著者 : 水月遙
パリのセーヌ川にかかる橋の上で、アナは震えていた。昨日会ったばかりの異国の王に嫁いで、困窮する国と父王を救う。でも前の婚約で、私は女として役立たずだと言われた。ベッドをともにできず、ののしられた心の傷はまだ残っている。同じ恥はかけないと逃げだしたのは、本当は結婚したくないから?そこへ一人の男性が追いかけてきて、アナを捕らえた。スキャンダルにはなるけれど、もうほかに方法はない。アナはどきどきしながら、精悍でハンサムな彼に唇を押しつけた。その男性が結婚するはずだった王の弟、ザヒールとも知らず…。
「欠点はあるが、君は留置場の外にいるほうが役に立つ」詐欺容疑で拘束された父親に会うため砂漠の国を訪れたエズミは、あまりにもハンサムで傲慢な国王ザイードの言葉に耳を疑った。父親を助けたければザイードの王宮にとどまり、ソーシャルワーカーの経験を活かして彼の下で働けというのだ。反発するエズミだったが、目の前で父親が病に倒れた瞬間、なんでもするから助けてほしいと思わず懇願していた。ザイードの強烈な魅力を前になすすべもなく純潔を捧げ、異国の世継ぎを身ごもることになるとは夢にも思わずに。
イタリアの悪魔との偶然の再会に、ベスは血の気が引いた。 この無慈悲な弁護士ダンテのせいで無実の罪を着せられて、 まだ10代だったベスは、奈落の底へと突き落とされたのだ。 冷たいほどに端整な、その憎い美貌を再び見ることになるとは。 だが、彼女を忘れているらしいダンテに情熱的に迫られて、 しだいに拒みきれなくなり、ついにベスは一夜を明かしてしまう。 忌まわしい、あの過去の呪縛から逃れたいと願っていたのにーー しかも2週間を過ぎて、突然ダンテが現れ、詰め寄ってきたのだ。 「答えてくれ、妊娠したのか、していないのか」
幼くして母と別れたルーシーは、一人で苦労しつつ育った。今はウエイトレスをしているけれど、稼げるお金はわずかだ。その日、彼女が緊張しながらコーヒーを運んだのは、かつての恋人、ギリシアでも有数の大富豪イアスだった。だが彼の目は、ルーシーへの怒りと軽蔑で燃えていた。ひょっとして…イアスは真実を知ったのだろうか?2年前、彼に捨てられたあと妊娠に気づき、一人出産したことを。悲しい衝撃とともに、ルーシーは悟った。つまり今後、私はイアスから逃げられないのだ。娘を取りあげられたくなければ。
両親のいないピクシーは、弟が作った借金に苦しめられていた。車を売り、安フラットに越し、生活費を切りつめに切りつめても利子を払うのがやっとで、返済の終わりは見えない。そんなとき、ピクシーの前に突然現れたのがアポロだった。女性関係が2週間続かないことで有名なギリシア人の億万長者は、遺言によって、結婚し子供をつくる必要があるという。彼は傲慢にも、ピクシーにこう言い放った。「借金があり、弟のために苦労する君は、金で買える理想的な妻になれる」と。彼女に選択肢はなかった。今までに一度も男性経験がなくても。
ポリーは実の父をさがして、ダーリアを訪れていた。しかし突然、空港で身柄を拘束され、王宮へ連行される。そこに現れた、民から英雄とあがめられる国王ラシャドは、おごそかな声でポリーに妻になるよう命じた。その言葉を受け入れたのはラシャドの鷹のような目と威厳に、恐怖とは違う胸の高鳴りを覚えたからだ…愛の芽生えを。ポリーは気づいてもいなかった。非情なラシャドは国に平和をもたらすため、彼女を利用するつもりでいたのだ。亡き王妃の代わりに、子供を産んでもらうことで。
ついさっき出会ったばかりの男性とイタリアへ?妹の付き添いを住み込みでやらないかというダニーロの申し出に、テスは耳を疑った。ロンドンで小学校教師をしているテスは、顔見知りの男からの度重なるストーカー行為に悩まされていた。今日は夜道でその男に拉致されそうになっていたところを、偶然通りかかったダニーロが危機一髪で助けてくれたのだった。夏休みに外国へ避難するのは、最良の方法には思えるけれど…。迷った末、テスはトスカーナ地方にあるダニーロの屋敷を訪れた。愛を拒む大富豪に身も心も捧げることになるとは夢にも思わずに。
