著者 : 永井淳
転地療養のため西インド諸島を訪れたマープル。一週間は何事もなく穏やかに過ぎていった。しかし、まもなく彼女を相手に懐古談をしていた少佐が死体となって発見される。以前から少佐は何かを憂いていたようなのだが、いったい何が起こったというのか?美しい風景を舞台に老嬢ミス・マープルが事件の謎に挑む。
CBAネットワークの看板番組〈ナショナル・イヴニング・ニュース〉の人気キャスター、スローンの家族3人が誘拐された。犯人からは何の反応も要求もない。一体何のために、誰が?どうして本人ではなくて、家族か?人命尊重と報道義務のジレンマに苦しむCBA。しかもスローンはかつて、人質を犠牲にしてもテロリズムに屈すべきではないという強硬論を唱えたことがあった…。
CBAはFBI、警察当局と別に独自の捜査班を組織し、その結果を毎日報道することにした。リーダーは、かつてスローンと、誘拐されているジェシカの愛を争ったこともある敏腕取材記者パートリッジ。彼の献身的な努力と、テレビ局の頭脳と取材能力の限りを尽した調査は実を結び、犯人像が少しずつ見えてくる…。報道機関の社会的使命と企業論理の対立を巧みにとり上げた人間ドラマ。
本書は、情報化時代の花形企業テレビ局、なかでも各テレビ局の顔であるニュース番組の制作現場を取り上げた長編小説である。劈頭、航空機事故のニュースの第一報が、CBAテレビジョン・ニュース社の本部に到着するあわただしい現場の雰囲気から一気に読者はテレビ局の内部へと引きずり込まれていく。
CBAのニュース番組《ナショナル・イヴニング・ニュース》のメイン・キャスター、クローフォード・スローンの家族が何者かの手で誘拐された。犯人側からはなんの反応も要求もない。一体なんのために誰が誘拐したのか?CBAテレビはニュースを報道する義務と人命尊重という二つの立場をどう調整したらいいのか?結局、テレビ局はFBI、警察当局とは違う独自の捜査班を組織し、犯人とニュースを追いはじめる。誘拐事件を軸に展開するテレビ・ニュース界の内幕。
大手製薬会社で唯一の女性プロパーとして働くシーリアは、医者たちに新薬を紹介するこの仕事に情熱を注いでいた。利潤追求のみを目的とした新薬開発競争を目にし、男性社会が持つ様々な偏見や障害と闘ううちにも、彼女の健全な良心はしぼむことがなかった。アメリカの製薬業界で、鋭い直観力と強烈な野心を武器に成功していく1人の女性と、その周辺に展開される多彩な人間ドラマ。
社長となった盟友サムをはじめ、シーリアの確かな判断力に信頼を寄せる者の数も社内に増えてきた。社は、画期的なつわり防止薬モンテインに社運を賭けていた。処方薬販売部長としてその販売作戦の指揮をとることになったシーリアに、医師の夫は、妊婦への投薬に対する疑念を表わした。-企業における利潤追求と社会的使命の調和という、永遠のテーマを追求する、著者の会心作。
1906年、ポーランドの片田舎で私生児として生れたヴワデクは、極貧の猟師に引きとられた。時を同じくしてボストンの名門ケイン家に生れたウィリアムは、祝福された人生を歩み始めた。ドイツの侵攻で祖国も肉親も失ったヴワデクは、数奇な放浪の旅の果て、無一文の移民としてアメリカに辿りつき、アベルと改名した。「三作目が勝負」と明言した著者が、満を持して発表する大作。
ずば抜けた商才と頑張りで社会の底辺からのし上がったアベルは、全米に拡がるホテル・チェーンを作りあげた。一方、出世コースを突き進むケインは、その確かな判断力を認められて大銀行頭取の地位をつかんだ。ホテル王と銀行家、ポーランド移民と名門出のエリートーいずれも典型的といえるふたりのアメリカ人の、皮肉な出会いと成功を通して、20世紀のアメリカ史が甦る大ロマン。
丸顔の、いかにも美食家然とした風貌の蔭に、鋭い直感力を秘めた犯罪捜査部顧問レジー・フォーチュンークロフツ、クリスティと同年にデビューを飾った巨匠H・C・ベイリーの生み出したこの名探偵は、ホームズ時代の古き良き香りを残しながら、社会に向ける眼差しに新しい時代を感じさせ、来るべき風潮を予知する先取の才能をも秘めていた。「聖なる泉」等、傑作七編を収録する。