著者 : 泉ゆたか
民族の誇り。差別との闘い。ユーカラに賭ける情熱。短い生涯を駆け抜けた一人の女性を描ききった、新たな代表作!絶滅の危機に瀕した口承文芸を詩情あふれる日本語に訳し、今も読み継がれる名著『アイヌ神謡集』。著者は19歳の女性だった。その功績に注目が集まる知里幸恵の鮮烈な人生。著者初の評伝小説。
東京から大阪の夫の実家近くに引っ越し、関西のノリについていけず疲れ果てた沙由美。モデルの仕事を餌に、詐欺師まがいの男にマウントされる華。ネグレクト育ちで転売ヤーとして荒れた生活を送る達也。人生の袋小路で立ち往生する人々の背中をドンと押して勇気づける、大阪のおばちゃん、とし子。だが、無敵に見えるおばちゃんにも、ある“事情”があったー。抱腹絶倒&ちょっと涙のヒューマン・ドラマ!
憧れだったはずの仕事を辞め、前に進めなくなってしまった明日香の前に現れたのは、アパートの塀の上にいるサビ猫の「ぶーさん」だった。ある日ぶーさんが病気になったと訴える少女の話を聞いた明日香は、行きがかり上、動物病院へ連れていくことになった。その古びた動物病院で思いがけず、ぶーさんは明日香の人生を変えることになる。そして数年後、お別れの時が訪れた。(「ぶーさん」より)友人で、家族で、パートナー。私たちにとって、かけがえのない存在であるペットたち。彼らとの出会いとお別れ、幸せを描く、4つの感動の物語。
「うんと気の強い女中が欲しい」そんな注文が入り咲は新しい奉公先のある上野池之端を訪れる。不忍池の畔のあばら家で待っていたのは、なんと母が幼い頃の咲を連れて奉公していた大店の元お嬢様、志摩だった。さらに妙な色気のある女、香も加わり、志摩は男女が人目を忍んで逢瀬を楽しむ“出合茶屋”を開くという。やがて、三人の店はよそにない趣向が受けてお江戸で大評判に。だが、次々と厄介事が舞い込んで…?
江戸城小普請方の家に生まれ、幼き頃より父の背中を見て育った峰。父を亡くし、人生の岐路に立った峰は、頼りない弟の門作を尻目に、おんな大工として生きていくことを決意する。神田横大工町の采配屋・与吉から請負い、峰は普請仕事を始めるが…。上方からやってきた商人の新店舗、反物屋の姑が住んでいた猫屋敷、数々の騒動を起こす男児の長屋ーおんな大工・峰が普請で人々の心を救う。『髪結百花』で第1回日本歴史時代作家協会賞新人賞、第2回細谷正充賞受賞。2冠受賞の実力派作家が放つ新世代のお仕事時代小説。
おっぱい先生。それは、母親たちを助ける、知られざる「母乳外来」の専門家。念願の第一子を授かり、幸せいっぱいのはずの和美は途方に暮れていた。「息子が、おっぱいを飲んでくれない」。完全母乳育児を目指していた和美はパニックに陥るが、先輩ママから「おっぱい先生」の噂を聞き、藁にも縋る思いで「みどり助産院」に出向く。和美はそこで、「おっぱい先生」こと律子から思いがけないアドバイスを受け、乳房に触れられることで「母親失格」と思い込んでいた身体と心が、ゆるりとほぐれていくー。母乳外来。それはおっぱいに悩みを抱える女性たちが駆け込む助産院。性格も家庭環境も異なる4人の母親たちが、おっぱい先生と出会い救済を得ていく、希望に満ちた感動作。
亡き夫の跡を継ぎ、浄見寺で寺子屋の師匠をしている桃。ある日、すでに大人でありながら、学問を学び直したいという春が訪ねてくる。最初は戸惑う桃だったが、春の隠れた才に次第に魅せられていく。一方、寺子屋で一番優秀な生意気娘の鈴は、春のことが面白くないようで。第11回小説現代長編新人賞受賞作。
夫婦で営む養生所“毛玉堂”にやってくるのは、病める動物たちと悩める飼い主たち。“人情”という妙薬が、傷ついた心と体を癒やしていくー。江戸の世でも、ペットを思う気持ちは変わらない。もふっと可愛くほっこり温かい傑作時代小説。
享保十一年、茅ヶ崎は浄見寺。今は亡き夫の跡を継ぎ、桃は寺子屋で子供たち相手に師匠をして暮らしている。ある日、酒匂川の氾濫で両親を亡くした春が訪ねてくる。すでに大人の身でありながら、もう一度学問を学び直したいという。はじめは戸惑っていた桃だったが、春の素直さと見え隠れする才能に次第に魅せられていく。しかし、寺子屋一秀才な生意気娘・鈴が黙っているはずがなく…。爽やかでほんのり温かい、“時代×お仕事”エンターテインメント!