著者 : 水月遙
ポリーは実の父をさがして、ダーリアを訪れていた。しかし突然、空港で身柄を拘束され、王宮へ連行される。そこに現れた、民から英雄とあがめられる国王ラシャドは、おごそかな声でポリーに妻になるよう命じた。その言葉を受け入れたのはラシャドの鷹のような目と威厳に、恐怖とは違う胸の高鳴りを覚えたからだ…愛の芽生えを。ポリーは気づいてもいなかった。非情なラシャドは国に平和をもたらすため、彼女を利用するつもりでいたのだ。亡き王妃の代わりに、子供を産んでもらうことで。
ついさっき出会ったばかりの男性とイタリアへ?妹の付き添いを住み込みでやらないかというダニーロの申し出に、テスは耳を疑った。ロンドンで小学校教師をしているテスは、顔見知りの男からの度重なるストーカー行為に悩まされていた。今日は夜道でその男に拉致されそうになっていたところを、偶然通りかかったダニーロが危機一髪で助けてくれたのだった。夏休みに外国へ避難するのは、最良の方法には思えるけれど…。迷った末、テスはトスカーナ地方にあるダニーロの屋敷を訪れた。愛を拒む大富豪に身も心も捧げることになるとは夢にも思わずに。
会社を立ちあげたばかりのアレクサンドラは、巨大企業デカンポ社から新商品の仕事を打診されて喜んだものの、一方で不安も隠しきれなかった。じつはこの企画の責任者である副社長ゲイブは、アレクサンドラの実姉の夫の弟で、すでに面識があった。彼はなぜか初めから私に手厳しい。一緒に仕事をする気はあるの?案の定、ゲイブから挑発的に扱われたアレクサンドラは傷つき、溢れる感情のまま彼に詰め寄るが、それは大きなミスだった。次の瞬間、彼女は力強い腕に抱かれ、問答無用で唇を奪われて…。
アナは旅の途中で所持金を盗まれ、働き口をさがしていた。ようやくある屋敷の家庭教師の職を見つけ、面接に行く途中、アナは海で溺れた少女を救い、そのまま意識を失ってしまう。気づくと、彼女は豪奢な屋敷で寝かされていた。そばで当主のリチャードが、娘の命の恩人である彼女に冷ややかな目を向けている。アナは、はっと気づいた。彼とは先日、偶然出会っている。しかも、キスまで奪われて…。この人は、私が愛人志願で現れたとでも思いこんでいるんだわ。なんて傲慢なの!私は家庭教師になりたいだけなのに。
私の10年間は無駄だった。クリオはニューヨークのパーティで婚約者の浮気を目撃し、人生何度目かの挫折を味わっていた。そこへ現れたのが、非情で知られる大富豪ステファンだ。彼が私にやさしくするのは、大学時代の友人だから?それとも、“略奪専門のプレイボーイ”の標的として?けれど、クリオは藁にもすがる思いで彼に助けを求めた。必死になりすぎていた彼女は、なにも気づいていなかったのだ。ステファンの目に復讐の光がちらついているのも。クリオに値段をつけ、婚約者から買おうとしていることも。
砂漠の国カリスタで、エレニは夕日が沈む地平線を眺めていた。いつもは横暴な父親も、今日はひどく上機嫌だ。これから高貴な身分の客人が来て、夜を過ごすからだ。どうせ酔った父親の戯言よ…と思っていると、美しい馬を駆って、たくましい男性が突如彼女の前に現れた。この国では知らぬ者などいない、プリンス・カリクだ。みすぼらしいあばら家を見下したように見まわしている。だが飲み物を差し出すエレニを見て、彼はひどく驚いたようだった。そう、彼女はカリスタの伝説にうたわれる緑の瞳の持ち主だったのだ。プレイボーイと名高いプリンスに見つめられ、エレニの頬は紅潮した。傲慢なシークの、身勝手な寵愛。プリンスに連れ去られ、宮殿の贅沢なベッドで愛撫され、身も心も蕩かされるエレニ。禁断の宮殿ロマネスク、『愛に惑うプリンス』の関連作。
ベスは双子の妹の頼みに驚愕した。妹は実業家マーコスの秘書として高給を得ているが、社内不倫のあげく妊娠したうえ、出産が終わるまでベスに身代わりを務めてほしいというのだ。話を聞くかぎり、マーコスは社内恋愛すら許さないワンマンな社長だ。とはいえ、ただ一人の妹のためにできるだけのことはしてあげたい。妹になりすましたベスは、緊張しながら出勤した。そして初めてボスであるマーコスと対面し、息が止まりそうになった。傲慢さをにじませながらも、荒削りさがセクシーな男性。ぽうっと立ちつくすベスは、そのときは想像すらしなかったーマーコスと恋に落ち、運命の皮肉さを思い知らされることになるとは。