著者 : 栩木伸明
【アイリッシュ・ブックアワード受賞】 この劇場にはジョナサン・ハーカーもいれば、 ミナという名の幽霊もいる そして劇場支配人ブラム・ストーカーの 胸には妖しい吸血鬼の影が…… 『吸血鬼ドラキュラ』誕生の物語 1800年代後半、のちに『吸血鬼ドラキュラ』を生み出すことになる若きブラム・ストーカーは、人気俳優であり劇場経営者でもあったヘンリー・アーヴィングに雇われ、ライシアム劇場の支配人となっていた。仕事に忙殺される慌ただしい毎日だったが、ストーカーの無意識の中で『吸血鬼ドラキュラ』の小説が形をなしていくにつれ、ドラキュラの存在が影絵の芝居(シャドウプレイ)のように現実に影を落とし始める。劇場では、ジョナサン・ハーカーという名前の男が働き、屋根裏にはミナという名の幽霊が出る……。 アイリッシュ・ブックアワード受賞。ストーカー、アーヴィング、そして一座に加わった名優エレン・テリー。個性的な三人の人生を、虚実織り交ぜたドラマティックな筆致で描く『吸血鬼ドラキュラ』誕生秘話。 ■目次 第一幕 永遠の愛 第二幕 俺たちの身体から血は流れないのか? 第三幕 ブラッドフォード到着 終 章 一九一二年四月十二日金曜日 覚え書き、参考文献、および謝辞 訳注、または『ドラキュラ』への扉 ドラキュラ、シェイクスピア、古きロンドンーー訳者あとがきに代えて
2016年に惜しくも逝去した名匠トレヴァー、最後の短篇集がついに登場。妻の死を受け入れられない男と未亡人暮らしを楽しもうとする女、それぞれの人生が交錯する「ミセス・クラスソープ」、一人の男を愛した幼馴染の女二人が再会する「カフェ・ダライアで」、ストーカー話が被害者と加害者の立場から巧みに描かれる「世間話」、記憶障害をもった絵画修復士が町をさまよい一人の娼婦と出会って生まれる奇跡「ジョットの天使たち」など、ストーリーテリングの妙味と人間観察の精細さが頂点に達した全10篇収録。 ピアノ教師の生徒 足の不自由な男 カフェ・ダライアで ミスター・レーヴンズウッドを丸め込もうとする話 ミセス・クラスソープ 身元不明の娘 世間話 ジョットの天使たち 冬の牧歌 女たち 訳者あとがき
夫に先立たれた専業主婦の三年間。「平凡な人生」のおどろくべき輝きーー。夫を突然亡くしたアイルランドの専業主婦、ノーラ、四十六歳。子供たちを抱え、二十年ぶりに元の職場に再就職したノーラが、同僚の嫌がらせにもめげず、娘たち息子たちとぶつかりながらも、ゆっくりと自己を立て直し、生きる歓びを発見していくさまを丹念に描く。アイルランドを代表する作家が自身の母を投影した自伝的小説。
施設に収容されたメアリー・ルイーズの耳には、今もロシアの小説を朗読する青年の声が聞こえているーー夫がいながら生涯秘められた恋の記憶に生きる女の物語「ツルゲーネフを読む声」。ミラノへ向かう列車内で爆弾テロに遭った小説家ミセス・デラハンティは同じ被害者の老人と青年と少女を自宅に招き共同生活を始める。やがて彼女は心に傷を負った人々の中に驚くべき真相を見いだしていく……「ウンブリアのわたしの家」。ともに熟年の女性を主人公にした、深い感銘と静かな衝撃をもたらす傑作中篇2作を収録。
めくるめく神秘と幻想に満ちたアイルランドの妖精世界へ。ノーベル賞詩人イェイツ(1865-1939)による世紀末の連作「赤毛のハンラハン物語」を初邦訳。同時代の詩集『葦間の風』から物語に響き合う精選18篇を新訳。
母マリアによるもう一つのイエス伝。カナの婚礼で、ゴルゴタの丘で、マリアは何を見たか。「聖母」ではなく人の子の「母」としてのマリアを描くブッカー賞候補となった美しく果敢な独白小説。