著者 : 海老沢泰久
直参旗本・日向半兵衛は、出世のことしか考えない同僚に嫌気がさし「あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって死にたい」という願いを込めた「無用庵」で隠居暮らしを始める。のんびりと過ごすはずだったが、舞い込んでくる事件の数々。「口は悪いが情けにゃ弱い」日向半兵衛が難事件を解決する痛快時代小説。
江戸時代、キリシタンは改宗しても幕府の監視下にあった。幕末に生きる主人公・宇源太も五代前の祖先が信者だったため、監視を受け、苛酷な生活を強いられていた。友人が殺されその敵討ちを果たした宇源太は、村を出て江戸へ向う。江戸で剣術を学び、尊敬できる宗教家と出会った宇源太。しかしそれは、新たな悲劇の幕開けだった。
勝海舟と知り合った宇源太は、勝の頼みで浦上へキリシタンの救済に向う。幕藩体制が崩壊すれば、信仰の自由を手に入れることができると信じた敬虔な人たち。しかし、その思いを新政府は無残に打ち砕いていく。数多くの研究書・史料を駆使し、「日本はなぜ神のいない国になったのか」を問いかける傑作時代小説。
故郷の町の自動車エンジン工場からF1チームのエンジン組み立てメンバーに選ばれた男の日常は輝かしい栄光の日々の連続だった。そして3年間の出向が終わって故郷に戻った男を待っていたのは味気ない、退屈な生活だったー喜びのあとに訪れる悲しさ、“成熟と喪失”を描いた第111回直木賞受賞作。
退場。最後の試合でルールどおり毅然とした態度で、プロ野球審判の名誉をかけ信念をつらぬく“仏の昇さん”。野球、F1レース、サッカー、テニスなど、スポーツの世界を舞台に、いずれもプロであることに誇りを持ち、それゆえに孤独な男たちを、男だけの世界を描いて、快い余韻をひびかせる短編小説集。
関東平野の片隅の、とある山麓の町。そこには夢もチャンスもなかった。東京にはそれがあると思ったー。都会の喧騒のさなかに、ひっそりと花開いては消えていく、さまざまな愛のドラマ。スポーツ小説の俊英海老沢泰久が、誰もが味わう青春の喜びと痛みを鮮やかに定着した珠玉の13編。新感覚恋愛小説集。