著者 : 永福一成
藤井善行、三十二歳。独身。売れないカメラマン。高校時代は、かなり悪かった。跡継ぎのいない叔父の寺を存続させるため、というのは建前で、叔母の「儲かる副業」の言葉に釣られ、仏教学院に入学する。試験は、面接のみ。たったひとつだけのクラスは、下は十代から上は六十代まで老若男女バラエティに富んだ構成だ。中には、東大のインド哲学科卒のインテリまでいる。一年限定とはいえ、久しぶりの学生生活がはじまった。今まで接することもなかった属性のクラスメイト達と交流するうちに、善行は仏教に対して前向きになっていくのだった。仏教が紡ぐ青春の物語。
江戸の神田界隈では辻斬りが横行していた。事件を追う岡っ引きの恒五郎は、かたぎ長屋に住む浪人・瀬能宗一郎を下手人と睨んでいた。嫌疑をかけられた宗一郎は、長屋の大家で元岡っ引きの与左衛門や旗本の御輿大三郎と共に一計を案じることに。一方、宗一郎を執拗につけ狙う凶剣士・木久地真之介の背後には、「ご家老様」率いる信濃あたりの藩の重鎮一派がついていた。徐々に明らかになる竹光侍・瀬能宗一郎出生の謎。そして、ふたたび相まみえた宗一郎と木久地。その決着やいかに。ベストセラー書き下ろし時代小説シリーズ第二弾。
江戸のかたぎ長屋にやってきた浪人・瀬能宗一郎。剣の腕はたつが、どこか素っ頓狂。形見の銘刀「國房」を質に入れ、代わりに差しているのは竹べらに銀箔を巻いた「竹光」だ。もの珍しい江戸の生活を満喫していた宗一郎だが、生来の性格からか、はたまた隠された素性故か、様々な厄介事に巻き込まれる。やがて宗一郎をつけ狙う怪しい影が!侍とはいえ、剣を抜かなくなった平和な時代。それでも剣に憑かれた男たちの人生が苛烈に交錯する。漫画表現の最先端を走る松本大洋の同名ベストセラーコミックス原作者が書き下ろす小説シリーズ第一弾。