著者 : 潮谷験
時代の濁流が兄弟の運命を翻弄する。 フランス革命が起き、封建制度が崩壊するヨーロッパの小国で、元・吟遊詩人が射殺された。 容疑者は「四つ首城」の改修をまかされていた三兄弟。五人の関係者が襲撃者を目撃したが、犯人を特定することはできなかった。三兄弟は容姿が似通っている三つ子だったからだ。 DNA鑑定も指紋鑑定も存在しない時代に、探偵は、純粋な論理のみで犯人を特定することができるのか?
「オスロ昏睡病」という難病から快復した患者は、身体の一部に薔薇の形をした腫瘍ができる副作用を持つ。35年前に治療法を確立し権威となった医師が殺されたことを皮切りに「オスロ昏睡病」の元患者が次々に襲われる事件が発生。自身もかつてその難病に罹った京都府警の八嶋警部補は、犯人の特定と難病治療がもたらした闇に挑む。
202X年。新型コロナウイルスのせいで不利益を被った若者たちの間で自殺が急増する。自殺者の中には死ぬ前に自伝を国会図書館に納本するという手間をかけている者がいた。その数200人。共通するのは陰橋冬という自殺をした哲学者の最後の著書と自伝を模倣するということ。早世したベストセラー作家・雨宮桜倉を姉に持つ雨宮葉は、姉が生前陰橋と交流があり、社会状況の変化から遺作が自殺をする若者を肯定しているという受けとめられ方をしてしまったという思いから、自殺を阻止しようとするが…。「物語」の囚われ人の運命はー。
私立探偵、姫崎智弘のもとに、成功報酬1000万円という破格の依頼が舞い込んだ。依頼主は情報工学の権威、北神伊織博士。なんと依頼日である今日、2018年6月1日は、すでに1000回近くも巻き戻されているという。原因を突き止めるため、姫崎を含めた招集メンバーは巻き戻しを認識することができるという薬剤を口にする。再び6月1日が訪れた直後、博士が他殺死体で発見された…。
大学構内で、「純粋な悪」の存在を証明する実験のアルバイトが持ちかけられた。参加した学生達のスマホには、幸せな家族を破滅させるスイッチがインストールされる。押しても押さなくても1ヵ月後には100万円を超える報酬が手に入り、押すメリットはない。誰もが「押すわけがない」と思っていた、しかし…。第63回メフィスト賞受賞!!