著者 : 浅井晶子
結婚は免疫システムによるマッチング、日々の運動量の報告義務、犯罪の物的証拠は体内に埋め込まれたチップやDNA…国家による究極の健康監視システム“メトーデ”に、罪を着せられて自殺した弟の遺志を継いで挑む!近未来サイエンス・ディストピア小説。
悲しみとは、生の躍動ーー。人の尊厳に迫る、このうえなく静かな長篇小説。ミリオンセラー『ある一生』で国際ブッカー賞候補となったオーストリアの作家が、小さな町の墓所に眠る死者たちが語る悲喜交々の人生に耳を傾ける。たゆまぬ愛、癒えない傷、夫婦の確執、労働の悦び、戦争、汚職、ならず者の悲哀……。失意に終わる人生のなかにも、損なわれることのない人間の尊厳がある。胸を打つ物語。
ドイツの実力派による〈トーマス・マン〉賞受賞作 大学を定年退官した古典文献学の教授リヒャルトは、アレクサンダー広場でアフリカ難民がハンガーストライキ中とのニュースを知る。彼らが英語で書いたプラカード(「我々は目に見える存在になる」)について、リヒャルトは思いを巡らす。 その後、オラニエン広場では別の難民たちがすでに1年前からテントを張って生活していることを知る。難民たちはベルリン州政府と合意を結んで広場から立ち退くが、彼らの一部は、長らく空き家だった郊外の元高齢者施設に移ってくる。 難民たちに関心を持ったリヒャルトは、施設を飛び込みで訪ね、彼らの話を聞く。リビアでの内戦勃発後、軍に捕えられ、強制的にボートで地中海へと追いやられた男。命からがら辿り着いたイタリアでわけもわからず難民登録されたが、仕事も金もなくドイツへと流れてきた男。 リヒャルトは足繁く施設を訪ね、彼らと徐々に親しくなっていく。ドイツ語の授業の教師役も引き受け、難民たちとの交流は、次第に日常生活の一部となっていくが……東ドイツの記憶と現代の難民問題を重ね合わせ、それぞれの生を繊細に描き出す。ドイツの実力派による〈トーマス・マン賞〉受賞作。
謎めく敵意。食い違う過去。彼女は何を知っている? オーストリアの田舎に暮らす、カンボジア移民のキム。その誕生日の祝いの席に突然現れた女性は、少年の頃にポル・ポト政権下のカンボジアを共に逃れた妹のような存在であり、同時にキムが最も会いたくない人物だった……。 かつての過酷な日々に、いったい何が起こったのか? 『国語教師』でドイツ推理作家協会賞を受賞した著者による、最新文芸長編。 【著者プロフィール】 ユーディト・W・タシュラー 1970年、オーストリアのリンツに生まれ、同ミュールフィアテルに育つ。 外国での滞在やさまざまな職を経て大学に進学、ドイツ語圏文学と歴史を専攻する。 2011年『Sommer wie Winter(夏も冬も)』で小説家デビューし、現在は専業作家として家族とともにインスブルック在住。2014年に『国語教師』がフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)を受賞した。 その後も精力的に執筆を続けており、本書は邦訳2作目にあたる。 【訳者プロフィール】 浅井晶子(あさい・しょうこ) 1973年大阪府生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程単位認定退学。2003年マックス・ダウテンダイ翻訳賞受賞。 主な訳書にパスカル・メルシエ『リスボンへの夜行列車』、イリヤ・トロヤノフ『世界収集家』(以上早川書房)、トーマス・マン『トニオ・クレーガー』(光文社古典新訳文庫)、エマヌエル・ベルクマン『トリック』、ローベルト・ゼーターラー『ある一生』(以上新潮クレスト・ブックス)、ユーディト・W・タシュラー『国語教師』(集英社)ほか多数。
まだ東西ドイツがあった頃のお話。15歳の男の子ミヒャエル・クッピシュは太陽通り(ゾンネンアレー)の「ベルリンの壁」近くに住んでいる。ゾンネンアレーは、西ベルリンから長く続く道で、最後の六十メートルだけが東ベルリンにある。あとちょっとで西側に住めたのに、とミヒャは思う。ローリング・ストーンズは「禁止」、外国に行くことも「禁止」、初めてもらったラブレターだって、国境地帯に飛んでいって、拾うことさえできやしない!ミヒャと、彼をとりまくおかしな人々による「ベルリンの壁コメディー」。 サブカルチャーの視点からユーモアとともに描く作風で、東ドイツ出身のもっとも人気のある作家のひとりトーマス・ブルスィヒの代表作。 マックス・ダウテンダイ・フェーダー・東京ドイツ文化センター賞2003年受賞
吹雪の白い静寂のなかに消えていった、あの光景。アルプスの山とともに生きた、名もなき男の生涯。雪山で遭難したヤギ飼いとの邂逅に導かれるように、20世紀の時代の荒波にもまれながら、誰に知られるともなく生きたある男の生涯。その人生を織りなす、瞬くような忘れがたき時間が、なぜこんなにも胸に迫るのだろう。80万部を超えるベストセラー、英語圏でも絶賛! 現代オーストリア文学の名手が紡ぐ恩寵に満ちた物語。
