著者 : 沖田正午
両国広小路の芝居小屋で、席亭と座長が殺される。一緒にいた座長の娘は一命を取り留めるが、記憶を失ってしまう。超大富豪「萬店屋」の主でもある、新内流しの弁天太夫・鉄五郎は、自分の不用意な一言で無実の罪を着せられた浪人が磔にされると聞き、下手人探しに乗り出す。鉄五郎は刑場に向かう途路に咎人奪取を企て、さらに真犯人暴露の意趣返しの大芝居を打つ!
幕府を私物化する田ノ倉恒行を老中の座から引きずり下ろすため、四人の配下とともにその悪政の証を立てようとする隠居大名・朧月寒山。寒山は十年前、田ノ倉の謀略によって改易されるという遺恨を持っていた。だが、彼らの仕掛けは田ノ倉を追い詰めるものの、いつもすんでのことで逃げられてしまう。ある日、奇しくも、大川で何者かに襲われようとしていた田ノ倉を救う結果となった寒山たち。事件は寒山に、田ノ倉憎しは自分たちだけではないと知らしめることになったのだ。寒山は、田ノ倉を襲ったのが誰の手のものか調べはじめるが、その背後には思いもかけない大物の名が…。書下ろし長編時代小説、第二弾。
花火大会の夜、新内流しの弁天太夫こと鉄五郎は、相方の松千代と家路の途中、心中の片割れとされる若い娘の死に出逢う。翌日、豪華絢爛な屋形船が爆発、さらに一月後、また若い娘の不審死と花火師の無残な骸が…。実は超の付く大富豪の鉄五郎、その財力をもって、弱き者の行き場のない怨みを晴らすため立ち上がり、季節外れの大仕掛け花火で極悪人たちを吊るし上げる!
新内流しの弁天太夫と相方の松千代は、母子心中に出くわし二人を助ける。母親は理由を語らないが、身の振り方を考える太夫。一方太夫に、実家である江戸の様々な大店を傘下に持つ総元締め「萬店屋」を継げとの話が舞い込む。超富豪になった太夫が母子の事情を調べると、ある大名のとんでもない企みが…。悪徳大名を陥れる、金に糸目をつけない大芝居の開幕!
南町奉行所の書庫管理を担う物書き同心大貫貴十郎は、とぼけた馬面で風采も上がらず、“寝ぼけ提灯”とあだ名される始末。そんな貴十郎の趣味は書棚に埋もれた未解決事件の調書きを読み、密かに探索することだ。ある押し込み事件に的を定めた貴十郎は、娘と静かに暮らす薬屋伊佐治に近づき、徐蕨に素性を暴いていく。やがて明らかになる伊佐治の過去、そして貴十郎の“裏”の目的とは。謎と情と闇裁き。時代小説の醍醐味満載の痛快作!
人気が下り坂の戯作者・浮世月南風は、ある日名医・杉田玄白から「あと一年の命」と告げられる。肝の臓に腫瘍があるというのだ。朽ちるのを待つかと自棄になるが、版元の励ましに奮い立ち、一世一代の傑作執筆を決意する。そこで浮かんだのは、かつて愛した女の一言だった。「あなたには『****』が足りないのー」その言葉を聞き直すため、南風は命がけの旅に出る。葛藤と決意が胸を震わす、書き下ろし長篇時代小説。
巽真之介は北町奉行所きっての凄腕同心で、「閻魔の使い」とも呼ばれていた。その鮮やかな十手捌きと悪人に対するのとは全く違う江戸町民への優しい眼差しに、旗本の娘音乃が惚れる。女だてらに剣術や柔術にも秀でた男勝りの娘だったが、結婚してからは内助の功を尽くしていた。ところが知り合いの娘の不審死に、夫と下手人探しに奔走、音乃の機知が冴えるが…!?
殿さま商売人、鳥山藩藩主の小久保忠介に、全国を自由に航海できる大船造りのための資金一万両を出してくれれば四万両になるという儲け話が降って湧く。領国の暴れ川護岸工事の資金がほしい忠介だったが、裏に幕府老中までが絡むというその大風呂敷に疑念を抱く。黒石藩や八戸藩を巻き込んでの「騙り」成敗のつもりだったが…。忠介、一世一代の大勝負の行方は?
北町奉行所の同心・河村金志郎の裏の顔は金貸し。岡っ引きの銀治、下っぴきの音松を使ってトイチで貸して取立てている。同業の金貸し・吉五郎が殺され、他人事ではないと探索に乗り出したが、さる大名が浮上し、奉行から圧力がかかる。上司である与力の内諾を得て密かに調べを続け、その大名に直に問いただしたところまではよかったのだー。さらなる難問が金志郎に降りかかる。
河村金志郎は北町奉行所で定町廻り同心を務めるかたわら、なんと金貸しをやっている。岡っ引きの銀治と下っぴきの音松も、元は闇の金貸し。とはいえ、十手を預かる金志郎が好きで金貸しをやっているわけではない。父親がトイチで借りた三十両を返すため、そして父親を殺した下手人を自らの手で挙げるためだ。銀治と音松の力を借りて、下手人捜しと借金返済を一挙に成し遂げられるか!?
御家人やくざの白九郎の相棒は、牙黒と名付けた雑種の犬。なぜか、話ができる。柳原の土手を縄張とする野犬たちも、義侠心で結ばれた仲間だ。その土手になんと三万両の埋蔵金が隠されていた!?嗅ぎつけたのは旗本、川舟役人、やくざ者。お宝を掘り出すのに野犬は邪魔と、土手に毒をバラ撒いた。「許せねえ!」と白九郎と牙黒は、その埋蔵金を餌に一網打尽の罠を仕掛ける。
「そうだよ、あっしが喋ってるんですぜ」。目の前の犬に言われて白九郎は驚いた。傍目にはどこにでもいる雑種なのに、白九郎にだけは鳴き声が言葉となって伝わってくる!しかも、自分の名前まで知っていた。仔細を聞くうちに、牙黒と名付けた黒い歯の犬こそ天の賜物と思った白九郎は、賭場荒らしで食いつなぐ日々から一念発起。牙黒のため、体を張って非道の旗本をとっちめることに!
「芋侍のにいちゃん、可愛いねえちゃん半刻ほど貸せよ」武州槻山藩主から休みをもらって江戸に出た小坂亀治郎は、道を尋ねてごろつきに囲まれた。怪しい侍から助けてやったお鶴ちゃんが、なぜか旅の道連れになってしまい、吉原遊びを断念したばかりだった。武州訛りで風采の上がらぬ亀治郎とお鶴ちゃんの、心がほっこり爆笑珍道中の始まり始まり。