著者 : 津島佑子
真昼へ真昼へ
どうしてあなたは生まれ、こんなにも早く死んだのかー息子と共に過ごした時間を丹念に辿り直し、自分の人生、そして母の人生へと溯るうち、生と死の必然性にゆっくりと思いいたる。母もまた、わたしの兄である息子を失っているのだ…。表題作のほか「泣き声」「春夜」の2篇を収録。手繰り寄せる夢と記憶の中に今は亡い息子の生を確信する美しい鎮魂歌。平林たい子賞受賞作。
光の領分光の領分
夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の一年間。寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という新しい創作上の方法を精妙に駆使し、第一回野間文芸新人賞を受賞した津島佑子の初期代表作。
水府水府
流れる水、波立つ水、あるいは光り、たぎる水。さまざまな水の相を背景に、家族、男と女、また母と娘たちがたどる危うい生の実相を、迫真の筆致で刻みだした連作集。水がわたしに落ちてくる、早く眠らなければ…。
黙市黙市
深淵の底から、現実という水面に湧き出る、交錯した夢と記憶。コンクリートのマンションに住む人間たちと、森に棲む生き物たちとの密かな交感ー。子供たちに見せるため、別れた男と会いながら、奇妙な沈黙が続いてしまうその光景を、山の男と村人との物言わぬ物々交換、すなわち黙市に重ね合わせる川端賞受賞の表題作等、この世にひっそりと生きる者たちの息遣いに耳澄ます11編。
逢魔物語逢魔物語
『八犬伝』の伏姫、『番町皿屋敷』のお菊、三ツ目小僧ー。物語、伝説、夢、フォークロアなドを鮮やかな媒介として、“秩序”“制度”からはぐれ、はずれた生や、愛たちを問う、“新しい時代”の女性作家・津島佑子の果敢な力業。時代が生んだ“生”の新たな意味を問う中篇連作集。