著者 : 江上剛
二〇一一年の東日本大震災で津波による被害を受け、二百年以上続く酒蔵を流された矢吹酒造所。地震後の原発事故によって、町に住むことさえできなくなった八代目の光は、酒蔵の再建を断念していた。津波に襲われ、一人の少女を救えなかったことを今でも悔やんでいる光だが、テレビ番組の取材を受けたことで、再建の意志を固める。家族や関係者のみならず、金融機関や役所も味方につけ酒蔵の再興に挑む姿を活写する、“人生の応援歌”!
権力の座を望む長女、その姉を恐れる次女、父親が気がかりな三女。日本一の家具店を一代で築いた“家具王”宝田壮一だが、寄る年波には勝てず、また後継者選びにも悩んでいた。三姉妹も役員だが、それぞれの強い思いが不協和音となり、家族間に暗い影を落とす。一族を取り囲む社員たちに加えて投資ファンドの策謀が絡み、影は濃く、深くなるばかり。宝田家具には“破滅”への道しかないのか!?家族の“絆”は、幻想にすぎなかった。『リア王』を下敷きに、古くて新しい家族の悲劇を描いた意欲作。
明治元年、貧しい家庭に生まれた桃介は、大いなる野望を抱いて慶應義塾に入学。福澤諭吉にその才能を認められ、娘婿となることと引き換えにアメリカ留学を果たす。帰国後、結核や妻との不和に苦しむも、相場で財を成した桃介に対し、世間からの評判は厳しかった。自身が何を為すべきか悩んだ桃介は、急流木曽川を舞台に水力発電に挑む。そこから関西電力・中部電力の礎を築き、ついには「電力王」と呼ばれるまでに至った男の仕事観と波瀾の人生を描いた渾身の長編小説。
花浦久兵衛は父の弥兵衛が明治維新後に設立した花浦財閥の総帥を受け継いだ。一九四五年の敗戦後、GHQ主導による財閥解体の危機に直面し、苦悩する久兵衛。やがてGHQ参謀第二部のキャノン中佐率いる一団が花浦邸を接収し、傍若無人に振る舞い、屋敷は滅茶苦茶にされてしまう…。花浦財閥存亡の危機に、久兵衛が下した決断とは?疲弊した現代日本を逆照射する歴史経済巨編!
個人のツイートに始まる金融壊滅を描く、予言的金融サスペンス巨編!中学生が弱小地銀の支店に並ぶ人に聞いて「銀行が危ない」と、ひと言ツイートしただけで、取り付け騒ぎに発展する。折しも新型ウイルス感染症の蔓延で経済状況が逼迫する中、地銀発の銀行連鎖破綻を予測していた金融庁の局長は、実態調査のために部下を現地に送り込む。彼らがそこで目にしたものはー?
“再建の神様”早川種三に憧れる銀行マンが絶望の末に出会ったのは、一人の経営コンサルタントと、会津の倒産した旅館。地元の抵抗、従業員の軋轢、そして震災ー蘇らせるのは企業じゃない街だ!人だ!大逆転劇が始まる!
娘の無念を晴らしたいー伊地知耕介に連絡をしてきたのは元上司。彼の娘は28年前に惨殺され、犯人は不明のまま。その事件の真相を獄中の死刑囚が語り始めたという。一方、伊地知はカメラアイの能力を持つ部下の悠希と「地銀の雄」さざなみ銀行の不正融資疑惑を追う。ふたつの事件が交錯するとき、伊地知は拳銃に手をかける。江上剛史上最もキケンな、ハードボイルド金融エンターテインメント!
大日朝日銀行広報グループにかかった一本の電話。暴力団がからんだ不正融資の告発だった。電話を受けた峰岸貴之は、反社会的取引解消の特別任務を命ぜられた。合併再編によって生まれたメガバンクの派閥争いに振り回されながら、峰岸が「巨悪」に挑む!実際に広報部員として不祥事に対応した著者が、正義感溢れる中堅バンカーの奮闘を描いた意欲作!
