著者 : 水野麗子
本を読みすぎたり、意見を持ったりするのはレディらしくないと、好奇心を抑え込まれて育てられた侯爵令嬢クララ。ロンドン一美しいと称えられる彼女だが、自分の表面しか見ない男性たちにも辟易としていた。結婚に興味がもてず、貧困女性向けの学校の支援に力をそそぐなか、ある生徒から弟がギャング団に誘い込まれたと相談される。クララが助けを求めたのは弁護士ラドフォード。多忙を理由に一度は断った彼だが、一人でギャング団に乗り込みかねない勢いのクララに押され、引き受けてしまう。冷静であろうとつとめてきた彼は自由闊達な彼女に魅了され、隠していた情熱や優しさを解放していく。クララもまた、真摯に彼女に向き合ってくれるラドフォードに惹かれてゆき…。2017年RITA賞最終ノミネート作、ロレッタ・チェイスの新境地!
両親を亡くし劇団で育てられた、貴族の血をひく女優のマデリン。誰とも恋愛をしたことがないというのに、彼女はある事情から、自分を愛人にする権利をオークションにかけると宣言した。すると見知らぬ貴婦人が訪ねてきて、伯爵家の次男であるネイサンに入札させるので、彼を選んでほしいと言い、とまどうマデリンに赤い靴を渡す。独立し貿易商として成功しているネイサンは、兄の急死により家を継ぐことを強いられていた。父と確執のある彼は、反対される結婚をして抵抗しようと考え、マデリンに愛人契約ではなく結婚を持ちかける。条件は貴族に嫌われるような女性を演じることと、今年の社交シーズンだけ共に過ごし、あとは別々に暮らすこと。こうして契約結婚をした二人だが、お互いのことが気になり…“シンデレラの赤い靴”シリーズ第5弾!
准男爵の令嬢ベラは、考古学者である父親に連れられて、中近東を周遊して育った。父が病に倒れ、この世を去ったのは1年前。やっとの思いで英国へ帰郷し、弟妹を学校に通わせるためにお金を稼がねばと職さがしをするも、うまくいかない。そんなある日、亡き父の古い知り合いだという貴婦人レディ・ミルフォードが、ベラの家を訪ねてくる。そして父の考古学仲間の息子エイルウィン公爵マイルズがエジプト学者になっており、資料を整理するキュレーターを探しているので、志願してはどうかと勧め、美しい赤い靴を持たせてくれた。こうしてロンドンの公爵邸を訪ねてきたベラを、最初は追い返そうとしたマイルズ。しかし幼い日に彼女と出会っていたことを思い出し、まっすぐに自分を見つめてくるベラの瞳に強く引きつけられて…
エリザベスは亡き夫の莫大な借金を抱え、人知れず窮地に立たされていた。愛情深く責任感の強い彼女は、領民や使用人の生活を守るため、裕福な貴族との再婚をいったんは決心したが、求婚者に裏切られる。打ちひしがれた矢先に、目の前に現われたのは医師マイケル。上流階級の男性にはない思いやりと行動力に溢れる彼にエリザベスは心惹かれるが、今の窮状を脱するには彼と一緒の未来を夢見るわけにはいかないと、自分の想いから目をそらそうとする。一方でマイケルも、エリザベスの目を見張るような美しさ以上に、身分のわけ隔てなく見せる優しさや機知に富んだ会話に魅了されていた。実は、彼は公爵家の次男で、兄とのいざこざからロンドンを離れ、身分を隠して暮らしているのだがー募る想いとはうらはらに、抱えた秘密のせいで素直になれない二人は…。