著者 : 柴田元幸
典型的な幽霊屋敷ものから、悪趣味ギリギリの犯罪もの、秘術を上手く料理したミステリまで、奇才ゴーリーによる選りすぐりの怪奇小説アンソロジー。古典的名作「猿の手」(W.W.ジェイコブズ)、「信号手」(C.ディケンズ)も収録。すべての作品に「何か」を予想させる、かなり怖いゴーリーの描き下ろし挿絵付き決定版。
ミスター・ボーンズは犬だ。だが彼は知っていた。主人のウィリーの命が長くないことを。彼と別れてしまえば自分は独りぼっちになることを。世界からウィリーを引き算したら、なにが残るというのだろう?放浪の詩人を飼い主に持つ犬の視点から描かれる思い出の日々、捜し物の旅、新たな出会い、別れ。詩人の言う「ティンブクトゥ」とは何なのか?名手が紡ぐ、犬と飼い主の最高の物語。
“ノアの箱舟”は動物たちに占拠され、人類を乗せるかどうかの大投票が決まって、ノア一家は不安な面持ちで舟外で待つはめになり、“バベルの塔”の各階はそれぞれ国に別れ、階の間にしか住めない難民「階段民」が生まれ、“よきサマリア人”主人公“道”は目撃した様々な足、周囲で流された血について語り、“ヨブ”は豊かなときは自己存在を疑い、すべてを無くしたとき「これが本当の自分かも」と考え、争いが嫌いな“ヨナ”は魚の中で一生平和に暮らしたいと願う…。現代の地球に生きるすべてのひとと命に贈る、13編の物語。
犬のミスター・ボーンズと飼い主の詩人ウィリーは初めから気のあう仲間だった。放浪癖のあるウィリーは、一緒に旅をしながらぶっ続けで話をしてくれた。だからミスター・ボーンズは、言葉を理解出来るようになった。そしてウィリーはもう先行き長くないー。出会いの喜び、別れの悲しみ。犬の視点で、世界を描くことを成功させた、オースターの最高傑作ラブ・ストーリー。
うっかり携帯電話を飲み込んだ男。オフィスを丸ごと食べてしまうOL。退屈しのぎにあなたに変わってみる私…。「新潮ケータイ文庫」書下ろし特別作品白昼夢みたいにブラックな78の超短篇。
「およそ文学における最高傑作の一つと言っても過言ではない」とボルヘスに激賞され、オースターが『幽霊たち』を書く際に依拠したとされるホーソーン著『ウェイクフィールド』。ストーリーも時代設定も同じながら、新たな光をあてラテンアメリカ、欧米諸国で絶賛されたベルティ著『ウェイクフィールドの妻』。不可解な心理と存在の不確かさに迫る文豪と鬼才のマスターピース二篇。
俺はけだもの同然、人間の形をしたゼロだった。師匠に拾われ、誰一人なしえなかったことをやってのけた。各地を巡業し、人々を魅了した…。20年代を背景に“空飛ぶ少年”の飛翔と落下の半生を描く、ポール・オースターのアメリカン・ファンタジー。
ニック・ビレーンは、飲んだくれで、競馬が趣味の超ダメ探偵。ところが、そんな彼に仕事が二つ転がり込む。ひとつは死んだはずの作家セリーヌをハリウッドで見かけたから調べてくれという“死の貴婦人”の依頼、もうひとつは“赤い雀”を探してくれという知人の依頼。突然の仕事に大張り切のビレーンは、早速調査にのり出すのだが…。元祖アウトロー作家の遺作ハードボイルド長編。