著者 : 柴田元幸
匠の技巧が存分に発揮された、粒ぞろいの短篇集。アニメ『トムとジェリー』をありえないほど緻密にした「猫と鼠」から、“もう一人のエジソン”が開発した「触覚機」をめぐる実験日記「ウェストオレンジの魔術師」まで、老いてますます冴える短篇の名手による十三篇を収録。
南北戦争がはじまって、インディアナの農場で暮らす主婦コンスタンスは男のふりをして戦争に参加する。訥々とした女語りの雄弁さ、死と痛みに浸された世界、色彩たっぷりの自然描写、静かで容赦ない声。ポール・オースターが絶賛した長篇を柴田元幸の見事な訳でおくる。
男女の複雑怪奇な心理の綾、匠の技巧が光る極上の物語!売りに出した自宅を女性が客に案内するなかで、思いがけない関係が浮かび上がる「復讐」、官能の快楽に飽いた放蕩児が、英国の貴婦人に心を乱される「ドン・フアンの冒険」、王妃と騎士の不義を疑う王の煩悩、王の忠臣が悲運を物語る表題作を収録。
絵描きの眼に映った、ハリウッドの夢の影で貧しく生きる人々を描いた「いなごの日」。立身出世を目指す少年の身に起る悲劇の数々を描き、アメリカン・ドリームを徹底して暗転させた「クール・ミリオン」。グロテスクなブラック・ユーモアを炸裂させ、三〇年代のアメリカを駆け抜けて早世したウエスト、その代表的な長編に短編二編を加えた永久保存版作品集。“村上柴田翻訳堂”シリーズ。
バーと競馬場に入りびたり、ろくに仕事もしない史上最低の私立探偵ニック・ビレーンのもとに、死んだはずの作家セリーヌを探してくれという依頼が来る。早速調査に乗り出すビレーンだが、それを皮切りに、いくつもの奇妙な事件に巻き込まれていく。死神、浮気妻、宇宙人等が入り乱れ、物語は佳境に突入する。伝説的カルト作家の遺作にして怪作探偵小説が復刊。
僕の名はアラム、九歳。世界は想像しうるあらゆるたぐいの壮麗さに満ちていたー。アルメニア移民の子として生まれたサローヤンが、故郷の町を舞台に描いた代表作を新訳。貧しくもあたたかな大家族に囲まれ、何もかもが冒険だったあの頃。いとこがどこかから連れてきた馬。町にやってきたサーカス…。素朴なユーモアで彩られた愛すべき世界。“村上柴田翻訳堂”シリーズ開始。
トム・ソーヤーとハック・フィン、ふたつの冒険を同時収録!ほかにも世界初の指紋捜査小説やコミカルな紀行文など、アメリカ文学の金字塔たる、自由で多才な魅力がたっぷり。
「映画自閉症」の青年ヴィカーは、映画『陽のあたる場所』のモンゴメリー・クリフトとエリザベス・テイラーを、自分のスキンヘッドに刺青している。フィルム編集の才能が買われ、ハリウッドで監督作品を撮ることになるが…。『裁かるゝジャンヌ』、『めまい』、『ロング・グッドバイ』…映画と現実が錯綜する傑作長篇!
フランス革命直前のパリ。アメリカ独立宣言起草者として名高いトマス・ジェファソンは、自らの美しき女奴隷で愛人のサリーを連れて帰国しようとする。トマスとともにアメリカに帰り、再び彼の奴隷になるか、パリに残って自由人の黒人でい続けるか。サリーの決断により、愛と快楽、自由と隷属をめぐる、時空を超えた目くるめく物語が幕を開ける…現代アメリカ文学最重要作家の超弩級の傑作!
重病から生還した34歳の作家シドニーはリハビリのためにブルックリンの街を歩き始め、不思議な文具店で魅入られたようにブルーのノートを買う。そこに書き始めた小説は…。美しく謎めいた妻グレース、中国人の文具店主M・R・チャン、ガーゴイルの石像や物語内の物語『神託の夜』。ニューヨークの闇の中で輝き、弦楽四重奏のように響き合う重層的な愛の物語。魅力溢れる長編小説。
現代アメリカ文学の父と謳われ、「トム・ソーヤー」「ハックルベリイ・フィン」の物語を生み出した冒険児マーク・トウェイン。その名を一躍世に知らしめた表題作「ジム・スマイリーの跳び蛙」をはじめ、生涯にわたって発表した短編小説、エッセイ、コラム記事の中から、トウェインの真骨頂である活気に溢れ、ユーモアと諷刺に満ちた作品を収録する。柴田元幸が厳選した13編の新訳!
前妻と前々妻に追われる元夫。見えない箱に眠りを奪われる女。勝手に喋る舌を止められない老教授。ニセの救世主。「私」は気づけばもう「私」でなく、日常は彼方に遁走するー。奇想天外なのにどこまでも醒め、滑稽でいながら切実な恐怖に満ちた、19の物語。幻想と覚醒が織りなす、驚異の短篇集。
「そもそものはじまりは間違い電話だった」。深夜の電話をきっかけに主人公は私立探偵になり、ニューヨークの街の迷路へ入りこんでゆく。探偵小説を思わせる構成と透明感あふれる音楽的な文章、そして意表をつく鮮やかな物語展開ー。この作品で一躍脚光を浴びた現代アメリカ文学の旗手の記念すべき小説第一作。オースター翻訳の第一人者・柴田元幸氏による新訳、待望の文庫化!
島から出られないリゾート客。スラム街の少女と修道女。第三次世界大戦に携わる宇宙飛行士。娘たちのテレビ出演を塀の中から見守る囚人。大地震の余震に脅える音楽教師ー。様々な現実を生きるアメリカ人たちの姿が、私たちの生の形をも浮き彫りにする。四人の訳者によるみずみずしく鮮明な9篇。1979年から2011年まで。現代アメリカ文学の巨匠、初の短篇集。