔵は大坂城を去った。そして、不敵な少年三木之助を養子にしたのち、下野国小山の本多上野介正純のすすめで江戸へと向かった。-剣豪宮本武蔵の生涯を描く傑作長編。