著者 : 橘明美
夫を亡くして独りで暮らすマティルド、63歳。殺し屋である。戦中は冷血の闘士として知られ、戦後は凄腕の殺し屋として仕事を請けてきた。だが彼女には認知症が少しずつ忍び寄りつつあった。それに気づいたのは、彼女に殺しを依頼している戦中からの同志アンリ。マティルドの殺しが必要以上に過激になっていたのだ。一方マティルドの中では、かつて抱いていたアンリへの恋心が甦り、暴走は加速してゆく!最悪の事態が雪ダルマ式にふくれあがる!マティルドを愛していたアンリは、そして事件を追う真面目な刑事ヴァシリエフは、彼女を止められるのか?現実の人生では理不尽なことが次々起こるのに、なぜ小説家は手加減しなければならない?と言い放つ鬼才ルメートル。その最後のミステリーは、アタマからラストまで、ひたすら加速する「最悪と意地悪のスパイラル」。その果てに待つラストのサプライズは、笑ってしまいそうに衝撃的で電撃的で残酷で、まるで私たちの運命のようなのだ。
インカ帝国がスペインにあっけなく征服されてしまったのは、彼らが鉄、銃、馬、そして病原菌に対する免疫をもっていなかったから…と言われている。しかし、もしも、インカの人々がそれらをもっていたとしたら?そしてスペインがインカ帝国を、ではなく、インカ帝国がスペインを征服したのだとしたら、世界はどう変わっていただろうか?『HHhH-プラハ、1942年』と『言語の七番目の機能』で世界の読書人を驚倒させた著者が挑んだ、大胆かつ魅力溢れる歴史改変小説。常に事実とフィクションについて考え続けるローラン・ビネならではの傑作。アカデミー・フランセーズ小説大賞受賞。
母とともに小さな村に暮らす十二歳の少年アントワーヌは、隣家の六歳の男の子を殺した。森の中にアントワーヌが作ったツリーハウスの下で。殺すつもりなんてなかった。いつも一緒に遊んでいた犬が死んでしまった悲しみと、心の中に積み重なってきた孤独と失望とが、一瞬の激情になってしまっただけだった。でも幼い子供は死んでしまった。死体を隠して家に戻ったアントワーヌ。だが子供の失踪に村は揺れる。警察もメディアもやってくる。やがてあの森の捜索がはじまるだろう。そしてアントワーヌは気づいた。いつも身につけていた腕時計がなくなっていることに。もしあれが死体とともに見つかってしまったら…。じわりじわりとアントワーヌに恐怖が迫る。十二歳の利発な少年による完全犯罪は成るのか?殺人の朝から、村に嵐がやってくるまでの三日間ーその代償がアントワーヌの人生を狂わせる。『その女アレックス』『監禁面接』などのミステリーで世界的人気を誇り、フランス最大の文学賞ゴンクール賞を受賞した鬼才が、罪と罰と恐怖で一人の少年を追いつめる。先読み不可能、鋭すぎる筆致で描く犯罪文学の傑作。
パリで爆破事件が発生した。直後、警察に出頭した青年は、爆弾はあと6つ仕掛けられていると告げ、金を要求する。カミーユ・ヴェルーヴェン警部は、青年の真の狙いは他にあるとにらむが…。『その女アレックス』のカミーユ警部が一度だけの帰還を果たす。残酷にして意外、壮絶にして美しき終幕まで一気読み必至。
34歳独身のドイツ人女性ヒルデガルトは、ある朝、新聞の求縁広告の一つに目を奪われた。「当方大資産家、良縁求む。願わくはハンブルク出身、未婚、だが世間知らずでなく、身寄りもなく…」すべてはここから始まった。知性と打算に裏打ちされた手紙が功を奏し、大富豪の妻の座は目前だった。ミステリ史上に燦然と輝く、精確無比に組み立てられた完全犯罪の物語。新訳決定版!
重役たちを襲撃、監禁、尋問せよ。どんづまり人生の一発逆転にかける失業者アラン、57歳。企業の人事部長だったアラン、57歳。リストラで職を追われ、失業4年目。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今はアルバイトで糊口をしのいでいた。だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが人材派遣会社の社長じきじきに告げられた最終試験の内容は異様なものだった。-就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ。重役たちの危機管理能力と、採用候補者の力量の双方を同時に査定するというのだ。遂にバイトも失ったアランは試験に臨むことを決め、企業人としての経験と、人生どんづまりの仲間たちの協力も得て、就職先企業の徹底調査を開始した。そしてその日がやってきた。テロリストを演じる役者たちと他の就職希望者とともに、アランは重役室を襲撃する!だが、ここまでで物語はまだ3分の1。ぶっとんだアイデア、次々に発生する予想外のイベント。「そのまえ」「そのとき」「そのあと」の三部構成に読者は翻弄される。残酷描写を封印したルメートルが知的たくらみとブラックな世界観で贈るノンストップ再就職サスペンス!
冒険に繰り出した、楽天的なリュドヴィックと慎重派のルイーズ。南極近くの無人島の美しい絶景は若い夫婦を魅了した。突然の嵐が、彼らの船と希望を奪い去るまではー。ペンギンを捕獲して腹を満たす極限の生活が、人間の身体と心を蝕む。ふたりは、お互いの信頼の絆を失っていく…。女性で初めてレースにおける単独ヨット世界一周を果たした冒険家が描く、驚異のサバイバル小説。
デビュー作が大ヒットして一躍ベストセラー作家となった新人マーカスは第2作の執筆に行き詰まっていた。そんなとき、頼りにしていた大学の恩師で国民的作家のハリー・クバートが、少女殺害事件の容疑者となる。33年前の失踪した美少女ノラの白骨死体が彼の家の庭から発見されたのだ!マーカスは、師の無実を証明すべく事件について調べはじめる。全欧州で200万部のメガセラーとなった若きスイス人作家ディケールの傑作ミステリ。
ハリー・クバートの代表作『悪の起源』は、34歳のハリーと15歳の少女ノラの愛を下敷きにしていた!少女殺しの嫌疑をかけられたハリーの無実を証明すべく青年作家マーカスは独自の調査をもとに『ハリー・クバート事件』を書き上げ、再びベストセラー作家となったが…。次々に判明する新事実、どんでん返しに次ぐどんでん返し…。全世界32か国以上で翻訳出版され、眠れぬ夜を過ごす人々を続出させたスイス発のメガヒット・ミステリ。