著者 : 森晶麿
貧困のどん底から、顔に深い傷跡を持つ男キムラに救われた絢野クチルは、政治家を目指して大学に通い、夜は「ピロウボーイ」として女たちと関係を持つ。「シェイクスピアを読む女」「バッハしか愛せない女」「ドヌーヴに似た女」「リキテンスタインを待つ女」女たちはみな問題を抱えているが、クチルとの関わりのなかで立ち直っていく。一方、クチルの部屋には、謎の同級生知紅が押しかけて居候となり、クチルの帰りを待っている。
戸山大学に入学した坂月蝶子は痩身の文学青年・神酒島先輩から声をかけられ、“スイ研”-酔理研究会に入ることに。そこで目にしたのは、数々の酒と恋と、日常の謎。新歓コンパや野球交流戦、月愛でる学園祭に雪の冬合宿と、移ろう四季の中で出合った謎を神酒島はするすると解いていく。酒に酔えない体質の蝶子だが、神酒島が読み解く謎の理は不思議な酔いの余韻を残していき…。切なくてじれったい、青春恋愛ミステリ!
黒猫の渡仏から半年後。付き人は博士論文に挑む日々のなかで、作家・綿谷埜枝の短篇に出会う。ポオ「アッシャー家の崩壊」の構造を持つその短篇を研究するには、消えた薔薇の謎を解く必要があった。一方、パリで研究を始めた黒猫は恩師の孫娘マチルドから、亡き父がよく聴いていた音楽家の音色が変わった原因を調べてほしいと頼まれる。ふたりは初めてべつべつに推理するが、そこには意外なつながりが…シリーズ第3弾。
四国と淡路島の境目にある“恋路ヶ島サービスエリア”。ここの売り子になると、一年以内に恋人からプロポーズされるという伝説がある。そんな伝説をすこし信じている恋路ヶ島出身の理代子は、自宅アパートとバイト先を往復する平凡な日常を送っていた。ある夜、謎の新入り清掃士マキノの「静かな夜です。気をつけて」という一言から、理代子は騒動、いや“獣たち”に巻き込まれていく。アガサ・クリスティー賞作家が創り出した、ポップでちょっとシリアスな長編ミステリ。
18年前に死んだはずの画家から届いた絵葉書が封印された町の過去を解き明かすーイクメンでカリスマ学芸員のパパと保育園児のかえでちゃん。寂れゆく町に引っ越してきた、オアシスのような父娘コンビが、ピカソ、マティス、ゴーギャン、シャガールらの名画解釈をもとに、夭折の天才画家が絵に込めた想いを読み解き、その最期の真相に迫る!
仏滞在中の黒猫は、ラテスト教授からの思想継承のため、イタリアへある塔の調査に向かう。建築家が亡くなり、設計図すらないなかでなぜか建築が続いているという“遡行する塔”。だが塔が建つ屋敷の主ヒヌマは、塔は神の領域にあるだけだと言う。一方、学会に出席するため渡英した付き人は、滞在先で突然奇妙な映画への出演を打診され…。離ればなれのまま、ふたりの新たな物語が始まるー。人気シリーズ第5弾!
「第一回晴雲ラブンガク大賞」を受賞して、華々しく文壇にデビューした恋愛小説家・夢宮宇多。その勢いを買われてか、恋愛小説のようにロマンティックな体験談を持つ女性を実際に訪ねて話を聞く、というネットテレビ番組のホスト役の仕事が入ってくる。担当編集・井上月子の説得で仕事を受けることとなったのだが、そこで出会った女性は、まさに現代のシンデレラのようなエピソードを持つ女性であった。しかし、夢宮宇多は話を聞くうちにエピソードの隠された真実に気づいていく…。その一方で、夢宮宇多の受賞作は亡くなった彼の幼馴染みが書いたのではないか、という疑惑が浮上し、物語は意外な展開を見せはじめるがー。アガサ・クリスティー賞受賞の鬼才が放つ、連作恋愛ミステリ!!
たがいに微妙な距離感を継続中の黒猫と付き人は、バレエ『ジゼル』を鑑賞中にダンサーが倒れるハプニングに遭遇する。五年前にも同じ舞台、同じ演目でバレリーナが死亡する事件が起きていた。付き人はガラスアーティストの塔馬から聞いた黒猫の過去と事件との関連を気にするが、黒猫は何も語らない…ふたつの事件の真相、そして最終講義とはークリスティー賞受賞作『黒猫の遊歩あるいは美学講義』に続くシリーズ第2弾。
『ここは推理研究会ですよね?』『いかにも、ここは酔理研究会だ』-それが神酒島先輩と、私の世界を変えるサークルとの出会いだった。憧れの“スイ研”で待っていたのは、果てなき酒宴と“酔い”の理。そして不思議な瞳を持つ幹事長・神酒島先輩でー。共感度抜群!!名無しの大学生たちの青春歳時記!
大学の美学科に在籍する「私」は卒業論文と進路に悩む日々。そんなとき、唐草教授のゼミでひとりの男子学生と出会う。なぜか黒いスーツを着ている彼は、本を読み耽るばかりでいつも無愛想。しかし、ある事件をきっかけに彼から美学とポオに関する“卒論指導”を受けて以降、その猫のような論理の歩みと鋭い観察眼に気づきはじめ…『黒猫の遊歩あるいは美学講義』の三年前、黒猫と付き人の出会いを描くシリーズ学生篇。
名探偵だって人間だ。時には恋することもあるー小学生ながらもバリバリの“理系女子”理緒が遭遇した謎と、ちいさな恋(「浮遊惑星ホームバウンド」)骨董店を営む兄と検死官の弟が、ある“遺品”の謎を解く(「ローウェル骨董店の事件簿 秘密の小箱」)事故で演奏できなくなったチェリストは、時空を超えたある場所で、天上の音を演奏する少年と出会う(「空蜘蛛」)など、新鋭作家たちが描く謎とキャラクターの饗宴!!
でたらめな地図に隠された意味、しゃべる壁に隔てられた青年、川に振りかけられた香水、現れた住職と失踪した研究者、頭蓋骨を探す映画監督、楽器なしで奏でられる音楽…日常に潜む、幻想と現実が交差する瞬間。美学・芸術学を専門とする若き大学教授、通称「黒猫」と、彼の「付き人」をつとめる大学院生は、美学とエドガー・アラン・ポオの講義を通してその謎を解き明かしてゆく。第1回アガサ・クリスティー賞受賞作。