戦争から東京に戻った藤田俊雄は異父兄とともに、スーパーマーケットを開業、店舗網を広げ成長を遂げる。どん欲に売り上げを追う仲村力也、消費にも文化を、と訴える大館誠一ら、ライバルたちと競い合いながら、戦後の日本の流通業界を大きく変えていく。作家・江上剛氏がカリスマ経営者の姿を描く。
スーパーマーケットチェーン、フジタヨーシュウ堂に転職。有能な働きで頭角を現したビジネスマン、大木将史。米国出張で偶然出会ったコンビニエンスストアを日本で展開し日本の消費者の暮らしを大きく変えた彼を待ち受けるものとはー。作家・江上剛氏が描くカリスマの運命とは。
転籍人事にかちんときた実力派副社長、リストラを完遂した途端に自分の首を切られた人事部長、合併銀行の派閥を背景にした熾烈な社長レース…。「非情人事」を拝命した人々の複雑な思いと行動、人事の裏に潜む人間ドラマを鮮やかな筆致で描いた短編集。
試験的にAIロボットを導入した第七明和銀行。高田通り支店の庶務行員・多加賀主水は、AIに負けじと雑用をこなしていた。ところがある日、主水は友人の木村刑事に放火の疑いをかけられ、署に連行される。聞けば“高田町稲荷の遣い”を騙り、町内の嫌われ者の自宅に「天誅」と称して放火する輩が出没しているらしい。潔白を訴える主水は、町を脅かす巨悪と対峙する!テレビドラマ化された痛快銀行小説シリーズ第4弾。
すごい経営者がいた! 日本オリジナルの合成繊維の事業化、そして国交回復前の中国へーー。 敗戦後の日本人の誇りを取り戻させた大原總一郎の激動の人生を描いたノンフィクションノベル。 松下幸之助に「美しい経済人」と評された稀代の経営者・大原總一郎ーー。 数々の分野でシェアNo.1を誇る企業=現在のクラレを創り上げた男の生涯は、波乱に満ちたものだった。 国産第一号の合成繊維「ビニロン」の事業化や、国交回復前の中国へのプラント輸出……。激動の昭和史を背景に、“百年先が見えた経営者”と言われた男の生涯を描く感動の企業小説。 『天あり、命あり』を改題。
絶対的権力者の専横、目先の利益を追う者たち…すべてを破壊せねば、再生はできないーこの男なくして、「住友」は語れない。危機に瀕した住友を救った“住友中興の祖”伊庭貞剛の、知られざる生涯に迫る感動のノンフィクション・ノベル。
日本写真フイルムは未曾有の危機に陥っていた。デジタルカメラの台頭により、フィルムの需要が急激に消滅しつつあったのだ。この「本業消失」という非常事態に際し、立ちあがった男たちがいた。これまでフィルムで培った技術を生かして未経験の化粧品開発に挑み、数々の困難を乗り越え、大ヒットブランドを生むまでの苦闘を描く。富士フイルムをモデルとした感動のノンフィクション小説。富士フイルム・古森重隆会長との特別対談収録。
大手銀行の執行役員にまでのぼりつめた大谷俊哉。東京で勝ち馬に乗った人生を歩んできたものの、仕事への“情熱”など、とうに失われている。妻はもとより、十数年来の愛人・麗子との関係もマンネリ化。そんな中、兵庫県丹波にある実家の母が死んだ。地元で暮らす妹は嫁いだ身を理由に、墓を守るのは長男の役目だと言って譲らない。妻は田舎の墓に入りたくないと言い出す。ああ、俺にはお前しかいない…「一緒に墓に入ってくれ」。麗子に勢いで言ってしまった。そして、順風満帆だったエリート人生が狂い始める…。「墓じまい」をテーマに描く、大人の人生ドラマー。
「私は悪い人間です」そう書き遺し、第七明和銀行高田通り支店の若手行員樋口が死んだ。警察は自殺として処理するが、庶民行員の多加賀主水は、新田秘書室長より「死の真相を追え」と指令を受ける。吉川頭取たっての調査依頼だった。生前の樋口の交友関係を辿ると、悪徳政治家や貧困女子、不倫相手らが浮かび上がるが…。樋口の無念を晴らすべく、主水が悪に天誅を下す!
かつての賑わいを失った温泉街。その町で育ち、地元の信用金庫に勤める勇太は、蛇神伝説をもとに新たな祭りを開催し、観光客を呼び込もうという地元活性化案を企画した。その目玉として、大蛇神輿と高校生の蕎麦打ちイベントを提案する。その頃、春海たち高校生も全国高校生蕎麦打ち選手権大会に出場するため特訓に励んでいた。そんな中、東京のメガバンクに勤める勇太の兄・勇之介が、リゾート化計画を引っ提げてやってくるが…。