情事の相手にしかならない女── どんな男性も私の愛は求めない。 会社を立ちあげたばかりのアレクサンドラは、 巨大企業デカンポ社から新商品の仕事を打診されて喜んだものの、 一方で不安も隠しきれなかった。 じつはこの企画の責任者である副社長ゲイブは、 アレクサンドラの実姉の夫の弟で、すでに面識があった。 彼はなぜか初めから私に手厳しい。一緒に仕事をする気はあるの? 案の定、ゲイブから挑発的に扱われたアレクサンドラは傷つき、 溢れる感情のまま彼に詰め寄るが、それは大きなミスだった。 次の瞬間、彼女は力強い腕に抱かれ、問答無用で唇を奪われて……。 R-3196『仕組まれた復縁』に続く、期待の新作家が描く愛憎渦巻くデカンポ家のロマンスをお楽しみください。互いの過去を知るうちに、ぶつかってばかりいたふたりの関係に変化が……。
アナは旅の途中で所持金を盗まれ、働き口をさがしていた。ようやくある屋敷の家庭教師の職を見つけ、面接に行く途中、アナは海で溺れた少女を救い、そのまま意識を失ってしまう。気づくと、彼女は豪奢な屋敷で寝かされていた。そばで当主のリチャードが、娘の命の恩人である彼女に冷ややかな目を向けている。アナは、はっと気づいた。彼とは先日、偶然出会っている。しかも、キスまで奪われて……。この人は、私が愛人志願で現れたとでも思いこんでいるんだわ。なんて傲慢なの! 私は家庭教師になりたいだけなのに。
私の10年間は無駄だった。クリオはニューヨークのパーティで婚約者の浮気を目撃し、人生何度目かの挫折を味わっていた。そこへ現れたのが、非情で知られる大富豪ステファンだ。彼が私にやさしくするのは、大学時代の友人だから?それとも、“略奪専門のプレイボーイ”の標的として?けれど、クリオは藁にもすがる思いで彼に助けを求めた。必死になりすぎていた彼女は、なにも気づいていなかったのだ。ステファンの目に復讐の光がちらついているのも。クリオに値段をつけ、婚約者から買おうとしていることも。
砂漠の国カリスタで、エレニは夕日が沈む地平線を眺めていた。いつもは横暴な父親も、今日はひどく上機嫌だ。これから高貴な身分の客人が来て、夜を過ごすからだ。どうせ酔った父親の戯言よ…と思っていると、美しい馬を駆って、たくましい男性が突如彼女の前に現れた。この国では知らぬ者などいない、プリンス・カリクだ。みすぼらしいあばら家を見下したように見まわしている。だが飲み物を差し出すエレニを見て、彼はひどく驚いたようだった。そう、彼女はカリスタの伝説にうたわれる緑の瞳の持ち主だったのだ。プレイボーイと名高いプリンスに見つめられ、エレニの頬は紅潮した。傲慢なシークの、身勝手な寵愛。プリンスに連れ去られ、宮殿の贅沢なベッドで愛撫され、身も心も蕩かされるエレニ。禁断の宮殿ロマネスク、『愛に惑うプリンス』の関連作。
ベスは双子の妹の頼みに驚愕した。妹は実業家マーコスの秘書として高給を得ているが、社内不倫のあげく妊娠したうえ、出産が終わるまでベスに身代わりを務めてほしいというのだ。話を聞くかぎり、マーコスは社内恋愛すら許さないワンマンな社長だ。とはいえ、ただ一人の妹のためにできるだけのことはしてあげたい。妹になりすましたベスは、緊張しながら出勤した。そして初めてボスであるマーコスと対面し、息が止まりそうになった。傲慢さをにじませながらも、荒削りさがセクシーな男性。ぽうっと立ちつくすベスは、そのときは想像すらしなかったーマーコスと恋に落ち、運命の皮肉さを思い知らされることになるとは。