著者 : 浅井晶子
結婚は免疫システムによるマッチング、日々の運動量の報告義務、犯罪の物的証拠は体内に埋め込まれたチップやDNA…国家による究極の健康監視システム“メトーデ”に、罪を着せられて自殺した弟の遺志を継いで挑む!近未来サイエンス・ディストピア小説。
どこへ行けばいいかわからないとき、人はどこへ行くのだろう?退官した大学教授リヒャルトは、ベルリンに辿り着いたアフリカ難民に関心を抱く。難民たちとの交流は、次第に彼の日常生活の一部となっていくが…東ドイツの記憶と現代の難民問題を重ね合わせ、それぞれの生を繊細に描き出す。ドイツの実力派による“トーマス・マン賞”受賞作。
オーストリアの田舎に暮らす、カンボジア移民のキム。彼の誕生日の祝いの席に突然現れたのは、幼い頃ポル・ポト政権下の祖国を共に逃れた妹のような存在であり、同時にキムが最も会いたくない女性だった…。ドイツ推理作家協会賞受賞の著者による、傑作文芸長編。
20世紀初頭、幼くして母を亡くし、アルプスの農場主のもと過酷な労働をしいられて育ったアンドレアス・エッガーはある日、雪山で瀕死のヤギ飼いと出会い、「死ぬときには氷の女に出会う」と告げられるー。生まれてはじめての恋、山肌に燃える文字で刻まれた愛の言葉。危険と背中合わせのロープウェイ建設事業に汗を流す、つつましくも幸せな日々に起こったある晩の雪崩。そして、戦争を伝えるラジオ。時代の荒波にもまれ、誰に知られることもなく生きた男の生涯。その人生を織りなす瞬くような時間。恩寵に満ちた心ゆすぶられる物語。
十六年ぶりに偶然再会した、元恋人同士の男女。ふたりはかつてのように物語を創作して披露し合う。作家のクサヴァーは、自らの祖父をモデルにした一代記を語った。国語教師のマティルダは、若い男を軟禁する女の話を語った。しかしこの戯れこそが、あの暗い過去の事件へふたりを誘ってゆく…。物語に魅了された彼らの人生を問う、ドイツ推理作家協会賞受賞作。
プラハの貧しいラビの家からサーカス団に飛び込み、ナチス政権下を生き抜いた老マジシャンと、ロサンジェルスの裕福なユダヤ人家庭に育ち、両親の離別に悩む少年。壊れた愛を魔法で取りもどしたいー夢見がちな少年の願いは、拗ね者のマジシャンの心をついに動かし、一族の命運を変えた戦時下の「奇跡」をも呼び覚ます。持ち込み原稿を断わられ続けること10年、スイスの名門ディオゲネス社から刊行されるや、たちまちベストセラーとなり、17ヵ国語に翻訳された話題のデビュー長篇。
同級生の男子ハンスや、金髪の少女インゲボルクに思い焦がれながらも、愛の炎には身を捧げられず、精神と言葉の世界に歩みだしたトニオ。だが大人になり小説家として成功してなお、彼の苦悩は燻っているのだった。若者の青春と新たな旅立ちを描いた、ノーベル賞作家の自伝的小説。
やがて入り江が見えた。両手が水をすくうように、膨らんだ帆が空気をすくった。すでに鼻がかいでいたものが、目に見えてきた。最初はチョウジ油をすりこんだ望遠鏡を通してー大英帝国の軍人、リチャード・フランシス・バートン。インドでは様々な言語と文化に浸り、アラビアではメッカ巡礼をなしとげ、アフリカではナイルの源泉を追い求める。『千夜一夜物語』の翻訳者としても知られる桁外れの人物の生涯を、世界的に評価されるブルガリア系ドイツ人作家が、事実と虚構を織り交ぜて詩情ゆたかに描き上げた傑作長篇小説。ライプツィヒ・ブックフェア賞受賞作。
ヨークシャーの古い屋敷で春の休暇を過ごしていたドイツ人グループ。三組の夫婦と子供が三人…夫たちの濃密な友人関係のもと、時は流れていたが、ある明るい一日、子供を含めた五人が惨殺死体となって発見された!凶器は同じナイフだ。いったい誰が?なぜ?屋敷の相続権を主張しつづけていた謎の男が犯人なのか?ドイツのベストセラー作家が人間心理の闇を描いた傑作。
古い屋敷で発見された五人の惨殺死体。楽しかったはずの休暇にいったい何が起きたのか?夫たちを中心に集まる彼らは、周囲からはうかがい知ることのできない問題をそれぞれに抱えていた、夫婦間に、親子間に。そして親密すぎるほど親密だった三人の夫たちの結びつきには驚くべき秘密が…。人間ドラマを描いて右に出る者がいない、ドイツの国民的作家による圧巻のミステリ!
19世紀、北極圏で消息を絶った探検家ジョン・フランクリンの知られざる「緩慢な」生き方。数十か国語に翻訳され、四半世紀にわたり広く読まれ続ける、“ハンス・ファラダ賞”受賞作家によるドイツ文学の新たな古典。
古典文献学の教師ライムント・グレゴリウス。五十七歳。ラテン語、ギリシア語、ヘブライ語に精通し、十人以上の生徒と同時にチェスを指せる男。同僚や生徒から畏敬される存在。人生に不満はないー彼はそう思っていた、あの日までは。学校へと向かういつもの道すがら、グレゴリウスは橋から飛び降りようとする謎めいた女に出会った。ポルトガル人の女。彼女との奇妙な邂逅、そしてアマデウ・デ・プラドなる作家の心揺さぶる著作の発見をきっかけに、グレゴリウスはそれまでの人生をすべて捨てさるのだった。彼は何かに取り憑かれたように、リスボンへの夜行列車に飛び乗るー。本物の人生を生きようとする男の魂の旅路を描き、世界的ベストセラーを記録した哲学小説。
物理学者ゼバスティアンは、提唱する「多世界解釈」理論をめぐって論争の渦中にあった。彼を鋭く批判していたのは、学生時代からの親友で天才物理学者のオスカー。親友との摩擦は、ゼバスティアンの望むところではないのだが…。ある時、テレビの科学番組でオスカーと激しく議論を戦わせた翌日、ゼバスティアンの息子リアムが誘拐される。犯人と思しき人物からの要求は、医療スキャンダルの秘密を握ると噂される妻の同僚を殺害することだった。息子を救うためゼバスティアンは要求に従うことを決意する。だがなぜ、ゼバスティアンが選ばれたのか?天才警視シルフの捜査は、事件の悲劇的な真相を明らかにしていく。ドイツ文学界の新星が放つ哲学的ミステリ。
そしていま、母は家中をゴミで埋め尽くす。「明日は片づけるから」と言いながらも、毎日大量のゴミを家の中に運びつづける。アディーナは母からこう言い聞かされて育った。外の世界は危険よ。そこは怖い「ノック人」の世界。彼らがうちのドアをノックするとき、家族は引き離される-。