著者 : 浅倉久志
神が降臨してきたかのような姿だったー。真昼の太陽を浴びた黄金像そのままの青年。だが彼は、現人類をはるかにしのぐ能力をもつミュータントだった。スリリングな追跡ドラマの表題作をはじめ、雨の夜に妖精の訪問をうけた男の物語「妖精の王」、『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の原型となった「小さな黒い箱」など歿後十年を経て、全世界でますます評価の高まる幻視者ディックの世界を満喫できる傑作集第三巻。
12歳以下の子どもたちが“生後堕胎”の名のもとに殺戮される戦慄の未来を描いた問題作「まだ人間じゃない」、異星人による奇妙な侵略をうけた地球の物語「フヌールとの戦い」、広告戦争が極限まで達した騒々して未来社会を描いた「CM地獄」などの秀作中短篇8篇をおさめたほか、詳細な自作解説や、孤高の天才ディックが心情を赤裸々につづり、作品世界への鍵となる貴重なエッセイも併録した決定版ディック傑作集第四巻。
アメリカの企業がほとんど外国に買収された2001年。ニューヨーク州シピオの町では刑務所までが日本人によって運営されている。学習に障害のある金持ちの子弟相手の大学をクビになったハートキは、囚人たちの教師としてこの刑務所に雇われることになった。ところが大脱獄事件が件こり、ハートキが勤めていた大学が囚人たちに占拠され、元同僚たちが人質にとられてしまった。ヴォネガット節がますます冴える、ジェイ・マキナニーも絶賛の最新長篇。
楽しい時はもちろん、疲れた時も笑いは一杯の酒にまさる。ブリタニカ百科事典をナナメ読みした学識豊かなラブストーリー「エンサイクロペディア国の恋」。おたがいに誰だか思い出せない2人がばったり出会った場合の困った会話「やあ、ひさしぶり」。などなど、ロバート・ベンチリー、コーリイ・フォード、アート・バックウォルドらアメリカン・ユーモア黄金期の名篇の数々を『ユーモア・スケッチ傑作展』からさらに精選。
ユーモアのセンスこそ、人生の貴重な宝物。ぞろぞろいた楽音家バッハの一族に光をあてる「忘れられたバッハ」。楽しい遠乗りの1日がだいなしになってしまう「自転車の修繕」。なぜそういう時に限ってそういうことが起きるのか(あるいは起きないのか)という重要問題を解明する「フェトリッジの法則」。フランク・サリヴァン、ジェローム・K・ジェロームら、英米加の笑いの名品を『ユーモア・スケッチ傑作展』から抜粋。
“最新流行は生きた培養組織でつくられたフェティッシュなスキン2ファッション。モードに包まれた彼女はアルーア〈蠱惑〉の奴隷。やがて彼女の完壁な肉体は皮膚プラスチックのボディスーツに吸収され、魂だけがクチュールの中で生き続ける”。自動人形三部作を含む官能のナノテクSF。
陰謀うずまく近未来アラブの犯罪都市ブーダイーン。この暗黒街で一匹狼を気どってたおれ、マリードも、今じゃ顔役“パパ”の雇われ警官だ。金と権力こそあれど、しょせん使い走り同然の身。なじみの女や友人の、冷たい視線が気にかかる。おまけにお膝元のこの街に、怪しい気配が立ちこめてきた。幼児売買に謎の殺人。名誉挽回のチャンスとばかり、捜査に乗りだすおれを待つものは?好評『重力が衰えるとき』続篇登場。
悠久の時のかなたに滅び去った強大な星間帝国がつくった究極の戦闘マシンーバーサーカー。生きとし生きけるものすべてを殺戮することのみをプログラムされたこの自動戦闘マシンは、創造者たる帝国の滅亡後もはてしなく自己複製と改良をつづけ、やがて人類星域に大挙して侵入してきた!かくして、多様な形態と恐るべき武器をそなえたバーサーカーと人類の壮絶な戦闘が、銀河系宇宙全域にわたってくりひろげられることになった。シリーズ第3巻。
伝統ある良心的な大新聞〈シアトル・スター〉の社長から、極秘の依頼が舞いこんだ。花形記者のハガートが記者倫理に反する収賄行為をしているらしいので、ことの真偽を確かめてほしい、というのだ。株の買い占めによる乗っ取り工作で揺れる〈スター〉にとって、花形記者のスキャンダルは命取りになりかねないからだ。わたしは〈スター〉の記者となって、調査を開始した。が、その矢先、ハガードが殺されたのだ…。真実を重んじる心優しい探偵ジョン・デンスンが、持ちまえのオフ・ビートな捜査法で新聞社内の不正を暴く、好評シリーズ第3弾。
『いさましいちびのトースター』ですっかりおなじみ、ぴかぴかボデイのトースターと愛すべき仲間たちが今度はなんと火星に行きます。火星の電気器具国家の野望をくじくため、よりパワーアップした活躍を見せてくれるトースターにご声援を。宇宙に旅立ったトースターの大冒険心のあたたまるSFメルヘン第2弾。
