著者 : 栗本薫
もじゃもじゃ頭にぼんやりした姿。だがひとたび事件が起これば誰よりも鋭く謎を解き、犯人の心に潜む哀しみを見抜く、心優しき名探偵。横溝正史が生んだ日本を代表する探偵が現代作家の手でいま、甦る!金田一耕助に正面から挑んだ快作から、ある事件の「その後」の姿を描いたパラレル作、近田一耕助や金田耕一・錦田一コンビ、金・田・一トリオが活躍する変奏作まで。趣向を凝らした豪華オマージュ競演。
大河ロマン「グイン・サーガ」の続篇を書き継いでいくプロジェクト第3弾。外伝連載第3回「星降る草原」ではスカールとリー・ファの出会いが、「リアード武侠傳奇・伝」ではついにサーガ最大の禁忌が、「宿命の宝冠」では陰謀が引き起こすさらなる悲劇が描かれる。遺稿「スペードの女王」は、伊集院大介シリーズ最新作。「手間のかかる姫君」は、ユーモラスな初期グイン・サーガ外伝。中島梓の内面に迫るエッセイ他。
百巻達成一周年記念限定パンドラ・ボックスに収録された表題作、限定アニメDVDに収録された「前夜」、それぞれ『ハンドブック1・2・3』掲載の「悪魔大祭」「クリスタル・パレス殺人事件」「アレナ通り十番地の精霊」、そして、グイン・サーガ執筆の重要な契機となった「氷惑星の戦士」。作品集未収録作品全六篇を集成し、同シリーズの多様さを一望する、これが、オリジナル・グイン・サーガ最後の巻です。
世界最強の国家として知られるケイロニアの首都サイロンが、黒死病の脅威にさらされ、壊滅の危機にあり、グインの安否も不明だという驚くべき知らせに、ヴァレリウスは苦悩を深める。一方、聖地ヤガに潜入したヨナとスカールは『ミロクの兄弟の家』の虜囚とされてしまう。さらに、フロリーたちの行方を捜しながらヤガの様子を探る彼らは、ミロク教がなにやら不可解な変貌を遂げつつあることに疑念と不安を抱くのだった。
ゴーラ王イシュトヴァーンは、わずかな兵を率いてクリスタルを訪れ、リンダに結婚を迫った。リンダは、すでにアル・ディーンとの婚約が成立しているとしてイシュトヴァーンの要求を退けるが、彼はしばらくクリスタルに滞在することになる。さらにイシュトヴァーンは、フロリーとその息子の居場所をヴァレリウスから聞き出そうとする。ヴァレリウスは密かに対応策を講じるのだが、そこへケイロニアから火急の知らせが入る。
巡礼団全滅という惨事は、ヨナにとって信仰を揺るがすほどの大きな出来事だった。しかしヨナは、任務を続行することにし、スカールら騎馬の民に守られながらヤガを目指す。実はスカールも、戦うミロク教徒の出現に危機感を抱いてヤガ潜入を画策しており、それに際してヨナの力を借りる代わりに彼の護衛を申し出たのだった。一方、イシュトヴァーンは、カメロンの苦悩などおかまいなしに、勝手にパロへと出立してしまった。
ミロク教の内情が変化していることを感じ取ったカメロンは、ブランに、フロリー親子の捜索とヤガの探索を命じた。同様にミロク教の動静に関心を寄せるヴァレリウスの意を受けてヨナは、巡礼団に同行してヤガを目指していた。ダネイン大湿原を舟でわたり、草原地方を通過している途中、突如、巡礼団を騎馬の民が襲った!死を覚悟したヨナだったが、駆けつけたスカールに救われる。しかし生き残ったのはヨナだけだった。
ハゾスは、シルヴィアが生んだ赤子を殺すことができずロベルトに託し、公けには、王女は想像妊娠であったとして、赤子の存在を隠蔽した。そして、彼女の不祥事に関与した者たちを訊問し、事実関係を詳らかにしてゆく。苦悩するグインは、シルヴィアと話し合おうとするのだが、彼女からは憎しみに満ちた罵声を聞くばかりで、ついにグインは訣別の言葉を告げる。そして皇帝アキレウスも大きな決断を迫られようとしていた。
忠実な臣下たちとの再会を喜びつつケイロニアに帰国したグインは、国民から盛大な歓呼の声をもって迎えられた。そしてなによりも、グインの長の不在に心ふさいでいたアキレウス帝の喜びようはひとしおであった。しかしそのような光り輝く歓喜とは裏腹に、サイロンの王妃宮の奥深くで、シルヴィアは要人にあるまじき乱行に耽溺した結果、誰とも知れぬ男の子供を宿し、事態の急を知ったハゾスによる追及のさなか、出産する。
古代機械によって記憶を「修正」されたグインは、自分がケイロニアの豹頭王であることを思い出したが、逆に、パロの内乱前後からの最近の記憶がなくなってしまった。あれほど可愛がっていたスーティのことまで忘れてしまっていた。それはフロリーに、ミロク教の聖地ヤガへの旅立ちを促すようでもあった。そしてグインは忠実な臣下の迎えを得て帰国する。しかし彼を待ち受けていたのは、必ずしも歓喜の声だけではなかった。
タイスを脱出したグイン一行は、それぞれの思いを胸にパロに入った。クリスタルでグインはリンダと再会を果たすが、リンダの喜びとは裏腹に、グインの記憶が戻ることはなく、タイスでの負傷の手当てとともに、ヨナによって催眠術を使った記憶の治療が開始された。ところが、リンダの手がグインに触れたとき“何か”が起こり、二人は通常の人間には見えるはずのない、時空を超えた世界をかいま見る驚異に遭遇するのだった。
ガンダルは豹頭王に看取られ大往生を遂げたが、その最後の反撃にグインも重傷を負う。マーロールはグインに代わり、タイス伯爵への裁きを上申し、タイ・ソンは失脚、マーロールが新たなタイス伯爵となる。そして後夜祭の夜、脱出作戦が始まった。地下水路を通っての脱出行は困難をきわめ、巨大ワニの出現に絶体絶命の窮地に陥ったところをヴァレリウスに救われる。夜が明ける頃、一行は、パロを目ざして、船上にあった。
グインは闘技大会の決勝戦を勝利して、ガンダルとの大闘王決定戦へ臨むことになる。そして祭りの最終日、狂奮のさなか、二人はついに剣を交えた。究極の剣技の衝突は熾烈を極めるが、ガンダルがグインを追い込んだと見えた次の瞬間、グインは肩に深手を負いつつもガンダルの脇腹に剣を深く突き入れていた。瀕死のガンダルはグインの正体を知ることを望み、グインは、自分こそがケイロニアの豹頭王であると告げるのだった。