< ドイツ推理作家協会賞受賞作 > 女は国語教師。男は有名作家。 再会したふたりが紡ぐ〈物語〉は、あの忌まわしい過去に辿り着くーー 16年ぶりに偶然再会した元恋人たちは、かつてのように物語を創作して披露し合う。 作家のクサヴァーは、自らの祖父をモデルにした一代記を語った。 国語教師のマティルダは、若い男を軟禁する女の話を語った。 しかしこの戯れが、あの暗い過去の事件へとふたりをいざなってゆく……。 物語に魅了された彼らの人生を問う、フリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)受賞作。 【著者略歴】 ユーディト ・ W ・ タシュラー 1970年、オーストリアのリンツに生まれ、同ミュールフィアテルで育つ。外国での滞在やいくつかの職を経て大学に進学、ドイツ語圏文学と歴史を専攻する。家族とともにインスブルック在住。国語教師として働く。2011年『 Sommer wie Winter (夏も冬も)』で小説家デビュー。現在は専業作家。2013年に発表された『国語教師』(原書タイトル Die Deutschlehrerin )は2014年度のフリードリヒ・グラウザー賞(ドイツ推理作家協会賞)長編賞を受賞した。 【訳者略歴】 浅井晶子( あさい ・ しょうこ ) 1973年大阪府生まれ。京都大学大学院博士課程単位認定退学。2003年マックス・ダウテンダイ翻訳賞受賞。主な訳書にパスカル・メルシエ『リスボンへの夜行列車』、イリヤ・トロヤノフ『世界収集家』(以上早川書房)、カロリン・エムケ『憎しみに抗って』(みすず書房)、トーマス・マン『トニオ・クレーガー』(光文社古典新訳文庫)、エマヌエル・ベルクマン『トリック』(新潮クレスト・ブックス)ほか多数。
少年は信じる、魔法の力を。70年の時を超えて甦る、極限下の奇跡ーー。プラハの貧しいラビの家からサーカス団に飛び込み、ナチス政権下を生き抜いた老マジシャンと、LAの裕福な家に育ち、両親の離別に思い悩む少年。壊れた愛を取り戻す魔法は、この家族に何をもたらすのかーー。戦時下と現代、それぞれの艱難を越えて成長するユダヤ人少年の姿を温かな筆致で描く、17ヵ国語翻訳のデビュー長篇。
同級生の男子ハンスや、金髪の少女インゲボルクに思い焦がれながらも、愛の炎には身を捧げられず、精神と言葉の世界に歩みだしたトニオ。だが大人になり小説家として成功してなお、彼の苦悩は燻っているのだった。若者の青春と新たな旅立ちを描いた、ノーベル賞作家の自伝的小説。
インド、アラビア、東アフリカ……大英帝国の作家・冒険家リチャード・バートンの旅路は続く。重層的な語りから生まれる、めくるめく世界の姿。ブルガリア系ドイツ人作家による越境文学の傑作!
ヨークシャーの古い屋敷で春の休暇を過ごしていたドイツ人グループ。三組の夫婦と子供が三人…夫たちの濃密な友人関係のもと、時は流れていたが、ある明るい一日、子供を含めた五人が惨殺死体となって発見された!凶器は同じナイフだ。いったい誰が?なぜ?屋敷の相続権を主張しつづけていた謎の男が犯人なのか?ドイツのベストセラー作家が人間心理の闇を描いた傑作。
古い屋敷で発見された五人の惨殺死体。楽しかったはずの休暇にいったい何が起きたのか?夫たちを中心に集まる彼らは、周囲からはうかがい知ることのできない問題をそれぞれに抱えていた、夫婦間に、親子間に。そして親密すぎるほど親密だった三人の夫たちの結びつきには驚くべき秘密が…。人間ドラマを描いて右に出る者がいない、ドイツの国民的作家による圧巻のミステリ!
19世紀、北極圏で消息を絶った探検家ジョン・フランクリンの知られざる「緩慢な」生き方。数十か国語に翻訳され、四半世紀にわたり広く読まれ続ける、“ハンス・ファラダ賞”受賞作家によるドイツ文学の新たな古典。
初老の古典教授は、奇妙なポルトガル人女性との邂逅をきっかけにリスボンへの夜行列車に飛び乗る。長い旅の末、彼はかつての秩序に満ちた人生を捨て去るーードイツでミリオンセラーの哲学小説。
物理学者ゼバスティアンは、提唱する「多世界解釈」理論をめぐって論争の渦中にあった。彼を鋭く批判していたのは、学生時代からの親友で天才物理学者のオスカー。親友との摩擦は、ゼバスティアンの望むところではないのだが…。ある時、テレビの科学番組でオスカーと激しく議論を戦わせた翌日、ゼバスティアンの息子リアムが誘拐される。犯人と思しき人物からの要求は、医療スキャンダルの秘密を握ると噂される妻の同僚を殺害することだった。息子を救うためゼバスティアンは要求に従うことを決意する。だがなぜ、ゼバスティアンが選ばれたのか?天才警視シルフの捜査は、事件の悲劇的な真相を明らかにしていく。ドイツ文学界の新星が放つ哲学的ミステリ。
そしていま、母は家中をゴミで埋め尽くす。「明日は片づけるから」と言いながらも、毎日大量のゴミを家の中に運びつづける。アディーナは母からこう言い聞かされて育った。外の世界は危険よ。そこは怖い「ノック人」の世界。彼らがうちのドアをノックするとき、家族は引き離される-。