しがない安月給のサラリーマン、ダグラス・クウェールは火星への憧憬を拭いさることができず、架空の記憶を売る会社を訪ねた。クウェールの記憶の分析した担当の技術者は困惑の表情を浮かべた。すでに、クウェールの記憶中枢には火星での生活が刻みこまれていたのだ。さらに、その深層に隠された記憶を探ると…偽の記憶を扱った「追憶売ります」など12編収録のオリジナル短編集。
アメリカの神経物理学者アルバート・モリスンは、退屈な学会にあくびをかみ殺していた。全精力を傾注した研究は異端視され、今や出世の望みもない。だが、そんな彼を、ナターリャ・ボラノーワというソビエトの美人科学者が訪れた。彼女はいきなり、こう切り出した-「いっしょにソ連に来てほしい」と。驚きはそれだけではなかった。アメリカでは夢物語と片づけられている“物体のミクロ化”が、ソ連では国家的プロジェクトとなり、しかも実用化されつつあるらしいのだ。興味をひかれながらもソ連行きをしぶるモリスンに、追いうちがかかる。アメリカ政府もソ連の極秘研究には関心をもち、この無限の価値がある技術をモリスンに入手させたがっていたのだ。かくして、誘拐同然にソ連国内へと連行されたモリスンは、そこで想像を遥かに超える物体ミクロ化技術の全貌を、まさしく、身をもって体験させられることになった。名作SF映画から22年、巨匠アシモフが最新の科学知識を縦横に駆使し、構想も新たに放つ驚異の人体アドベンチャー。
ラボー・カルベキアンは、亡き妻の大邸宅で孤独に暮らす老人。トルコ帝国による虐殺を逃れてアメリカに移民してきたアルメニア人を両親に生まれ、画才を生かして抽象表現派の画家となった。一時はポロックらとともに活躍もしたが、才能のなさを思い知って今は抽象画のコレクターに甘んじている。そのラボーが、開かずの納屋に大切にしまいこんでいるものとは一体何なのか?『ガラパゴスの箱舟』に続いてヴォネガットが贈る、人類に奇跡を願う長篇。
渓流釣りを楽しんでいる私の前を、若い女の射殺死体が流れていった。それを引き上げようとして溺れかけ、私は死体にまたがり、やっとの思いで激流を下りきった。こうして命を助けてもらったからには、恩返しをしなければならない。私は、彼女を殺した犯人を捜しだす決心をした。やがて、彼女は高名なシェイクスピア学者の娘と判明した。どうやら裏には、最近発見されたシェイクスピアの未発表戯曲がからんでいるらしい…現代のサム・スペードをめざす心優しき探偵ジョン・デンスンがアウトドアに展開する華麗なアクション!シリーズ第二弾。
みずから望んで、砂漠化の進む中央アフリカの奥地に赴任した医師マロリーは、憑かれたように潅漑計画にとりくんでいた。が、そんな彼を嘲笑うかのように、突如、サハラ砂漠に巨大な川が出現する。マロリー川と名づけられたその大河を殺すべく、彼はあやしげなテレビ・プロデューサーとともに、水源を目指す奇妙な旅に出発した…。『太陽の帝国』のバラードが放つ話題の最新長編。
アメリカSF雑誌界に一時代を築いた人気雑誌〈ギャラクシー〉。本書はその創刊30周年を記念して刊行された、ファン注目の短編集の下巻である。編者はかつて2代目編集長を務めた作家フレデリック・ポール。P・K・ディック、I・アシモフ、L・ニーヴン、J・ディプトリー、R・A・ラファティら一流作家の作品を収録し、それぞの著者による〈ギャラクシー〉誌にまつわる覚書を添えた。
キナくさいとは思った。だが依頼人はすこぶるつきの美人、しかも同業者ときている。男として、あとへは退けない。依頼は、私の故郷にいるらしい娼婦殺しの犯人の捜査に力を貸してもらいたい、というものだった。私は依頼人の女探偵パメラとともに故郷を訪ねた。が、男の正体をつきとめても、パメラはなぜか無関心だった。不審に思って調べてみると、問題の犯人はとうに逮捕されていたのだった。となると、パメラの狙いは何なのか?現代のサム・スペードをめざす心優しき探偵ジョン・デンスンのオフ・ビートな活躍を描く話題のシリーズ第一弾。
核戦争後の地球、人間とミュータントの世代交代をテーマにした「訪問者」、パラノイアの狂気を描く「スパイはだれだ」、中国との戦争に敗れ、奇妙な宗教が支配するようになったアメリカを描く「輪廻の車」など、初期作品から晩年の作品まで、日本未紹介の短編を10編収録。アメリカSF界の鬼才、P.K.ディックが創り出した悪夢的イメージを集約した、傑作オリジナル短編集。