著者 : 桂望実
裁判で執行猶予がついた判決が出たときに、被害者や遺族が望めば、加害者の反省具合をチェックし、刑務所に入れるかどうかを決定できる制度「執行猶予被害者・遺族預かり制度」が始まって38年がたっていた。30年前、その制度の担当係官だった経験があり、今は大学の講師として教壇に立つ井川は、「チャラン」と呼ばれるいい加減な上司とともに、野球部の練習中に息子を亡くし、コーチを訴えた家族、夫の自殺の手助けをした男を憎む妻など、遺族たちと接していた当時のことを思い出していた。執行猶予付きの判決が出たとき、もし被害者や遺族が、加害者を刑務所に入れるかどうか決める権利を持ったら…。人を憎むこと、許すこととは何かを大胆な設定で描く、感動の長編小説。
初対面の相手でも、たちまちするりとその懐に入ってしまう。小谷夏子は男をその気にさせる天才だ。彼女との未来を夢見た男は、いつの間にか自らお金を出してしまうのだ。そんな生来の詐欺師を遠縁に持つ弁護士・石田徹子は、夏子がトラブルを起こすたび、解決に引っぱり出されるのだが…。対照的な二人の女性の人生を鮮やかに描き出し、豊かな感動をよぶ傑作長編。
19歳で視力を失った、潔癖症で完璧主義な妹・凛子。女にモテるのにフラれてばかりの、無遠慮で口喧しい兄・真司。父親が謎の失踪をとげ、2人きりの生活が始まった。近くにいると相手に合わせることさえ不満でも、遠くにいけばいつの間にか無事を祈り、あの人のために変わりたいと願ってしまうー複雑で決して派手じゃない、だけど確かな愛しさを描いた、兄と妹の12年間の軌跡。
長距離ランナーとして恵まれた肉体を持つだけでなく、そのための努力も人一倍してきた天才、岡崎優。同じ陸上部の仲間に対し協調性も興味もなく、大学の箱根駅伝は通過点に過ぎず、目標はオリンピックだった。しかし突然の兄の死をきっかけに家族関係が壊れ、ある秘密を知った優は重たい決断を迫られるが…。
町村合併で町のお荷物になっている旧川西村。後輩の自殺により、華やかな都会の生活を捨て孤独な田舎暮らしを選んだ元コピーライターは村を愛する、熱心でちょっと頼りない地域活性課職員に強引に勧誘されて、町おこしに乗り出す羽目に…過疎、高齢化、外国人労働者ー問題の村が、息を吹きかえす。
19歳で途中失明して夢を失った凛子。向日葵のようだった母の死に続き、寡黙だけど優しい漫画家の父までいきなり「消えて」しまった。残ったのは、自分のことに精一杯で気配りの足りない兄・真司だけ。その日から「世界中の誰よりも気が合わない二人」だけの生活が始まった!一番近くにいても誰より遠い二人の未来に待っているのは…。家族の愛がぎっしり詰まったハートフルな長編小説。